モスバーガーにTBSに大和証券に。企業のメタバース活用が事業成果につながる時代が来るか
昨年、Facebookグループが社名変更してまで注力すると宣言したことで、にわかにバズワードになった「メタバース」ですが、ここに来て日本企業が様々な活用を模索する事例が増えてきたようです。
TBSはドラマの舞台をメタバースに再現
例えば、TBSのドラマ「オールドルーキー」では、メタバースプラットフォームの「cluster」内にドラマの舞台となっているオフィスを再現。ドラマの放映日に視聴者に開放するという取り組みを実施していました。
最終回の放映日である9月4日には、このメタバース空間で出演者の中川大志さんと岡崎紗絵さんを迎えたイベントを開催。
メタバース空間内の壇上から、視聴者のエリアに登壇者2人がおりてきて、交流するという神対応も披露していました。
TBSにとっても、あくまで実験的な取り組みという位置づけだと思いますが、ドラマのファンにとっては希有な時間になったことは間違いありません。
大和証券はメタバースで社員旅行
また、大和証券グループは、9月5日からメタバース上で社員旅行を実施するというイベントを開催。
月面にステージや旧本社ビル、酒場などを配置して、3万人のグループ社員が交流できる場所を提供しているそうです。
コロナ禍により大勢がリアルの空間に集まるのが困難な中で、社員が一体感を持てるイベントとしてメタバースに着目したそうで、11日まで開催しているそうです。
参考:社員ら3万人がメタバースに集まれるイベント、大和証券Gが開催中
実際にこうした社員旅行が社員にとって意味があったのかが判明するかはこれからだと思いますが、大企業ならではの面白い挑戦と言えるでしょう。
モスバーガーはメタバースに仮想店舗をオープン
さらに9月6日には、モスバーガーが新商品「月見フォカッチャ」の発売にあわせて、メタバース上の仮想店舗「モスバーガー ON THE MOON」をオープンすることを発表。
VRプラットフォームの「VRChat」上の月面空間に仮想店舗をオープンし、メディア向けの説明会を開催していました。
参考:モスバーガー初の仮想店舗がメタバース“月面空間”にオープン そのねらいは? リアル店舗との融合も視野
こちらの仮想店舗にはVRChatを利用できる人であればいつでも訪れることができる上、実際に都内の3店舗でメタバース体験を楽しめる時間を設けるそうです。
単純にメタバース空間に店舗を作るだけでなく、店舗の来店客向けにメタバースを体験してもらおうとしているあたりに、モスバーガーの本気度が出ている気がします。
バーチャルマーケットには60社が出展
また8月には、世界最大規模のVRイベントである「バーチャルマーケット」の夏のイベントが開催され、60社の企業が出展、大勢の参加者で盛り上がっていました。
参考:『バーチャルマーケット2022 Summer』が本日(8/13)から開催。広瀬香美さんとゲッダンを舞い、ホラーで投資を学び、551のCM「あるとき~」を再現。
日本でも着実に企業のメタバース活用の裾野が広がっていることが分かります。
メタバース活用はセカンドライフの二の舞にならないのか
ただ、ここで気になるのは果たしてこうした企業のメタバース活用が、本当に企業の業績などに貢献しているのかという点でしょう。
メタバースの議論となると、とかく2007年に大きなバブルになったセカンドライフブームが引き合いに出されます。
当時もセカンドライフの企業活用が様々に話題になりましたが、その多くはメディア露出を目的としたもので、実際の業績貢献への期待はされていませんでした。
一方で、現在のメタバースの企業活用の過程で興味深いのは、企業がメタバース活用が将来業績に貢献する手応えを感じ始めている点です。
特に印象的だったのはモスバーガーの発表会で、モスバーガーの担当者の方々が、実際にメタバースでお客様が商品に触れてくれれば、きっと店舗に来てくれるきっかけになる、という点を自信を持って語られていた点です。
ある意味、飲食店はメタバース空間で実際に食べ物を提供することは不可能ですので、一番メタバース活用と縁遠い企業という見方もあるでしょう。
その課題に対して、モスバーガーではメタバースの仮想店舗の中で、「月見フォカッチャ」の調理体験を提供することで、調理体験をしたら実際に店舗に行って実物を食べてみたくなるという仕組みになっているわけです。
実はバーチャルマーケットにおいても、意外にメタバース空間で美味しそうな食べものを観ると食べたくなって買ってしまうという「飯テロ」現象が確認されています。
参考:メタバース先行組! 大丸松坂屋とビームスが3回目のバーチャル出店で得た知見とは?
現時点ではまだまだ使っていない方からすると魅力が分かりにくいメタバースですが、こうした様々な企業の試行錯誤によって、2次元のインターネット同様に、企業のプロモーションや顧客とのコミュニケーションの選択肢の1つに根付いていくプロセスがはじまっているのかもしれません。