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東海道・山陽新幹線 台風7号&静岡の大雨への対応は適切だったのか? タイミングの悪さが影響を拡大

小林拓矢フリーライター
雨の中を走るN700A(写真:イメージマート)

 このお盆休み期間には、日本列島を台風7号が直撃した。その影響で、15日には東海道・山陽新幹線の名古屋~岡山間で計画運休となった。このことはUターンラッシュの利用者に大きな影響を与え、14日にはすでに鉄道は予約で埋まっていたのにさらに乗ろうとする人が多くいた。

 15日には、東海道新幹線は東京~名古屋間で「のぞみ」「こだま」のみの運転、山陽新幹線では岡山以西で一部を除き平常運転ということになった。東海道新幹線はグリーン車以外全車自由席となった。

 だが、15日には新大阪から、あるいは新大阪へ移動することは困難だった。

 16日には、東海道・山陽新幹線は平常通りに動く……はずだった。

静岡の大雨で大混乱

 16日の午前中に、静岡県内で突発的な大雨が発生した。新幹線の運行を停止させる基準値を超えた雨が降ったため、運行はストップした。東海道新幹線は、古い新幹線のためか、高架ではなく盛土でつくられた箇所も多く、雨によっては崩れる可能性もあるからだ。そんな中で無理して運行し、盛土の崩壊の中に突っ込んでいったら、大変なことになるのは目に見えている。

 在来線でさえ、危険なときには列車を動かさない。ましてや高速運行が基本の新幹線では、そのあたりは原理原則をきっちり守らなければならない。

 したがって、新幹線の運転はストップした。

 だが、Uターンラッシュが激しい中、東海道新幹線は「のぞみ12本ダイヤ」をフル稼働させているところだった。

 当然ながら、列車がどんどん詰まっていく。駅には多くの人があふれる。

 運行を再開したあとも、混乱は続いた。

 対応策として、まずは東海道・山陽新幹線ともども新大阪で折り返し、双方を通して運行する列車の運転をとりやめた。

 東海道・山陽新幹線には、東京~博多間などの通しで運行される列車もある。そういった列車は、新大阪で打ち切りとした。

 車両運用の関係で、列車によっては運休ということにもなった。

 いっぽうで、動く列車は2時間以上の遅れで動くのが当たり前になり、その列車で指定席の予約がある人はそちらに乗るように、ということになっていた。

 JR東海は、必要のない方は駅には来ないでほしい、旅行を延期してほしいというアナウンスをしていた。だが、EX予約のアプリにはユーザーが殺到し、すぐに開けない状態になっていた。

 東海道新幹線は、長時間の遅れが目立つようになる。所定17時以降に発車する列車は、普通車は全車自由席、グリーン車は料金を車内で支払いということにした。また、所定19時30分以降の列車を運休とした。新大阪ではさらに終電は繰り上がった。

 もちろん、所定時間通りには動かない。夜中でも新幹線は運行し、翌日17日の朝6時以降に到着する列車も発生、影響はこの日の午前中にまで及んだ。

 なぜ、こんなことが起こったのか?

Uターンラッシュへの対応が課題

 静岡での大雨が起こったのは、Uターンラッシュのピーク、それも前日に計画運休を行った状態でのことだった。ここで人を運んでおかなければ、翌日にも影響する。

 駅には、近いうちに始まる仕事のために何としても帰りたいという人が多くいた。

 いっぽうで、新大阪駅で折り返し運転をすることにした。新大阪での折り返し作業のため、駅手前では入線できない列車が列をなして待つことになった。

 その中でも、所定17時までは指定席をとりやめることはしなかった。

 京都や名古屋発の突発「のぞみ」なども登場した。

 すべては、人を運び、翌日に影響を及ぼさないためであった。

 だがこれらの案内を迅速にできる体制ではなかった。駅にいないと、わからないことも多かった。

 所定時間単位で運行を打ち切っても、実際の運行は深夜に及んだ。

 とにもかくにも、JR東海の現場の人たちは、大変だったと考えられる。

 Uターンラッシュと突然の大雨が、ここまで影響を大きくした。

 乗客に迷惑をかけなかったというと、うそになる。

 その中でも必要だったのは、情報の伝達である。ニュースを見て状況を知る人も多かった。

 運行情報を迅速に、適切に流すことはできたのではということくらいしか振り返ってみるとない。しかし、EXアプリがプッシュ通知で、あるいはエクスプレス予約登録者に流れるメールで、運行状況を細かく知らせ、16日の鉄道での移動は見合わせてほしいと訴えることは可能だったのではないだろうか(注)。

 その中で、16日に乗車しなかった人は払い戻すことを宣言してもよかったのではないか。なにせEXアプリに待ち時間が発生したくらいだから。

(注) 読者からの指摘により、EX予約の会員向けには連絡があったとわかりました。また、無手数料での払い戻しもあったとのことです。確認不足をお詫びします。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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