週末は山登りですか?「その計画と装備、命の軽量化になっていませんか?」
登山装備とウェアの進歩と軽量化には目を見張るものがあります。その恩恵はアスリートに山岳フィールドで活躍する道を開く一方、体力技術経験と山(自然)への怖れと謙虚さがまだまだ乏しい初心者を過酷なフィールドへ誘い込んでもいます。「装備の軽量化はしても命の軽量化はしない」そのためのメッセージです。
まず最初にお伝えしたいことは、山や天気など自然環境は自ら覚悟してきた者へも、連れてこられた者へも、老若男女へも、そこにいるすべてに対して平等にふるまうということです。自然が危険なのではなく、人間が危険を冒すということ忘れてはいけません。
雨風の中、笑って過ごすか辛く厳しい時を耐えることになるか。笑顔で帰宅できるかできないか。すべてが登山者の体力技術経験と登山装備と自分自身の行動にかかっています。
そこで皆さんへの質問です。軽量な登山用品を選ぶ理由として正しいものはどれでしょうか。
1:スピードアップのために軽量なものを選ぶ
2:体力が無い、衰えてきたので軽量なものを選ぶ
3:楽しむ余裕をつくるために軽量なものを選ぶ
さて、正解は?
・・・
・・・
答えはすべてが正解です。
なんだ!と怒らないでください。
冒頭に書いたとおり、山は私たちを分け隔てなく楽しませてもくれますし、厳しく叩きのめしたりもします。
今度出かけるところと同じ山岳フィールドを舞台に発信されたSNSを参考にする方も多いでしょう。さっそうと追い越すトレイルランナー、自然を味わい写真に収めている経験豊富な登山者、絶景といわれる場所を見たいと思っている初心者など、その思いや経験値、装備も様々です。
あなたなら何を参考にされますか。
山岳ガイドによるコラム「登山計画」⇒ こちら
同じ機能と効用があるのであればより軽量のものを選ぶことをおすすめします。ただし軽量化と強靭さは両立しにくいので、擦れやすい岩場や狭いヤブの登山道を歩くようであれば重くなっても丈夫なものを選ぶのが無難です。
軽量化とは必要とされる可能性がある装備を減らすことではありません。
1:初めて体験するタイプのルートや場所に出かける場合は必ず経験者との同行をおすすめします。初心者の経験値を高めるためには、よい指導者やガイドやアドバイザーが必要です。自分だけで無理をしてけがをしたり、山が嫌いになったり、山に嫌われて命を落としたりしてほしくはありません。
直接、経験者の生の声を聞くのをおすすめします。
2:気象条件やルート状況によって発生する悪天候対処方法、登山中止やコース変更などの小さなアクシデントを経験することが登山の力(実力)を高めることになります。通いなれた低山であれば四季を通じて様々な天候での経験を積むことができるので試してみてください。
小さな一歩:レインウェア ⇒ 「いつも持っているだけ」から「着用して山を歩いたことがあります」へレベルアップをしましょう。
3:標高2500mを超え、背の高い樹木がないハイマツやササ原や荒れ地の山岳ルートでは9月下旬からは確実な防寒対策が重要です。紅葉が目立つようになり気温は一桁になります。朝には霜が降り、寒気が入り込めば氷が張ります。厳しい冬への扉が開く時期はすぐそこまで来ているのです。
10L前後の軽量パックを背負い、Tシャツ短パンを着てランニングシューズで楽しめたトレイルラン向きの夏山は終了です。
高機能のアンダーウェアに長袖ニットシャツを着用します。防寒を重視したネックゲーター、ニット帽、手袋は取り出しやすい雨蓋などに収納します。そしてダウンジャケットやフリース素材の防寒ジャケットを防水パックに入れ持っていきます。防水防風透湿を備えたレインウェア(上下セパレートタイプ)はリュックサックの上部、すぐ取り出しやすいところに入れておきます。
軽量化のために登るとき持っていかないもの ⇒ 帰宅の際(スッキリする為の)着替えの服、ウインドブレーカー(レインウェアで十分です)、お風呂セット、寝間着(普通は小屋泊でも同じ服で寝ます)、電気カミソリ(数日くらい誰も気にしません)、リンゴや梨など果物(楽しいピクニックの時に持っていきましょう)、瓶に入ったままの化粧品など。
4:行動時間に応じて持っていく量は異なりますが、行動食、テルモス(マホービン)にお湯(500ml~900ml)、飲み物(500ml~1000ml)必ず用意します。
飲み物類はリュックサックの左右についているポケットやメッシュポケットには入れません。面倒でもリュックサック内部に収納します。
なぜならば ⇒ 落とすからです。すぐに拾えるとは限りません。大切な水を容器ごと失うことは遭難へ近づく一歩となってしまいます。もう一点は冷えてしまうことです。マホービンであっても早く冷えてしまうので内部に収納しておきましょう。
もし、これらが必要なのに重たいと感じたのであれば、それを背負って山に入るのは延期です。今回はもっと易しく軽めの山歩きに変更して体力づくりに励みましょう。
トレイルランニングアスリートは厳しい条件のエリアであっても、その鍛え抜かれた体力と走力で駆け抜けることも可能です。彼らは服装も行動食・飲み物も最低限で計画しています。つまり逃げ足も速いのです。
同じフィールドに立って同じ山に向かっていても、皆さんの条件はそれぞれ異なっているということです。
登山者がトレイルランナーの軽量化された装備の形だけをまねるのは危険です。
5:夜間行動を可能にする十分に明るいヘッドランプと夜明かしに必要なツェルトやエマージェンシー(レスキュー)シートは持っていきます。暗くなった、視界が悪くてルートを見失いそうだ、そういった身動きができにくい状況で歩き回ることは転倒転落など、さらなるトラブルを引き寄せることになります。
焦りはミスを引き寄せる ⇒ より安全な場所でじっと待機します。
何処がより安全な場所なのか。このようなことは実際に一緒に歩いて自分の目で見て、体験することでしか身につかないものなのです。
「知っていること」と「できること」は等しくはありません。
極端な軽装備の場合、トラブルが重なると不幸な遭難事故にまで至ってしまうことがあることを意識して登山計画を立ててください。
そして登山届をつくって親しい友人や家族に伝えてお出かけください。
皆さんのお帰りと素敵な報告をみんな待っていますから。
WEBで簡単スムーズな登山届 ⇒ こちら
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