「食育」ってこどもだけが対象ではありません。高齢者にとっても大切なことです。
「食育」というと、「子どもが対象」というイメージがありますが、高齢者にとっても「食育」は大切なんです。その理由は…
高齢になると、さまざまな身体的変化が現れます。基礎代謝や心肺機能、腎臓機能の低下がみられますが、消化液分泌機能や消化管の運動機能の低下、歯の欠損による咀嚼(そしゃく)能力の低下など、消化器系にも変化がみられます。体の状態を把握して、食事を楽しみながら必要な栄養素を摂取することが大切になります。
1.身体機能の低下
噛む力、飲み込む力の低下、胃腸の消化機能の低下、便秘などがみられ、これらは食欲不振の原因にもなります。
味付けや見た目を変えて食欲アップにつなげましょう。食欲を増やすには、コショウやカレー粉などの香辛料や薬味を工夫して胃液の分泌を促すことが効果的です。季節を感じる食材や美しい盛りつけなどにもこだわってみましょう。
2.食欲不振と低栄養
1.の機能低下の他に生活活動量の減少、風邪や発熱などの体調不良、精神的ストレス、睡眠不足や慢性疾患など、さまざまな原因で食欲不振となり、食事の量が減少します。
食事の量が減少すると、
・水分の減少が起こり→栄養状態が悪化した状態となる「低栄養」になる。
・摂取エネルギーが不足す→筋肉などのタンパク質の分解が進む→免疫力が低下、骨が弱くなる→感染症や骨折などのリスクが高まる。
体を動かすことを意識しながら食事では特に、タンパク質を積極的に取るようにしましょう。
噛む、飲み込む力にに不安があるときは、食品を軟らかく調理したり、小さく切るという工夫が必要です。
しかし、料理を一律に刻んだり、すべて軟らかくするといった対処では、摂取食品が制限されるために、必要な栄養素を取りにくくなります。また、ドロドロしたものばかりでは噛む力を使わなくなるので、かえって機能を低下させてしまいます。食品に切り込みを入れたり、パリパリした食感を出すなどの工夫をし、個人の能力に合わせた食事にすることが重要です。
3.味覚機能の低下
加齢とともに味を感じにくくなるため、高齢者の食事は濃い味付けになる傾向があります。食事全体が薄味であっても一品だけは濃い塩味のものを添えるなどの工夫で、満足感が得られる食事にします。
4.水分不足
体内に蓄えられる水分量は、加齢とともに減少します。重度の脱水症状の場合は命に関わりますが、軽い脱水症状の場合でも、体の代謝の低下や血液がよどみやすくなるなどの問題が起こります。高齢者は渇きを感じる神経の働きも鈍くなるため、のどの渇きを感じにくくなってしまいます。高齢者はのどの渇きにかかわらず、入浴前後や睡眠前、起床後など時刻を決めて水分を補うことが大切です。
5.便秘
腸の運動は、年齢とともに低下するため便秘になりやすくなります。消化によいものばかり食べると、さらに機能が低下します。腸を動かすために食物繊維の多いいも類や海藻類、豆類、きのこ類、野菜を積極的に取り、水分を十分に補うことも必要です。
6.骨粗しょう症
骨粗しょう症は、高齢者に多くみられます。原因の1つは、カルシウムが不足です。カルシウムを十分に摂取する必要があります。また、運動をすることによって骨の新陳代謝が活発になり、カルシウムが骨に吸着するのを助けるため、適度な運動も必要です。ですが、体調をみて無理をしない事が大切です。
7.ロコモティブシンドローム
ロコモティブシンドロームとは、運動器機能の障害により寝たきりや、要介護になるリスクが高い状態のことをいいます。
食事では、筋肉量の低下を防ぐためにタンパク質を多く含む肉や魚、卵、大豆製品、乳製品をしっかりと取るようにします。また、丈夫な骨を維持するために、カルシウムを多く含む乳製品やカルシウムの吸収を良くするビタミンDを含む食品(さんま、かれい、鮭、鰯などの魚類や干しシイタケなどのきのこ類)も一緒にとる事がおススメです。
改めて、食事を作るときに意識してみたいと思います。すべてを1回の食事で取ろうとせず1日~3日で考えると、少し楽に考えることができます。
今回、「食育」をテーマにさせて頂いたのは、私が服部栄養専門学校を卒業し栄養士になったからです。学校を卒業し、栄養士として活動できることに感謝し先生のご冥福をお祈りいたします。