若者が考える今後の日本に必要な若者政策
自民党若手議員が提案している「こども保険」や経産省の若手官僚がまとめたレポートなど、日本の将来への危機感を背景に若手からの提案・問題提起が活発になっている。
期せずして、私が代表理事を務める日本若者協議会でも、今回作成した提言をベースに、明日6月6日に日本維新の会と公開討論会を行う(一応補足しておくが、日本若者協議会では今まで各党と政策協議を行ってきており、特定の団体を支持しているわけではない。今後別の党にも提言していく予定だ)。
日本若者協議会では、これまで若者の政治参画を中心に政策提言を行ってきた。その結果、18歳選挙権をはじめ、若者の政治参画の機運は確実に高まってきている。
一方、労働政策や社会保障、税制など、生活に直結した制度は遅々として改革が進んでおらず、将来不安ばかりが高まっているような印象を受ける。
そこで、日本若者協議会では、約半年前から若者政策全般について勉強会やヒアリングを重ね、今回政策として提言するに至っている。
今回提言する政策は、必ずしも完成形ではなく、地方分権(特に財源の委譲について)など今後検討していかなければいけないテーマも存在するが、現状の政治報道においてはスキャンダルや政局、もしくはデモといった「派手な」ものばかりが注目され、政策については普段なかなか話題にならない。特に、税制についてはほとんど国民の間で議論が行われておらず、少しでも早く国民的な議論喚起、政治家へのインプットを行いたいという考えから、このタイミングで提言の公表、政策協議を行わせていただく。
今回の提言作成に当たって意識したポイントがある。それは、中長期的視点と現実性である。
中長期視点とは、目先の利益だけでなく、長い目で見たときに、この政策提言が社会にとって利益になるかという視点である。今、実際の政治社会で決定権を握っているのは多くの場合、経験や場数を踏んできた人々である。彼ら・彼女らは、その経験や知識、ノウハウを生かし、いかに社会をよくできるかを考えているだろうと思う。
しかし、その政策決定の影響を受けるのは、決定権者の彼ら・彼女らではなく、若者・将来世代である。これからも、この社会で生きていかねばならない若者・将来世代にとって、中長期的視点に立って政策を考えることは、自分たちの利益になるか否かを考えることに等しいと言っても過言ではない。提言の中には短期的に負担を与える施策も存在するが、将来の社会において必要なことであり、少子高齢化が象徴するように、今対策を進めなければその解決にはさらなる負担が課されることになる。
また、もうひとつ意識したポイントが現実性である。あえて言ってしまうと、今や若者による政策提言はもはや珍しいことではない。国・地方、行政・民間を問わず、大学生などが政策立案・提言を行い、それを社会に出すことは様々な場所で行われている。しかし、多くの場合、それらは発表で止まってしまい、実行に移されることはほとんどない。それは、もちろん、学習的意図で行われた場であったり、その提言のクオリティーが十分でなかったり等の様々な理由があるだろう。しかし、一方で若者に政策立案・提言を求める大人側も「若者らしい」提言という判断基準で、いささか突拍子もない提言を求めてしまった結果、現実的でない提言になってしまうということも少なくないように思える。今回の提言では、「提言のその後」を見据えて、斬新さよりも現実的な提言になるよう意識した。その結果、提言としての面白みが欠けてしまったかもしれない。しかし、先ほど述べた通り、政策の影響を受ける当事者としては、面白みよりも実際の課題に対処できるかどうかのほうが重要である。このような点を意識した提言であるということを考慮していただければ幸いである。
日本若者協議会「若者政策に関する政策提言〜多様性のある社会と再チャレンジ可能な社会の構築に向けて〜」
また、以下に今回の提言の要約を記す。なるべく多くの方々の意見を取り入れたいという考えから、記事の最後にアンケートフォームを設置させて頂いた。提言を見て重要だと思った政策や改善点、別の提案があればコメントして頂けると幸いである。
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現代はどのような時代にあるか。キーワードは多様性と変化である。テクノロジーの発展や長寿化、女性の社会進出など、ここ数十年間で社会は大きく変化し、今後もその変化のスピードはとどまることを知らない。一方、戦後に進んだ社会基盤の整備により、人生における選択肢は増え、価値観も多様化しつつある。
しかしながら、日本の社会制度は、時代に合わせて変化することなく、過去に想定された「生き方」、「価値観」をベースにつくられ、結果的には、世界の中でも突出して少子高齢化が進み、20年以上の低成長を経験している。
今までの長期雇用を前提にした「日本型雇用システム」では、企業内福祉や内部労働市場が発達していたが、市場の変化が早い昨今において企業にその体力は存在せず、社会的にセーフティネット(失業手当や住宅手当)の拡充、女性や高齢者を社会参加させるための育児サービスや職業訓練を充実させていくべきである。
また、「日本型雇用システム」において相互補完的につくられていた社会保障・税制を抜本的に見直し、働き方に中立的な制度に変えていかなければならない。
同時に、現行の社会保障・税制の問題点である逆進性を改善し、所得再分配を強化することも求められる。
さらには、中長期的な視野を担保するため、若者の声を直接的・間接的に届ける仕組みを作るべきであり、投票コストを下げるためにインターネット投票の実現も検討すべきである。
・提言一覧
労働:
(1)ジョブディスクリプション(職務記述書)・解雇条件の明示義務化
(2)ジョブ型正社員の雇用ルールの整備
(3)同一価値労働同一賃金法の制定
(4)社会的職業訓練(リカレント教育含む)の整備・強化
(5)失業手当の拡充
(6)高年齢雇用安定法の撤廃
社会保障:
(1)全労働者への社会保険の適用拡大
(2)社会保険料の上限撤廃(現行月額62万円)
(3)在職老齢年金の廃止
(4)年金におけるマクロ経済スライドのフル発動
(5)高所得者への基礎年金部分の減額(クローバック)
(6)年金給付開始可能時期の変更(62〜72歳)
税制:
(1)配偶者控除の撤廃
(2)所得控除から税額控除への移行
(3)金融資産税の増税、将来的には総合課税化
(4)退職金控除の撤廃
子育て:
(1)3歳未満児に対する家庭支援の充実
(2)3歳~小学校入学前の児童への質の高い幼児教育の提供
a.非認知的スキル向上を意識し、子どもが自発的な活動を行えるようなカリキュラムとして「幼稚園指導要領」を整備
b.施設に関係なく質の高い幼児教育が受けられるように「幼稚園指導要領」「保育所保育指針」「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」等の共有化をさらに進め、将来的な一本化を目指す
c.職員の研修・児童の発達評価についての統一的基準の作成
d.現行の保育士資格・幼稚園教諭免許を「保育教諭」の資格として一本化し、一種から三種に分類する。これを基にキャリアパスを整備するとともに、分業による負担軽減を図る。これにより、復職や離職防止を促し、スタッフの量的拡充、経験年数の長期化による質的拡充を促す。
e.施設型給付を増額し、スタッフの賃上げを図る
(3)幼児教育の完全無償化
(4)幼稚園の認定こども園への転換促進
(5)所管官庁の一本化、将来的には子ども・若者省の設置
政治参加:
(1)被選挙権年齢の18歳まで引き下げ
(2)供託金の大幅引き下げもしくは撤廃
(3)若者協議会の設置/若者担当大臣の設置
(4)審議会委員のクオータ制
(5)選挙・住民投票におけるインターネット投票の導入
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提言を見て重要だと思った政策や改善点、別の提案があれば下記からコメントして頂けると幸いである。