天の川銀河は今この瞬間も他の銀河と衝突中だった!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「天の川銀河は今この瞬間も他の銀河と衝突中」というテーマで動画をお送りしていきます。
●天の川銀河と矮小銀河の衝突
太陽のような恒星が2500億個も含まれている、私たちが住む超巨大な星の大集団である「天の川銀河」は、銀河の中でもかなり巨大な部類です。
天の川銀河やアンドロメダ銀河を含む、近所にあって重力的に結びついている数十個程度の銀河群を「局部銀河群(ローカルグループ)」と呼びますが、その中で天の川銀河はアンドロメダ銀河に次いで2番目に巨大です。
天の川銀河のように現在は巨大な銀河でも、かつては小さな矮小銀河から始まり、その後他のより小さな銀河との衝突を繰り返してどんどん巨大に成長したと考えられています。
つまり天の川銀河の歴史は、銀河同士の衝突の歴史とも言えます。
実際銀河内には、他の一般的な星々とは異なる運動をしている星の集団が発見されていて、これらは元は天の川銀河と衝突した銀河の星々だったと考えられています。
そして今この瞬間も、天の川銀河の重力によりその周囲を公転しつつ、ほぼ一方的に破壊されている比較的小さな「伴銀河」がいくつも発見されています。
銀河衝突は現在の天の川銀河でも起きているということです。
●恒星ストリーム
先述の伴銀河や、銀河よりは小さいものの数十万~数千万単位の恒星の大集団である「球状星団」は、より巨大な銀河に引き裂かれると、その軌道上に星をばらまき、「恒星ストリーム」と呼ばれる巨大な構造を形成します。
こちらの画像では、2007年に天の川銀河の周囲で新たに見つかった3つの恒星ストリームの分布が描かれています。
2つの小さい恒星ストリームは球状星団が砕かれて、そして巨大な1つの恒星ストリームは矮小銀河が砕かれて形成されたものであると考えられています。
恒星ストリームは非常に近くにある巨大構造であるものの、星の密度が銀河等と比べて極めて低いために暗く、観測は困難です。
実際に、初めて発見されたのは1971年のことでした。
ですが観測技術の進歩により、現在までに天の川銀河の周囲で20個ほどの恒星ストリームが見つかっています。
まさに今この瞬間も天の川銀河で多くの銀河衝突が発生している証拠ともいえるでしょう。
●天の川銀河への影響
ほぼ一方的に伴銀河や球状星団を周囲に公転させ、破壊している天の川銀河ですが、それらの衝突の影響を全く受けていないわけではありません。
2020年、天の川銀河の形状に関する驚くべき研究成果が発表されました。
実は天の川銀河はこのように、端っこの一方が上方に、反対側が下方に引っ張られるように歪んでいる形状をしていることが、1950年代から知られています。
ですがこのゆがみの原因は長年不明で、銀河間の磁場の影響や、銀河全体を取り囲むように存在する目に見えない「ダークマターハロー」の影響など、様々な説が提唱されてきました。
そんな中、欧州宇宙機関ESAのガイアプロジェクトが、このゆがみ構造の原因を解明した可能性があると発表されました。
ガイアは天の川銀河内の数十億個もの恒星の位置や速度などの詳細なデータを得ることで、銀河の構造やその歴史、未来について理解することを目的としたプロジェクトです。
これまでに目覚ましい活躍をしています。
ガイアの分析により、このゆがみ構造の公転周期が6-7億年であると判明しました。
これは太陽系が約2億年で銀河を1周するのと比べると遅いですが、ゆがみ構造の形成原因がこれまで考えられていた銀河磁場やダークマターだった場合では説明できないほど、予想外に速いものであったそうです。
このことから、このゆがみ構造を形成したのはより高エネルギーの現象、つまり銀河同士の衝突である可能性が高まりました。
天の川銀河自体も、矮小銀河との衝突で大きな影響を受けているということです。
●ゆがみの犯人と太陽系の歴史
天の川銀河を歪ませた衝突天体が一体何なのか、確実なことはわかっていないようですが、その候補天体は存在します。
それは「いて座矮小楕円銀河(SagDEG)」です。
質量は天の川銀河の1万分の1程度しかないそうです。
そんなSagDEGは、こちらも2020年の研究で、なんと太陽系を誕生させた張本人である可能性が示されています!
現在観測されているSagDEGとその恒星ストリームの位置からシミュレーションを行った結果、SagDEGはかつて3度にわたって天の川銀河と衝突したと考えられています。
天の川銀河にSagDEGが衝突すると、天の川銀河内のガスや塵が波打つように移動します。
すると銀河内でガスの密度が高い場所ができ、そこで星が新たに誕生しやすくなります。
ESAのガイアの観測データによると、今から57億年前、19億年前、10億年前に星形成が盛んに行われた痕跡が残っていたそうです。
そして星形成の時期は、SagDEGが衝突してきたと推定される年代と一致しているそうです。
そしてこの年代に銀河衝突で星形成が行われたというシナリオが正しければ、なんと私たちの太陽系はこのSagDEGと天の川銀河の衝突によって形成された星の1つである可能性があるそうです!
太陽系が誕生したのは今から46億年前とされていますが、これは今から57億年前にSagDEGが1回目の衝突を起こした後、新たに星が誕生しやすくなった年代と一致します。
もしこの説が正しければ、太陽系に含まれる地球、そして地球に住む全生命も、この銀河衝突イベントが発生していなければ誕生していなかったことになります。
マクロなスケールの現象まで考えれば考えるほど、いかに私たちの存在が偶然の連続の上に成り立っているのかがわかりますね。