「発酵性食物繊維」って知っていますか?量より質を重視した食物繊維のはなし(便通改善その2)
食物繊維とは「人の消化酵素で消化されないもの」を言います。代表的なものはごぼうやイモ類などの植物性のもの、わかめなどの海藻類、きのこ類に主に含まれています。
食物繊維の多い野菜や海藻類は介護食を作るときには、少し気を付けたい食材が多くあり、食事を作る側としては気軽に使えるものは少ないです。繊維質が喉に引っかかって誤嚥(ごえん)の原因になったり、かみ切れないから残しがちになります。介護食で食物繊維をとるには少し頭が痛い問題です。お通じについては、その1でも書いた通り、介護を受けていると毎回聞かれる大事な健康管理の1つです。
便秘の解消には生活習慣の改善や食事指導、食事療法が有効であるという結果が発表されていて、便秘に食事対策が有効だと言われています。便秘だから繊維質の多い野菜をたくさん食べると良いと言われていましたが、実は繊維質の量を増やしてもお通じにはあまり変わらない事が研究でわかってきました。食物繊維の量より質に今注目が集まっています。
便秘もずっと続くと不快感だけでなく腹痛や発熱、生活習慣病の悪化も招きます。そこでずっと便秘が続く状態(慢性便秘症)を防ぐためには普段から質の良い食物繊維を摂取しておくことが大切です。
食物繊維には「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2つは聞いたことがある人がいると思います。これは体内で水に溶けやすいか、溶けにくいかという点で食物繊維を分けた言い方です。今、この食物繊維の他に「発酵性食物繊維(はっこうせいしょくもつせんい)」が密かに注目を集めています。
今までは繊維質の多いごぼうやイモ類などの野菜、ワカメなどの海藻類やきのこ類をたくさん食べるということが一般的でしたが、最近では食物繊維の量よりもどんな種類の食物繊維を食べるかという視点が注目されています。そこで注目されているのが「発酵性食物繊維」です。
「発酵性食物繊維」という言葉を初めて聞くという方もいると思います。私も最近、お通じ改善について調べていて初めて知りました。これは腸内細菌が腸の中で食物繊維をエサとして食べて、腸内細菌が増えて人にとって良い物資をつくる過程を発酵といいます。食物繊維の中でもエサになりやすい食物繊維を「発酵性食物繊維」と言います。
「発酵」とつきますがヨーグルトや味噌、キムチなどの「発酵食品」とは別物です。「発酵食品」は人の体に良い菌が食品中に増えたものです。
「発酵性食物繊維」は体の中で発酵して腸内細菌を元気にする食物繊維の事です。以前は水溶性食物繊維は善玉菌のエサになり発酵し、不溶性食物繊維は発酵せず便の量を増やすことにしかならないと言われていましたが、近年の研究で不溶性食物繊維にも発酵する食物繊維があることがわかってきました。食物繊維の代表と言われてきたレタスやキャベツにはあまり発酵性食物繊維が含まれていません。
便秘の改善に水溶性食物繊維、不溶性食物繊維にとらわれず発酵性食物繊維に注目することで介護食にも食物繊維を取り入れやすくなります。発酵性食物繊維が多く含まれている食品は実は意外な食品です。それは、小麦ブラン、小麦の外皮です。
「小麦の外皮ってそんなに手軽に手に入るの?」「外皮って硬いんじゃないの?」「介護食には向かないんじゃない?」とイメージを持つ方もいると思いますが、実は手軽に購入出来て、介護食を食べている人でも食べやすいものがあるんです。
その3では「小麦ブラン」について詳しく、またおすすめの介護食をご紹介していきます。
※食べる方の「かむ力」「飲み込む力」には個人差があります。少しでも不安がある場合は、かかりつけの医師や歯科医、訪問看護さん、ケアマネージャーさんなど気軽にご相談してくださいね。