アニメも主題歌も大ヒット【推しの子】 実写映画の初週7位は大コケか順当か
実写映画化が大きなニュースになっていた『【推しの子】 The Final Act』が12月20日に公開され、初週の映画動員ランキングで7位にランクインした。上映館数は300館を超える大規模公開であり、興行収入は1億円を超えている。
【推しの子】といえば、昨年の大ヒットテレビアニメであり、YOASOBIのアニメ主題歌「アイドル」は世界的大ヒット。昨年末の『第74回NHK紅白歌合戦』での豪華コラボも大きな話題になっていた。一方、実写映画はそんな世の中的な人気ぶりとは離れた興行になった。
ただ、興行関係者によると、ほぼ想定内の結果だったようだ。
もともとのアニメのファン層がコアであり、それが一般層にまで広範囲に広がらないと映画興行では大ヒットにならない。アニメの知識がなくても映画を見に行こうという一般層には実写版への関心が広がっていないのを感じていたからだ。
その背景には、公開形態が影響しているだろう。実写化は配信ドラマと連動する展開だったが、ドラマ版が先にAmazonプライムで配信され、そのあとに物語の続きとなる実写映画が劇場公開された。
配信プラットフォームでのドラマが先行するフォーマットが、より視聴者の幅を狭めてしまっていた。
昨今のドラマと連動する漫画実写化では、『沈黙の艦隊』(2023年)は劇場公開のあとに、その話を含む続きがAmazonプライムのドラマで配信された。『ゴールデンカムイ』(2024年)も劇場公開が先にあり、その続編がWOWOWの連続ドラマW『ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―』として放送された。
どちらも劇場映画から配信またはCS放送という流れであり、『【推しの子】 The Final Act』はその逆のパターンへの新しい挑戦だったが、結果としては、反作用してしまったように見受けられる。
もうひとつ、作品のタイプとしての要因もある。
もともと漫画原作の実写映画は、原作にどれほど人気があったとしても、その実写がヒットするとは限らない。過去にも多くのあたりとハズレがあった。
映画ジャーナリストの大高宏雄氏は「漫画原作の実写映画は、ヒットする作品とそうでない作品に、ある程度分かれる傾向がある。前者に共通するのは、アクションやミステリー、歴史劇などエンターテインメント性の高い要素が強くあり、スケールの大きい作品であること。そこには劇場映画としての見応えがあり、一般層に広がるから、大ヒットする可能性が高くなる」と語る。
逆にいえば、そういう作品性がなければ、なかなかヒットには結びつかない。
観客層がもともとのコアファンに留まってしまっているのが『【推しの子】 The Final Act』の現状だ。
加えて、SNSなどのリアクションを見ると、実写化発表当初からキャスティングをはじめドラマ・映画化に対する異論も目立っていた。そこからは、コアファン層も掴みきれていなかったことがわかる。
人気漫画の実写化へのアレルギー的な反応は、ファンの原作への思いが深ければ深いほど強い。本作の興行は、漫画実写化というフォーマットそのものの軋みを如実に示していると言える。
ただ、本作はお正月映画であり、これからが本番になる年末年始の冬休み興行で、どこまで若い世代のアニメファンの興味関心を呼び起こせるかで結果は変わるだろう。
ここからの映画会社の奮闘を期待したい。
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