バブル崩壊が注目されるNFTは、バブルを超えて一般に普及する道を見つけられるか
2021年頃から大きな注目を集めるようになった「NFT」ですが、ここ最近はイーサリアムなどの暗号資産の値下がりの影響もあり、すっかり熱狂が落ち着いたように見えます。
特に直近で業界では、世界最大手のNFTの取引場所であるOpenSeaの取引高がピーク時から99%減少しているというニュースが、NFTのバブル崩壊の象徴として注目されました。
参考:NFTマーケットプレイスのオープンシー、取引高が5月のピーク時から99%減少
なお、この報道に対しては、比較対象として5月の異様に取引量が跳ね上がった1日を基準値にするのはフェアではないのではないかという指摘も上がっており、業界関係者の間でも議論は分かれているようです。
参考:OpenSea「取引高99%減」にCFO反論 フォーチュン誌の報道は「不公平」
ただ、少なくとも月次の取引量のグラフを見ても、昨年の夏頃から今年の春ぐらいまで続いていたNFT市場の熱狂が、この数ヶ月落ち着いてしまっているのは事実の模様。
その関係で、人気のあるNFTのコレクションとして有名な「Bored Ape Yacht Club」や「CryptoPunks」も最高値から20%〜50%程度の値下がりをしてしまっているようです。
もちろん、今年に入って米国株も2割以上下げたような市場環境であることを考えれば、NFTもそれぐらい値下がりして当然という見方もあります。
ここで注目されるのは、果たしてNFTはバブル崩壊後に再び普及への道を歩むのかどうかという点でしょう。
NFTは大馬鹿理論に基づいている?
NFTに関しては、マイクロソフトの共同創業者として有名なビル・ゲイツ氏が、6月に「NFTは大馬鹿理論に基づいている」と発言したことでも話題になりました。
NFTやWEB3に対して、こうした懐疑的な見方をする有識者は少なくありませんし、NFTバブルが崩壊した現段階では、同様の見方をする方の方が多くなっているのが現状でしょう。
一方で、こうした著名な経営者や有識者であっても、革新的なテクノロジーが登場したタイミングでは未来を読み間違えることが多いというのも事実です。
ビル・ゲイツ氏がこの発言をした際にも、ビル・ゲイツ氏がインターネット登場時にインターネットの普及を疑問視していたことを指摘している声も多く見られました。
日本では自民党も積極的に検討?
価格の下落や取引量の減少はあれど、NFTの利用シーンや可能性は着実に拡がっているという見方もあります。
実際に、6月にはニューヨークで大規模なNFTのイベントが開催され、世界中から1万5千人を超える参加者が集まっていたそうです。
また、日本でも、自民党のプロジェクトチームが「NFTホワイトペーパー」を3月に公開するなど、様々な議論が進んでいるようです。
参考:自民党「NFTホワイトペーパー」に追加提言、ホットリンク内山幸樹・アスター渡辺創太ら
その関連で、内閣官房が実施している「夏のDigi田甲子園」で副賞にNFTが活用されたという話もあります。
参考:内閣官房、NFTを活用 自治体のデジタル化競う「夏のDigi田甲子園」
スポーツチームやアーティストによるNFT活用は日本でも拡がり始めていますし、年内にはスターバックスがNFT活用することを宣言するなど、活用事例自体が着実に増えているのは事実です。
参考:スタバもウクライナ政府も取り組む「NFT」は、バブルか本物のトレンドか。
ただ、NFTの活用事例の内いくつかは、NFTでなくても実現できるのではないかという指摘もあり、まだ混沌としているというのが正しい表現かもしれません。
幻滅期を経てからが本番
歴史を紐解くと、こうした新しい技術が登場し、期待値が実態以上に吹き上がって大きなバブルになるという現象は、NFTにはじまった話ではありません。
暗号資産やブロックチェーン自体が、なんどもバブル的な熱狂と、その収束を繰り返していますし、インターネットも過去に何度もバブルを経験しました。
このバブルのサイクルに関しては、リサーチ会社のガートナーが公開している「ハイプ・サイクル」という考え方が非常に有名です。
これは新しいテクノロジーは、初期の「黎明期」から「過度な期待のピーク期」にバブル的に吹き上がり、その後「幻滅期」を経てからようやく「啓発期」「生産性の安定期」という普及のサイクルに入るという考え方。
実はガートナーから8月に公開された「先進テクノロジのハイプ・サイクル:2022年」では、NFTが丁度「幻滅期」に入るタイミングであることが指摘されているのです。
同じIT業界のバズワードでも、メタバースが「黎明期」に位置づけられていることを踏まえると、NFTはより具体的な利用シーンが見えてきていると考えることも出来るかもしれません。
本気でNFTをやりたい人だけが残っている
前述のニューヨークのイベントでも注目をあびていた「新星ギャルバース」というプロジェクトを立ち上げた草野絵美さんは、「価格が下がったことで投機目的の人が少なくなって、本気でNFTをやりたい人だけが残っている。今はいい状態だと思います」と発言されているのが印象的です。
参考:「売れるNFT、売れないNFT」の違いとは。13億円の取引総額「新星ギャルバース」仕掛け人が語る
NFTが実際に今回のバブル崩壊を乗り越えて、一般のユーザーにまで拡がるムーブメントになるのかどうかは、まさにこうした本気でNFTをやりたい人たちが、どれだけ意味のあるNFTのプロジェクトやサービスを生み出すかにかかっていると言えるでしょう。
振り返ってみると、2001年のITバブル崩壊の際、インターネットが現在のように私たちの生活に不可欠になると断言できる人は、実はそれほど多くありませんでした。
今回も、投機的なNFTのバブルは崩壊しつつあると思いますが、実際に本当のNFTの可能性が見えてくるのは、NFTバブルが崩壊したこれからなのかもしれません。