2021年記者会見振り返り 意外にもトヨタ社長の抗議がダントツだった
2021年の締めくくりにあたり、今年の記者会見を振り返ります。過去最高のアクセスとなったのは、トヨタ社長の抗議メッセージ。ヤフートピックスに掲載されたわけでもなく、密かにアップした記事でしたので意外な結果。記者会見解説をこのコーナーで2019年9月から始めて3年目になります。今年は本記事を入れて33本、累積本数は65本。注目された会見、不祥事会見を中心に解説をしてきました。なぜ、トヨタ社長の抗議が過去最高になるほどだったのか、他の人気記事はどれだったのか、考察します。
ダントツだったのはこちらの記事。
「五輪CM辞退やメダル噛んだ市長に抗議・・・物言うトヨタ、広報戦略のすごみ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20210811-00252340
トヨタ自動車によるオリパラへの姿勢が中心で、河村名古屋市長がトヨタ所属の後藤さんの金メダルを噛んで拭きもせずに返したことに対する抗議が適切であると評価した内容でした。五輪に対するメッセージを明確にしない企業が多い中、自社の姿勢を明確にしたこと、社員を守る、五輪精神の尊重を積極的に発信した勇気ある行動への共感がアクセス増につながったのだろうと思います。
これほどのアクセスではなかったものの「グロバールダイニング社長の公式発信 危機管理広報の視点から考えて『あり』」もトップ10には入るアクセス。
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20210112-00216861
政府の緊急事態宣言発令について、社長の考え方をホームページで発信したことに対して解説しました。時短営業しないことへの賛否両論はあるとは思いますが、危機の定義を明確にして自らの考えを発信するのは勇気ある行動と書きました。これも共感されたのでしょう。この記事はけしからんといったクレームはありませんでしたので。
この2つに共通するのは記者会見をしていないこと。会見形をとらなくても、トップメッセージは発信できます。企業のトップは危機意識を持った時には躊躇なくメッセージ発信すると案外共感され、企業イメージ向上に貢献するのではないでしょうか。不祥事会見がどうしても多くなるので、このような前向きの記事も評価されるのであれば今後も取り上げたいと筆者自身も意欲が湧きます。
上位にランキングされた他の記事としては、下記3つは納得。
「誤解や憶測にまみれた眞子さんの結婚、元凶は宮内庁の広報体制の不備」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20211104-00266047
「いい意味で期待を裏切ったのは高市早苗氏、総裁選立候補者3人の会見はどうだった?」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20210914-00258106
「森喜朗氏の謝罪会見 『謝罪』感じられない訳 最初から最後まで続いた失敗」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20210205-00221030
皇室結婚や自民党総裁選、オリパラ会長のジェンダー発言はマスメディアでも注目を浴びた国民的関心時でしたのでアクセスが多かったのは特に驚くことではなく、ああやはり、といった感想です。
面白い傾向も見て取れました。社会的注目と無関係にここだけで「身内ウケ?」したのがこちら。
「最悪のお辞儀、場違いなネクタイ…Zホールディングス事業方針発表会の演出の拙さ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20210325-00228243
謝罪でも不祥事でも社会的話題とは縁遠いマニアックなネタなのに伸びました。ラインとヤフーの統合による事業戦略記者発表会。いわゆるお披露目会見でした。組み立てそのものは面白くて、ウォーキングプレゼンテーションを映像で見てから、リアル会場で質疑応答の形式で意欲的な構成。ヤフーが運営しているサイトでそのトップが注目を浴びたのか、お披露目会見での意外な解説だったからなのか、お辞儀やネクタイごときで失敗したくないよ、といった身近さがウケたのか。全てが理由なのかもれません。
時期に関係なくずっとアクセスされているのが「かんぽ問題」。直近でもずっと「かんぽ」のキーワードで検索されて読まれています。
今年になって2つの記事を書きました。
「社員2000人以上処分のかんぽ生命、変革するには?鍵は『社員の不満』」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20210122-00217863
「かんぽ生命不適切販売問題、一般民間の生命保険販売プロはどう見たか」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20210423-00233604
記者会見の解説ではなく、平時の社内コミュニケーション、リスクマネジメントの視点で書かれた内容。直接筆者にメールが来たものから察するに、現場が悔しい思いをしている、不満が解消されていない、風土改革は進んでいないのではないかと推測しています。これは日本の大企業全体に共通する問題かもしれません。
今後の日本企業の試練を感じさせたのが、ウイグル人権問題についてのユニクロ柳井社長の発言。
「米政府によるユニクロへの経済制裁『公表』 柳井氏のノーコメントが失敗の理由」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20210623-00243814
「政治的に中立 ノーコメント」と発言したことが米政府を怒らせて経済制裁した内容を発表させるに至ったのではないか、と解説した記事になります。米政府の経済制裁発表はかなり地味な事実のみの報道でしたが、そこを深堀した記事でした。企業への注意喚起の意味も込めました。企業は経済のみで世界展開をしたくても、現実的には日本は米国と同盟関係にありますから政治の影響を受けざるを得ません。そもそも人権問題に中立はありえません。中国ですら人権侵害はしていないと主張しているのですから、「人権侵害はしない」と言い切るにとどめればよかったのだろうと思います。今後も人権外交を展開する米国、人権NGOもキャンペーンでマスメディアを巻き込んだチェックがなされるのは確実でしょう。企業のトップは外交がどのように展開しているか、注視しながら言葉を選ぶ必要があるといえます。
最後に紹介する振り返り記事は、
「菅総理の緊急事態宣言 安倍総理と比較するとそっけないが女性広報官が温かさを補充」
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishikawakeiko/20210108-00216627
菅前総理はご自身の弱点をよく理解しており、そこを補充するために女性広報官を起用したように見えます。これは戦略的観点からはありなのですが、危機時のリーダーには、力強さ、温かさ、明るさ、つまり、将来への希望が持てる表現力がなくてはならない。残念ながら菅前総理はこの3つの要素が1つもなかったリーダーでした。メッセージ力は人任せにすることはできないのです。菅前総理への表現力のなさに批判が集中する中、別の視点を提供したい、女性広報官を応援したいといった前向きな気持ちで書きました。それが伝わったのであれば嬉しい限り。批判はしつつも改善策も提案するコンサルタントならではの記事をこれからも提供していきます。
【2021年記者会見振り返り解説 上記内容と連動した動画解説】