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誤解や憶測にまみれた眞子さんの結婚 元凶は宮内庁の広報体制の不備

石川慶子危機管理/広報コンサルタント

小室圭さんが弁護士試験に不合格だったことが日経新聞の社会面に掲載されたことに驚きました。私人の合否が掲載されるとは、、、。新聞が週刊誌化してしまったのでしょうか。3年以上に渡って報道され続けてきた秋篠宮家長女、眞子さんの結婚問題。10月26日の会見で露呈したのは、憶測報道を放置した宮内庁の危機管理広報体制の不備でした。

危機管理広報とは、クライシスコミュニケーションとも言われ、問題発生時に生じる信頼失墜といったダメージをいち早く回復させるコミュニケーション活動です。特に問題発生時には間違った情報や憶測報道もされるため、信頼関係維持のためにも受け身にならず公式発信をすることが求められます。

しかし、10月26日の会見で眞子さんはこのように述べました。

本日まで、私が公に発言する機会は限られてきました。

発言できなかったということは、宮内庁に危機管理としての広報体制が構築できていないことを露呈しています。続く発言でも

圭さんのすることが、独断で行われていると批判され、私の気持ちを考えていないといった一方的な憶測が流れる度に、誤った情報がなぜか間違いのない事実であるかのように取り上げられ、謂れのない物語となって広がっていくことに恐怖心を覚えるとともに、辛く、悲しい思いをいたしました。

危機管理広報の観点からすると、今回は根本的ミスコミュニケーションに原因があるといえます。憶測報道を止めるにはどうしたらよかったのでしょうか。眞子さんが持っている「正確な情報」を宮内庁が発信する必要があったのではないでしょうか。実際に宮内庁がとった行動は、「結婚に向けて、批判に対して説明責任を果たすべき方が果たしていくことがきわめて重要だと考えている」と述べ、圭さん親子側の対応を求めてしまいました。(2020年12月に西村泰彦宮内庁長官が発言)

この求めに応じて小室圭さんは、母親の金銭トラブルについて2021年4月に説明文書を公開しました。しかしながら、6万字28ページにも渡り、決してわかりやすい文書ではありませんでした。この文書も批判されていますが、そもそも弁護士が書く文書は長くて広報視点で私たちは書き直すことが多いのです。宮内庁に危機管理広報の体制が構築できていれば、小室圭さんに広報のプロを手配するよう助言できていたでしょう。

一方、眞子さんは10月26日に

一部の方はご存知のように、婚約に関する報道が出て以降、圭さんが独断で動いたことはありませんでした。例えば、圭さんのお母様の元婚約者の方への対応は、私がお願いした方向で進めていただきました。圭さんの留学については、圭さんが将来計画していた留学を前倒しして、海外に拠点を作って欲しいと私がお願いしました。

圭さんの行動を主導したのは自分であると明らかにしたわけです。本当はご自身で説明したかったということです。それを止めていたのは宮内庁ということになります。

そして、10月28日の西村宮内庁長官が定例記者会見で発信した言葉

眞子さまがあそこまで苦しまれてきたことに、お支えする立場にある者として大変申し訳ない

これは、危機管理広報の活動をすることができなかったことに対する反省の弁です。

もう一点、世論について考えるにあたって重要なポイントがあります。

小室圭さんが4月と今回の記者会見で繰り返して明らかにした元婚約者の窓口になっている週刊誌の関与です。

元婚約者の方からは、元婚約者の方の窓口となっている週刊誌の記者の方を通じて、前向きなお返事をいただいています。解決に向けて、私が出来る限り対応したいと思います。解決金を受け取っていただきたいという気持ちは変わっていません。

週刊誌のいいネタにされていることを物語っているのではないでしょうか。企業経営者でも週刊誌報道でびくびくしてしまう人は多いのですが、週刊誌=世論ではありません。週刊文春元編集長の新谷学氏は、ご自身の著書で次のように述べています。

「そもそもゴシップを楽しむというのは古今東西見ても、ひとつの文化だと思う。偉そうな人、気取っている人をおちょくって、世の中のガスを抜き、憂さを晴らす。それも週刊誌にとって大切な役割であることを私は否定しない。」(太字は著者による)*1

宮内庁が「決して多くの人が納得し、喜んでくれている状況ではない」(2020年11月秋篠宮文仁親王)といった発言をさせてしまったことが危機管理広報の視点からしても体制不備といえるのです。ここは説得して、新谷学氏の発言を紹介すべきでした。

また、経済学者の山口真一氏は、「炎上1件当たりに参加している人は、ネットユーザーの7万人に1人」と調査結果を公表し、「攻撃的で極端な意見ほど拡散される」と分析しています。*2「サイレント・マジョリティ」といった言葉があるように、物言わぬ多数派がいます。多くの国民が静かに見守っていることにも思いを馳せなかったことは残念です。

会見で「憶測報道を否定し、事実を発信」した眞子さん。筆者から言わせれば、宮内庁の広報体制不備であることへの抗議にも見えてしまいます。2004年に当時の皇太子徳仁親王(現天皇)が、「雅子のキャリアや人格を否定する動きがあったことは事実」と語った行為は「浩宮の乱」とも呼ばれました。いずれ「眞子の乱」と呼ばれる日が来るかもしれません。

宮内庁は、皇室と国民が誤解や憶測で関係を分断されるようなことが起きないよう、問題発生時にはすぐに正しい情報を発信する危機管理広報体制を今すぐ構築する必要があります。組織における「広報」は「パブリック・リレーションズ(PR)」とも言い、その目的はパブリックから「理解され、信頼され、好感を持たれる」ことにあります。平時だけではなく、危機時にも機能する体制を整えることが今回の教訓ではないでしょうか。

*1 「『週刊文春』編集長の仕事術」p206(ダイヤモンド社 2017年)

*2 「正義を振りかざす『極端な人』の正体」(光文社新書 2020年)

【メディアトレーニング座談会】(石川慶子MTチャンネル)

小室眞子さんと圭さんの結婚会見について

前半、記事と連動した宮内庁の危機管理広報の体制不備を指摘

後半は、別の観点からの意見を収録

危機管理/広報コンサルタント

東京都生まれ。東京女子大学卒。国会職員として勤務後、劇場映画やテレビ番組の制作を経て広報PR会社へ。二人目の出産を機に2001年独立し、危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。リーダー対象にリスクマネジメントの観点から戦略的かつ実践的なメディアトレーニングプログラムを提供。リスクマネジメントをテーマにした研究にも取り組み定期的に学会発表も行っている。2015年、外見リスクマネジメントを提唱。有限会社シン取締役社長。日本リスクマネジャー&コンサルタント協会副理事長。社会構想大学院大学教授

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