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「モテる」「テンパる」「バックレる」の語源は…?日本語教師の雑学!カタカナ動詞の由来

高橋亜理香日本語教師/日本語・日本酒ライター

お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。

「サボる」「バズる」「エモい」など、カタカナが使われた言葉はその由来の多くが外来語にありますが、そうではないものも多々存在します。

そんな言葉には実際どんな語源があるのか、前回の記事で「バレる」「パクる」「チクる」という3つのカタカナの動詞を取り上げました。

前回の記事は→こちら

今回も、前回に引き続きカタカナ言葉の中から、最後に「る」をつけて動詞化する形の言葉を新たに3つ紹介します!

「モテる」は江戸時代からの歴史!

異性にちやほやされるという意味に始まり、今や同性や動物など男女関係を越えて「周りに好かれる」という意味で使われる「モテる」という動詞。名詞化され「モテ/非モテ」など対義語まで生まれています。イメージとしては何となく「流行語からはじまったのかな?」などと思う人もいるかもしれませんが、実は「モテる」は歴史ある言葉なのです。

そもそも、「モテる」の語源は、文字どおり「持てる」から来ています。「持つ」の可能形で「持つことができる」という意味です。これが、転じて「維持できる/保てる」→「支えられる」→「支持される」という意味に解釈され、ちやほやされるという意味で使われるようになったようです。「もてはやされる」ということですね。

発祥はなんと江戸時代。いわゆる遊郭で、遊女に手厚くもてなされる男性に対して使われたのが始まり。そんな時代の言葉を今でも使っているというのは、感慨深いものです。

「持てる者と持たざる者」なんて言葉も、最近では財産だけでなく権力やスペックなど広範囲にわたって使われていますが、これも同じようなイメージなのかもしれません。

麻雀用語が由来の「テンパる」

「焦ったり慌てたりして気持ちに余裕がなくなり、切羽詰まる」という意味で使われる「テンパる」という言葉。ご存じの方もいるかもしれませんが、実は麻雀用語の「聴牌(テンパイ)」という言葉が由来です。「聴牌」とは、麻雀の牌があとひとつ揃えば上がれるという状態のこと。あと一歩という状況を表しています。

当初はその上がり前の状態を「テンパる」と言って、「もう準備はできている」「成就直前」というポジティブな意味で使用していたようですが、そのうち「直前」という一部分だけが捉えられて拡大解釈され、「極限」「ぎりぎり」といった意味合いに転じ、現在の「切羽詰まる」という意味の使われ方になったといいます。
「テンパる」以外にも麻雀用語が元となった言葉は多く「連チャン(連荘)」「トイメン(対面)」「リーチ」などもその一例です。そもそも麻雀用語は拼音(ピンイン)という中国語の発音が用いられますし、麻雀は中国由来ということで考えれば大きく「外来語」という括りにはなると思いますが、ちょっと特殊な由来として取り上げてみました。

「バックレる」は「しらば(っ)くれる」

「素知らぬ顔をする」という意味や「逃げる、行方をくらます」といった意味で使われる「バックレる」。現在はおそらく「あの新入社員は、入社早々バックレた」のように、「逃げる」という意味のほうで使われることが多いかと思います。何となく語感で想像のつく方も多いと思いますが、この「バックレる」は「しらばっくれる」「しらばくれる」という言葉が語源です。「しらばっくれる/しらばくれる」とは、「わかっているのに知らないふりをする、とぼける」という意味を持っています。

とはいえ、そもそも「しらばっくれる」と言葉自体がどういう由来なの?と思う方も多いかもしれません。

「しらばくれる」とは、「嘘が明白」という意味の「白々(しらじら)しい」や「白(しら)をきる」の「白」に「化ける」という意味の「ばくる」を合わせたものが「しらばくれる」と言われています。意味として考える分にはこれでよいのかな、と思いますが、少々気になるのはどうして「ばくる」が「ばくれる」という視点の変わる変形をしたのかという点。ちなみに「しらばっくれる」は口語的表現だそうで、「しらっぱくれる」「しらっぱぐれる」などの形もあるようです。そうなると「化くる」以外にも「はぐれる」など他の言葉にも語源の可能性があるのかもしれない、という気もします。今のところ明確な語源がわからないので、もう少し調べてみたいですね…。

使っているのに「知らない」言葉は意外と多い

今回もカタカナの動詞の由来を取り上げましたが、どんな由来か知らずに使っている言葉は意外と多いものですね。そして、流行語由来かと思いきや古くからある言葉も多い!(そもそも、それが当時の流行語であったということなのかもしれませんが)まだまだ言葉は宝の山です!

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日本語教師/日本語・日本酒ライター

都内日本語学校の専任講師を経て、現在はフリーランスの日本語教師として留学生の日本語・進学指導やオンラインレッスンをしています。外国人の日本語学習を通して日本人の気づかない日本語を探究中。兼業で日本酒ライター・テイスターとして、父の故郷の秋田県をはじめとした日本酒の良さを伝えるお仕事もしています。保有資格:日本語教育能力検定試験、J.S.A.SAKE DIPLOMA、SSI日本酒学講師、SSI利酒師

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