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「さくっ」「もふもふ」「まったり」…文化庁の調査でわかる!新しい意味が定着した言葉を日本語教師が解説

高橋亜理香日本語教師/日本語・日本酒ライター

お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。

日々変化していく日本語。昔とは違った意味で使われるようになって、今やそれがすっかり浸透している言葉も数多くあります。

そんな生き物「日本語」について、毎年文化庁で「国語に関する世論調査」という調査・統計を行い、その結果を公開していますが、今回はその中で比較的最近になって使用されるようになった擬態語をご紹介。

新たな使い方と言えども、今となってはもう他の言葉には置き換えられないほど定着している言葉たち。どう言い換えたらいいのかも併せて見てみましょう!

【参考】文化庁「国語に関する世論調査」(令和5年度版より)

「さくっと終わらせよう」の「さくっ」

文化庁の調査の中で、新しい使われ方をしている言葉として調査対象になった擬態語が7つ。うち一番「使うことがある」と回答した割合の高かったものが「さくっと終わらせよう」などのように使われる「さくっ」でした。実際に使用するという割合は56.2%だそう。「さくさく」と表されるときもありますよね。

この「さくっ(さくさくも含め)」というのは、元々「砂や雪などの粒状のものを踏みつけたときの軽やかな音」や「野菜を切ったり、硬くてもろいものを噛み砕いたりしたときの軽快な音」を表す言葉です。

それが、現在では従来の意味とともに「さっさと」のような意味合いを持つようになりました。

文化庁では「さくっ」の意味を「時間や手間をかけずに」と表しているので、ビジネスなどで上手く言い換えたいときは、そのように表現するといいでしょう。

「仕事の手際が良く小気味がいい」様子が、軽快さを持つ「さくっ」という語のイメージとリンクしたのでしょうね。

「もふもふした犬」の「もふもふ」

「さくっ」に次いで実際に「使う」という割合が52.6%と高かった言葉が「もふもふ」だそうです。

「もふもふの犬をわしゃわしゃしたい」のように、かなり感覚的に使いますよね。そもそも「もふもふ」自体を「もふもふする」や「もふる」のように動詞として使っていたりもします。

文化庁ではこの「もふもふ」を「動物などがふんわりと柔らかそう」という表現をしていますので、言い換えするならこのような表現でいいと思います。

ですが、同じような意味を持つ「ふわふわ」や「もこもこ」と比較するとどうでしょう?

「もふもふ」VS「ふわふわ」で考えると、「もふもふ」のほうが量が多く密度が高いイメージで、「ふわふわ」には軽やかで空気を多く含んだイメージがあります。

また「もふもふ」VS「もこもこ」で考えると、「もこもこ」の場合は泡など半固体のようなものが丸く膨らんで、たくさんの突起ができている状態を想像するのではないでしょうか。そう考えると「もふもふ」は「もふもふ」でしかない言い得て妙な表現なのかもしれません。

蛇足ですが、「わしゃわしゃ」は「愛情を持って髪や動物の毛を掻きなでる」といった意味ですが、ネットで調べてみる限り、こちらは「もふもふ」に比べてまだ浸透率は低く、違和感を持つ人も多そうです。

「休日は恋人とまったり過ごす」の「まったり」

「実際に使用する」割合が「もふもふ」と同じ52.6%で同率2位だった言葉が「休日は恋人とまったり過ごす」などの「まったり」だそうです。

「まったり」は従来味わいを示す言葉で「まろやかでこくや深みのある」といった意味で使われていました。元々は穏やかな様子を表す近畿地方の方言からきているようですね。味わいを表す使い方は、最近は少し減っているような印象もあるので、人によって連想する食べ物は少し差がありそうな気もしますが、個人的にはバターやフォアグラのようなテクスチャーのものを思い浮かべます。みなさんはどうでしょう?

この「まったり」の新たな意味は「のんびり」というもの。文化庁は「ゆっくり、のんびり」と言い換えしています。落ち着いて穏やかという意味では、語源と近いのかもしれません。最近では似た意味のカタカナ語として「チル」なども使われるようになってきましたし、今やむしろ新しい使い方のほうが主なものとなっているのではと感じます。

擬態語は抽象的なイメージを表しやすい!

擬態語は抽象的なイメージを共有するのに最適な言葉。こうして新しく定着している言葉も、他の語に言い換えることはできるものの、100%しっくりとくる置き換えはなかなか難しく、新しい使い方が生まれる理由としても納得です。今回の文化庁の調査にも新しい使われ方はまだまだありましたので、またご紹介したいと思います!

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日本語教師/日本語・日本酒ライター

都内日本語学校の専任講師を経て、現在はフリーランスの日本語教師として留学生の日本語・進学指導やオンラインレッスンをしています。外国人の日本語学習を通して日本人の気づかない日本語を探究中。兼業で日本酒ライター・テイスターとして、父の故郷の秋田県をはじめとした日本酒の良さを伝えるお仕事もしています。保有資格:日本語教育能力検定試験、J.S.A.SAKE DIPLOMA、SSI日本酒学講師、SSI利酒師

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