「がっつり」「ふわっ」「ごりごり」?文化庁の調査でわかった擬態語の新しい使い方を日本語教師が解説
お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。
日々変化していく日本語。昔とは違った意味で使われるようになった言葉も数多くあります。
そんな生き物「日本語」については、毎年文化庁で「国語に関する世論調査」という調査・統計を行い、その結果が公開されていますが、今回はその中で比較的最近になって使用されるようになった擬態語をご紹介。
前回の記事で新たな意味が浸透した擬態語に触れましたが(前回の記事はこちら→「さくっ」「もふもふ」「まったり」…文化庁の調査でわかる!新しい意味が定着した擬態語を日本語教師が解説)今回は、定着しつつあるものの、まだ「使わない」「気になる、違和感がある」とも考えられているものです。みなさんは使うのか、また使わないとしたらどう言い換えするのか、を一緒に考えてみましょう。
【参考】文化庁「国語に関する世論調査」(令和5年度版より)
「昼ごはんをがっつり食べる」の「がっつり」
まずは「午後に向けて、昼ご飯をがっつり食べておこう!」のように使われる「がっつり」です。
文化庁の調査では、表現として「気になる」と違和感を覚える割合は14.0%と多くはないものの、実際に使うか?という問いには「使わない」という割合が52.7%と半数以上だそうです。
元は北海道の方言とのこと。文化庁ではこの「がっつり」を「しっかり、たくさん」という言い換えをしています。辞書を確認すると「じゅうぶんであるさま、たくさん、たっぷり」と概ね同じ表現です。
実際の使用例を考えると「上司にがっつり叱られた」のような使い方もあるので、「たくさん」という意味をプラス・マイナスどちらの方向でも当てはめられるということでしょう。
違和感はないと言われつつ使用がまだ浸透しない理由はわかりませんが、日本語には昔から「濁音減価」という音が濁ると価値が下がるという意識があるので、そういった語感も要因かもしれないと個人的には思っています。
「ふわっとした目標」の「ふわっ」
次に、「そんなふわっとした目標じゃなくて、具体的な数値で表してくれよ」のように使われる「ふわっ」という言葉。「ふんわり」と言い換えたりすることもあるかと思います。
こちらは、調査によると「気になる」と違和感を覚える人が23.3%で、「実際には使わない」という割合が58.2%という結果です。「がっつり」よりさらにまだ浸透率が低いようです。
本来は「柔らかくふくらんでいる様子」を表す「ふわっ」ですが、新しい使い方は「あいまいではっきりしない」という意味。
ふわふわしたものは境目があいまいなので、イメージとしては納得がいきますが、「ふわっ」という語彙自体があいまいなイメージで使用に結びつかないのかもしれませんね。
「ごりごりの体育会系」の「ごりごり」
3つ目は「ごりごりの体育会系」のように使われる「ごりごり」です。令和5年度に文化庁の調査対象になった擬態語の中では一歩定着が遅れているようで、言葉遣いが「気になるか」の問いには「気になる」が39.6%、「実際使うか」の問いには「使わない」が79.1%という結果でした。
元々の意味は「固いものにこすりつけて押し動かす」や「噛むと固い感じがする」といったものですが、最近の新しい使い方は「筋金入り」や「エネルギッシュ」といった意味です。
新旧どちらの使い方も「強固」という意味で結びつきますが、新しい使い方は、ニュアンスとしてフラットまたはよい意味ともとれるのに対し、従来の使い方が「無理やり」さを感じさせる少々マイナスのニュアンスのものだったので、まだ定着しにくいのかもしれません。
理解語彙、使用語彙は人それぞれ
新しい日本語がどんどん増えてきて、イメージとしては理解できるけど、それを「どう説明したらいいのか」という、それこそ「ふわっ」としたものも増え、わたしは外国人を相手にする職業柄、その言い換えや説明に日々悩みます。理解語彙、使用語彙は人それぞれなので、自分が当たり前に使う言葉を他人は使わない、ということも。みなさんもぜひ、日々変わる言葉について考えてみてくださいね!
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