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「熊」のアクセントは「クマ\」?「ク\マ」?日本語教師と考える「変化する」標準アクセント

高橋亜理香日本語教師/日本語・日本酒ライター

お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。

ここ数年、全国で熊(クマ)の出没による被害が増え、関連ニュースを頻繁に耳にします。「クマ」(動植物は通常カタカナで表記するのがルールのため、以下クマと表記します)というワードを聞く頻度が格段に上がっていることで、ちょっと気になるのが「クマ」のアクセント。みなさんは、疑問に思ったことはないですか?

今回は「クマ」を例にした日本語のアクセントのお話です!

ニュースを見てると「クマ\」が多いけど…

TVで「〇〇県〇〇市の住宅街で、クマの目撃情報が…」などといったニュースを聞いていると、基本的に「クマ\」と後ろの「マ」を高くする尾高(おだか)型のアクセントで発音されています。ですが、それをニュース以外の番組や日常生活にまで広げてみると、(地方にもよるのかもしれませんが)「ク\マ」と最初の「ク」を高くとる頭高(あたまだか)型のアクセントで発音する人のほうが多いように感じます。(※日本語のアクセントはピッチの高低で考え、本来は音の高→低の下がり目に着目しますが、ここではわかりやすく高い部分をとって説明しています)

実際、ネット上で検索してみると、ニュースで聞く「クマ\」という2拍目を高くとる発音に「違和感がある」「目の下の隈(クマ)と区別がつかない」という意見が多く見られました。

といっても、日本語には標準アクセント(基本的に東京方言が元)というものがあり、ニュースを読むアナウンサーの発音は、その標準アクセントに基づいています。ということは「クマ」の正しいアクセントは、後ろが高い「クマ\」なのでしょうか。

実はアクセントが変わった「クマ」

アナウンサーをはじめ日本語を伝える仕事の人や、日本語教育に携わる人などが、標準アクセントの確認のために使うのがアクセント辞典。中でも有名でよく使用されるのがNHKのアクセント辞典です。実はこのNHKのアクセント辞典は2016年に『NHK日本語発音アクセント新辞典』に改訂され、それと同時に3300の語についてアクセントの見直しが行われたのです。

「クマ」はその中のひとつで、従来は「クマ\」というアクセントを標準としていたのが、改訂によって「ク\マ」というアクセントも認められ、どちらの発音も標準アクセントの扱いとなりました。

変更があったということは、つまり世間一般で「ク\マ」の発音が定着しているということ。そのうえで、ニュースで聞くアクセントが概ね「クマ\」なのは、以前からの標準アクセントだからなのですね。

あくまで私感で、わたしはいわゆる生きた動物としての怖い「クマ」には「クマ\」のアクセント、ぬいぐるみやキャラクターとしての「くま」には「ク\マ」の発音が選択されているような印象を持っていましたが、おそらくこれは、ニュースで扱われるのが基本的に生物である「クマ」であり、都市圏での日常生活で話題に上るのはキャラクターが多い、ということに起因するのではないかと思っています。

「クマ」は難しい…過去には「くまモン」論争も?

「クマ」の発音は意外とやっかいで、かつてはアナウンサーの間でゆるキャラ「くまモン」のアクセントについて論争が起きたりもしたとのこと。TV局によって差が生じる事態もあったようで、地元・熊本県立大学ではこの騒動や、アクセントについての調査が論文として発表されたりもしています。

ちなみに「クマ」だけでなくアクセント辞典の改訂では、なんと「父」などの語のアクセントも変更されています。元々は「チチ\」が標準だったそうですが…わたしは少々違和感あり、でした。

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日本語教師/日本語・日本酒ライター

都内日本語学校の専任講師を経て、現在はフリーランスの日本語教師として留学生の日本語・進学指導やオンラインレッスンをしています。外国人の日本語学習を通して日本人の気づかない日本語を探究中。兼業で日本酒ライター・テイスターとして、父の故郷の秋田県をはじめとした日本酒の良さを伝えるお仕事もしています。保有資格:日本語教育能力検定試験、J.S.A.SAKE DIPLOMA、SSI日本酒学講師、SSI利酒師

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