「バレる」「パクる」「チクる」の語源は…?日本語教師の雑学!実は外来語が由来ではないカタカナ言葉
お読みくださってありがとうございます!日本語教師の高橋亜理香です。
「サボる」「バズる」「ググる」…その語源が何か、みなさんはわかりますか?おそらくご存じの方が大半かと思います。
「サボる」はフランス語の「sabotage(サボタージュ)」という労働組合の争議行為を意味する言葉が由来。
「バズる」はハチが一か所に群がってぶんぶん音を立てる様子を表した「buzz」という英単語から。
「ググる」は言わずと知れたGoogle社の検索エンジンが由来です。
このようにカタカナを使った言葉は、その由来が外来語にあることが多いのですが、実はそうではないものも多々存在します。
今回は、そんな「外来語が由来ではない」カタカナ言葉の中から、最後に「る」をつけて動詞化する形の言葉3つを紹介します!実はこんな語源があるのです!
「バレる」は「晴(は)れる」のネガティブパターン?
年齢問わず、日常生活に欠かせない言葉となっている「バレる」という動詞。意味自体はいくつかあるのですが、一般的に最もよく使われているのは「秘密や隠し事が露見する、発覚する」という意味かと思います。最近では「身バレ」「親バレ」などの言葉もできています。
そんな「バレる」の語源。実は100%明白というものがあるわけではないのですが、一説として1965年に発売された前田勇著『上方語源辞典』の中に「秘密を暴(あば)く」という言葉に、対になる「あばける(露わになる)」という自動詞のような形があり、それが「あばれる」に変異、さらに略したのが「ばれる」ではないか、という推測があります。ただこれは、「秘密が露見する」という意味であれば確かに筋が通るのですが、「ばれる」には複数の意味があるため、その他の意味を考えると当てはまらないものがあります。
そこで、有力と考えられているのが「濁音減価」という説。「濁音減価」というのは、日本語において清音に濁点をつけて濁音化することで、そのものの価値を下げる・悪く言う、という現象。
例えば、様子を表す「さま」に濁音をつけると「この“ざま”だ」という罵りになったり、「さらさら」が「ざらざら」になるとテクスチャーが滑らかでなくなる、「玉」が「だま」になると「生地に”だま“ができる」とマイナスイメージになる、といった現象です。確かに!と思いますよね。
その濁音減価が「明らかになる、すっきりする」といった意味の「晴(は)れる」に起こったのが「バレる」ではないか、というのが有力とされているようです。
「パクる」は食べる様子の「ぱくり」から
「パクる」も古くから浸透している言葉ですが、外来語由来ではありません。「盗用する、盗む」「横領する」「警察官などが犯人を捕まえる」といった意味を持つ「パクる」ですが、実は口を大きく開けて食べ物を食べる様子を表す「“ぱくり”と食べる」の「ぱくり」が由来です。丸ごとくわえて飲み込んでしまう様子が「人のものを盗む、万引きする」という意味になり、それがここ数十年で「盗用する」という意味に転じたようです。
古くは「犯人を捕まえる」という意味のほうが一般的でしたが、そちらは「縛(ばく/はく)」が元になっているようです。
「チクる」は「くち」を逆さまにした「倒語」
3つ目は「告げ口する、密告する」という意味で使われる「チクる」です。その昔はいわゆるヤンキー用語的なものでしたが、今は一般化してすでに使い古されています。この「チクる」、実は由来は「口(くち)」なのです。「くち」を逆さまにして動詞化したものが「チクる」です。これは「倒語」という現象で、元々は仲間内だけで通じるよう、合言葉として言葉を逆にしたものを用いた言葉遊びのようなものです。江戸時代に流行したという歴史があります。90年代やここ最近などでも業界用語などで使われて、定期的に流行の波がある気がします。そして、その倒語を「告げ口」の「口」に適用したものが「チクる」で、俗語の辞典にも掲載されています。
50年代の不良文化から生まれているようですが、江戸っ子の血が流れていたのですかね?現在はもはや「死語」といったレベルですが、「チクる」に代わるようなぴったりとくる新語がパッと思い浮かばないことからも、ある種唯一無二の言葉であるとも言えるのかもしれません。
カタカナだけど由来は日本語
今回挙げた3つの言葉は、結果的にすべてが日本語由来のものでした。また次回、その他のカタカナ言葉の語源も取り上げたいと思います。雑学として話のネタにしてみてください!
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