【鎌倉殿の13人】痔で出血したり、ネズミに服を喰われたらなぜ起請文の効果は無くなるのか?
文暦2年(1235)閏6月28日。鎌倉幕府は、ユニークなことを定めました。それは、起請文の効果が無くなるのは、どのような時かということです。先ず、起請文と言うのは、今風に言うと誓約書のこと。一般的には、人が契約(約束)を交わす際、その契約を破らないことを神仏に誓う文書のことです。では、幕府はどのような時に、起請文の効果が無くなると定めたのでしょうか。
1つは、鼻血を出した時。2つ目は、起請文を書いた後に病になった時。しかし、以前から病である場合は、これを除くとされました。3つ目は、鳶や鳥に糞をかけられた時。4つ目は、ネズミに衣装を喰い破られた時。5つ目は、身体から出血した時。ただし、楊枝を使用した時、生理の時、痔の時に出る血は除くとされました。6つ目は、喪が生じた時。7つ目は、父か子が罪を犯した時。8つ目は、飲食の際に咽せた時。ただし、背中を打って貰わなければならないほど、激しく咽せた時とされました。9つ目は、普段乗っている馬が死んだ時。
以上の9ヶ条の出来事が発生した時は、起請文を書いていたとしても、その効果は無くなると幕府は定めたのです。現代人の我々から見たら、思わず吹き出してしまいそうな内容のものもあります。「どうして、そんなことで起請文の効果が無くなるの?」と疑問に感じる人もいることでしょう。これまで列挙してきたことは、ほぼ凶兆(悪いことが起こる前兆)と当時、見做されていました。例えば、鳥に糞をかけられたり、ネズミに衣装などを齧られたりしたら「これは病になる前触れかも。慎まなければ」と当時の人々は考えたのです。また、出血も当時は穢れと見做され、忌まれていました。つまり、凶兆や穢れが発生した際に、起請文の効果が無くなると定められたのでした。