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ガザ攻撃はジェノサイドー国際社会や日本にできることは?

志葉玲フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)
避難を余儀なくされるガザの少年たち(写真:ロイター/アフロ)

 2023年10月7日のイスラム組織ハマス等による大規模な襲撃の受けての、イスラエルが開始したパレスチナ自治区ガザへの攻撃は、もはや、報復というレベルを越えた大虐殺となっている。ガザ当局等によれば、本稿執筆時点で、2万1672人の人々が殺され、その内、約70%が女性や子ども達という恐るべき状況だ。また、5万7000人近くが負傷している。ガザの人口の8割以上が避難生活を余儀なくされ、その避難先である国連管理の学校や病院もイスラエル軍は攻撃し、食料や水、電気や燃料等のガザへの運び入れを制限するなど、ガザの人々の安全や生活そのものを破壊しようとしている。これは最早、単なる国際人道法違反にとどまらず、人間が人間に対して行う最悪で最も罪深い行為=ジェノサイドと見なすべきだろう。こうしたイスラエルのが虐殺や破壊を、自由や民主主義、そして人権を重んじるとしている西側先進国、とりわけ、米国が支持し、支援している。これは、最早、イスラエルとパレスチナの争いにとどまらず、第二次世界大戦の反省から国連が発足し、人権擁護と「法の支配」を国際社会に根付かそうとしてきた人類の試みを、全否定するような大変な暴挙なのだ。

〇国連管理の施設への攻撃

 例え戦争の最中であっても、何をしても許される訳ではなく、民間人や民間の施設は攻撃してはならないというのが、国際人道法の大原則だ。だが、イスラエルは、まるで国際人道法など存在しないかのような振る舞いを続けている。深刻なのは、ガザの人々の避難所となっている学校など国連管理の施設にまで攻撃が行われているということだ。国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)によれば、10月7日以降、UNRWA 施設に対する 60 件の直接攻撃があり、少なくとも308人が殺害され、さらに少なくとも1,095人が負傷したとされている。また、医師や教師、運転手等の国連現地スタッフも142人が死亡している。

 相手が非戦闘員である女性や子どもだと認識していながら、虐殺が行われた疑いもある。中東の衛星テレビ局アルジャジーラの報道によれば、12月13日、ガザ北部ジャバリア難民キャンプの西にある国連管理の学校シャディア・アブ・ガザラにイスラエル軍の兵士達が押し入り、女性や子ども、乳児を含む7人が殺害されたという。目撃者がアルジャジーラに語ったところによれば、イスラエル軍の兵士達は、避難者達に至近距離から発砲したのだという。

人権団体「ユーロ・メッド・ヒューマンライツ・モニター」によると、他にもいくつかの避難所となっている国連管理の学校をイスラエル軍が襲撃し、避難民を殺害したり、拷問を行ったりしたとの報告があるのだという。その際、女性達に服を脱ぐよう強要したとの証言もあるとのことだ。

〇ジャーナリストへの攻撃

 ジャーナリストへの攻撃も顕著だ。メディア関係者らによる国際的なNGO「ジャーナリスト保護委員会」は、ガザ攻撃以後、少なくとも57人のパレスチナ人ジャーナリストが死亡したことについて、その声明で「1992年に活動を開始して以来、月当たりで最悪の犠牲者数だ」と危機感を露わにした。なお、メディア関係者の犠牲者数については、中東系のメディアは「100人以上」と報じているものがほとんどだ。また、イスラエル軍の無人攻撃機(ドローン)による攻撃によって、アルジャジーラのカメラマンが死亡、同局のガザ支局長が負傷したことについて、12月18日、同局は責任追及のため、国際刑事裁判所(ICC)に捜査を付託することを発表した。アルジャジーラによれば、死亡した同局のカメラマンのサーメル・アブダッカ氏は、多数の民間人が避難する学校を取材中、イスラエル軍のドローンによる攻撃を受けた上、同軍は救急隊員らによる搬送を5時間以上妨害したという。


〇ガザの人々の9割が飢餓状態

 食料危機や健康状態の悪化も深刻だ。イスラエル軍の攻撃や主要道路が使えないため、ガザ内への援助物資の配布が困難を極め、ガザの人々は深刻な飢餓に直面している。世界食糧計画(WFP)が12月21日が発表した報告によると、ガザの食料危機は前例の無いレベルの深刻さで、全人口の93%が、危険なレベルの飢餓状態にあるという。さらに、栄養状態の悪さに加え、「平均して人口 4,500 人に 1 つのシャワー、220 人に 1 つのトイレしかない」(WHO)などの衛生環境の悪さから、感染症が蔓延しており、下痢はガザ攻撃以前の25倍となっている。その半数は5歳未満の幼児で、脱水症状により死亡リスクがある。著名な国際人権団体の「ヒューマンライツ・ウォッチ」も、12月18日付の声明で「イスラエル軍は水、食糧、燃料の供給や、人道支援を故意に妨害し、農地を破壊し、人々の生存に必要なものを奪っている」「イスラエル軍は飢餓を武器として使っている」と批判した。戦争において飢餓を兵器として利用することは、国連安保理決議2417号で強く批難され、禁止されていることなのだ。

 医療物資の不足や医療機関への攻撃も深刻だ。イスラエルによる厳しい封鎖で、ガザの各医療機関では抗生物質や麻酔薬すら底をつき、医師達は負傷した子ども達を麻酔なしで手術することを余儀なくされている。また、電力の供給を断たれ、発電機を動かす燃料も運び入れが制限されているため、保育器や人工透析などが使えず、集中治療室も機能していない。世界保健機関(WHO)によると、12月末の時点で、ガザ全体の医療機関のうち、半数以上が全く機能しない状況にあるという。

〇ガザ攻撃はジェノサイド

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フリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)

パレスチナやイラク、ウクライナなどの紛争地での現地取材のほか、脱原発・温暖化対策の取材、入管による在日外国人への人権侵害etcも取材、幅広く活動するジャーナリスト。週刊誌や新聞、通信社などに写真や記事、テレビ局に映像を提供。著書に『ウクライナ危機から問う日本と世界の平和 戦場ジャーナリストの提言』(あけび書房)、『難民鎖国ニッポン』、『13歳からの環境問題』(かもがわ出版)、『たたかう!ジャーナリスト宣言』(社会批評社)、共著に共編著に『イラク戦争を知らない君たちへ』(あけび書房)、『原発依存国家』(扶桑社新書)など。

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