銀座と臨海副都心を結ぶ「地下鉄計画」 計画は答申で手に取るようにわかる
オリンピックが終わったら、新しい地下鉄の計画が動き出す――『読売新聞』が4月3日に夕刊(東京本社版)で報じたのを見たとき、驚いた。
記事によると、銀座地区と国際展示場を結ぶ路線だという。その路線を建設する方針を、都が固めたのだという。
いきなり1面に出てくるのだから、すごい話なのかもしれない。しかし記事を読むと、「あれ、この計画、どこかで聞いたことがあるなあ」と思うだろう。
鉄道、とくに都市鉄道の計画は、すでに長い間構想があったりするのだ。
臨海副都心への計画はすでにあった
国土交通省の審議会「交通政策審議会」では、「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」という答申を出している。2016年4月20日のものだ。そこではすでに、この計画が「都心部・臨海地域地下鉄構想の新設及び同構想と常磐新線延伸の一体整備(臨海部~銀座~東京)」として記されている。
この計画では「東京駅付近において常磐新線と相互直通運転を行う」としており、別の構想である「常磐新線の延伸(秋葉原~東京(新東京))」と一体となった計画となっている。つまり、つくばエクスプレスを秋葉原から東京駅付近に延伸し、そこから臨海副都心への地下鉄計画と接続させ、一体化させて新線を開通させるというものだ。
答申では、「事業性に課題」があるとしており、「検討熟度が低く構想段階」となっているものの、ある程度構想が固まったとして、今回の報道になったようだ。
都は計画推進にあたって、築地市場跡地の整備や、臨海部の開発促進などを理由にしている。
すでにあった計画が、オリンピック後の都市計画の中で浮上し、都の優先課題になった中での『読売新聞』の報道である。
しかし新線の計画は、交通政策審議会の答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」の中に登場している。では、どんな計画があるのか。
注目すべき新線計画
これから東京圏にどんな鉄道ができるかは、あらかじめ計画が決まっている。たとえば先日発表された横浜市営地下鉄あざみ野~新百合ヶ丘延伸も、この答申に記載されている。「横浜3号線の延伸(あざみ野~新百合ヶ丘)」として、計画がすでにあるのだ。
JR東日本が計画を調査し始めた「羽田空港アクセス線の新設(田町駅付近・大井町駅付近・東京テレポート~東京貨物ターミナル付近~羽田空港)及び京葉線・りんかい線相互直通運転化(新木場)」は、なによりも注目すべき新線である。調査を開始し可能性を判断している段階だが、JR東日本はこの計画に力を入れており、完成の際には羽田空港アクセス交通が大きく変わるという可能性を秘めている。
対する京急電鉄は「京急空港線羽田空港国内線ターミナル駅引上線の新設」により羽田空港国内線ターミナル駅の使い勝手を向上させるだけではなく、乗り入れ先の都営地下鉄において「都心直結線の新設(押上~新東京~泉岳寺)」の計画ともリンクし、羽田~成田間のアクセスを向上させることも可能だ。
さらに東急電鉄は「新空港線の新設(矢口渡~蒲田~京急蒲田~大鳥居)」、いわゆる「蒲蒲線」の計画に力を入れており、空港アクセスに参入しようと考えている。
これらの計画は「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」となっており、東京の国際競争力を高めるために役立つものとして計画されている。
一方でわたしたちの暮らしに関わる通勤輸送の鉄道はどうなのか。「地域の成長に応じた鉄道ネットワークの充実に資するプロジェクト」として、興味深いものがいくつもある。注目度が高いものといえば、「埼玉高速鉄道線の延伸(浦和美園~岩槻~蓮田)」や「東京12号線(大江戸線)の延伸(光が丘~大泉学園町~東所沢)」、「多摩都市モノレールの延伸(上北台~箱根ヶ崎、多摩センター~八王子、多摩センター~町田)」のように通勤などが便利になりそうなものや、「京王線の複々線化(笹塚~調布)」や「東急田園都市線の複々線化(溝の口~鷺沼)」のように混雑緩和に役立ちそうなものもある。
ただし、都心部のプロジェクトは東京の国際競争力の強化や都心集中の動きを受けて活発になるのに対し、周縁部のプロジェクトは人口の推移なども考えるとなかなか進みにくいのかもしれない。
さまざまなところで報じられる鉄道の新線計画は、ある程度はこの答申に記されており、計画に沿った形で進められている。新線や複々線化の記事が出たら、この答申を調べてみると、ほとんど載っていると言えるだろう。