ウクライナの迎撃率は低下していない、巡航ミサイルと自爆無人機の迎撃率は80~90%と高く安定したまま
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筆者はウクライナ空軍司令部の発表数値を元にミサイル迎撃率の統計データを取っていますが、最近の傾向として迎撃率は低下していません。参照:ウクライナ空軍司令部公式facebook
ウクライナ迎撃戦闘の推移
・2023年12月:776飛来609撃墜、阻止率78%
・2024年01月:582飛来385撃墜、阻止率66%
・2024年02月:475飛来332撃墜、阻止率70%
・2024年03月:810飛来610撃墜、阻止率75%
・2024年04月:425飛来316撃墜、阻止率74%
ウクライナ軍による迎撃は各月の阻止率の変動は迎撃困難な高速目標(弾道ミサイルなど)の飛来規模に起因していますが、低速目標(亜音速巡航ミサイルや自爆ドローン)に限定すると阻止率は80~90%と高い数字でずっと安定しています。高速の弾道ミサイルはパトリオットおよびSAMP/T以外では迎撃不能という問題は以前からの懸念点であり、最近新たに生じた問題ではありません。
出典:ウクライナ迎撃戦闘2024年4月分
傾向を見るべき指標は低速目標の迎撃率
ウクライナ軍の防空システムの能力が低下したかを判定するならば、パトリオットおよびSAMP/T以外では撃墜できない高速の弾道ミサイルなどの迎撃率は参考にせず、低速の巡航ミサイルとシャヘド自爆無人機の迎撃率を見るべきです。ウクライナ防空部隊は最近6ヶ月の低速目標の迎撃率は80~90%と高い数字を維持しており、その前の6カ月も同じです。
ロシア軍が弾道ミサイルを大量に発射すれば迎撃率は下がりますが、それはウクライナ防空システムの能力低下を意味しません。この要因(パトリオットやSAMP/Tの未配備地域を弾道ミサイルで狙う)で迎撃率の数値が低下しても、それはパトリオットやSAMP/Tの配備数が少ない以上はどうしようもなく、新たに問題が生じたわけではないのです。
2023年12月以降にロシアは北朝鮮から弾道ミサイルを大量購入して投入したので、ミサイルに限定すれば最近の迎撃率は低下しています。しかし低速の巡航ミサイルとシャヘド自爆無人機については迎撃率に目立った変動はなく、ウクライナ防空システムについて迎撃ミサイルの備蓄が枯渇するなどの兆候は見受けられません。
ロシア軍の亜音速巡航ミサイルの推移
- 2023年09月:90発(78撃墜、87%)
- 2023年10月:5発(4撃墜、80%)
- 2023年11月:4発(4撃墜、100%)
- 2023年12月:109発(101撃墜、93%)
- 2024年01月:124発(102撃墜、82%)
- 2024年02月:46発(39撃墜、85%)
- 2024年03月:116発(95撃墜、82%)
- 2024年04月:71発(55撃墜、77%)
ロシア軍のシャヘド136自爆無人機の推移
- 2023年09月:503発(396撃墜、79%)
- 2023年10月:285発(229撃墜、80%)
- 2023年11月:380発(303撃墜、80%)
- 2023年12月:598発(490撃墜、82%)
- 2024年01月:334発(271撃墜、81%)
- 2024年02月:361発(276撃墜、76%)
- 2024年03月:596発(511撃墜、86%)
- 2024年04月:287発(258撃墜、90%)