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JR東日本京葉線、幕張新駅の駅名募集 「高輪ゲートウェイ」の不満が再燃か

小林拓矢フリーライター
京葉線のE233系(写真:kawamura_lucy/イメージマート)

 千葉県の幕張新都心は、さらに拡大しようとしている。「イオンモール幕張新都心」近くの京葉線新習志野~海浜幕張間に、2023年春に新駅ができる。2020年7月下旬に本格着工した。幕張新都心エリアの利用者が増えていく中、新駅でアクセスの悪い状況を変えるのが大きなねらいだ。現在の海浜幕張は、イベント時には利用者で大変混雑しており、過密状態にある。この状況を解決しなくてはならない。

 いっぽうで、イオンモール幕張新都心などは海浜幕張からは距離が離れており、また施設自体が巨大なものとなっているため、その利用者などの駅をつくる必要もできてきた。

 最近になって幕張エリアの開発がさらに進んできた状況の中、新駅構想が生まれてきた。

 この駅はJR東日本と千葉県・イオンモール・千葉市による「幕張新都心拡大地区新駅設置協議会」によって設置されることとなり、この協議会が費用の6分の5を負担することになっている。

 この駅づくりの一環として、幕張新駅(仮称)の駅名を募集することになった。

広大な幕張新都心エリア
広大な幕張新都心エリア写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

駅名募集には苦い経験が

 今回の応募資格は千葉市在住・在勤・在学の方となっており、だれもが応募できるわけではない。しかし、応募するとなると、いろいろ騒がしくなるとなるのが世の常だ。トップになったものが採用されれば「なぜこんなにセンスの悪いものがトップで採用されるのか」、上位のものが採用されれば「なぜトップでもないのに採用されたのか」、下位のものが採用されたら「なぜこの程度の票数で採用になるのか」と言われるのがオチである。

 JR東日本は、そんな事態を経験していたはずである。山手線の「高輪ゲートウェイ」だ。

 この公募では、応募第1位が「高輪」、2位が「芝浦」、3位が「芝浜」となっていた。「高輪ゲートウェイ」は130位、36票しかなかった。JR東日本の再開発計画との関連もあって生まれたこの駅名は、反対の署名運動まで引き起こした。

 幕張新駅(仮称)の募集にあたっては、地域の人たちに応募してほしい、言い換えると他地域からの投票を防ぐために応募資格を限定した。その上、「応募された駅名は応募数による決定ではなく、ご応募いただいたすべての駅名から新しい駅にふさわしい名前を当社にて選考します」としている。

「高輪ゲートウェイ」が大騒動になったことも背景にあることは容易に想像できるものの、千葉市在住者などにネタ出しをしてもらっているという程度の「応募」になっている。

 むろん、変な名前が組織票で入ったり、JR東日本の意向に沿わない駅名がトップに来てそれを採用しなければならなかったりというのを防ぐためではあるが、応募する気がなくなってしまうような条件である。

列車名の募集はどうだったのか?

 新幹線が新しく走る際に、列車名を募集することがある。2011年3月に東北新幹線が新青森まで全線開業する際に、速達タイプの新幹線の列車名が「はやぶさ」になった。この愛称は7位のものである。1位は「はつかり」、これは長年親しまれてきた東北特急の愛称である。3位は「みちのく」、これは常磐線経由で上野から青森を結ぶ対北海道連絡特急の愛称であった。その際に2位だったのが「はつね」だ。そのころはやっていた「初音ミク」に由来するもので、いわば「ネタ投稿」である。

 もっとも、駅名公募での「高輪ゲートウェイ」の3位「芝浜」というのは、落語の演目で知られるもので、これが本当に駅名になるというのも、「夢になるといけねえ」ということだったのかとは考える。それを「はやぶさ」の際の「はつね」というのと近いとはいえる。

 しかし、そういう「夢」を見せるのも、こういった駅名や列車名の募集の際には重要な要素である。

 駅名や列車名の募集を、単なるアイデア出し程度のものにして、参考までにしかしないというのはいかがなものか。

駅名は地域の看板

 駅名というのはその地域をあらわすものであり、安易な命名は控えてほしいというのを多くの人は考えているだろう。「高輪ゲートウェイ」はJR東日本の再開発計画ともかかわっているものの、はたして一企業のプロジェクトとリンクした駅名の是非をどう考えるかは議論すべきものとなってしまう。温泉や観光施設にリンクした駅名というのもあるが、いいのかどうかわからない。いっぽう「平成の大合併」で地名も変わってしまった。

 京急電鉄が地域活性化を名目に子どもたちに呼びかけて駅名を公募し、2020年3月に4駅を改名したものの、親しまれてきた駅名を変えることには疑問が残る。

 駅名や列車名というものは極めて公共性の高いものの、募集すると鉄道会社などの意に沿わないものが集まり面倒になるというのは確かだ。

 幕張新駅(仮称)は、請願駅ということもあり、JR東日本が募集するのではなく「幕張新都心拡大地区新駅設置協議会」の中でも千葉県や千葉市が中心となって、熟議に熟議を重ねて決めるのが妥当ではないか。そうしないと、「高輪ゲートウェイ」のときのような不満がまた巻き起こる可能性が高い。

フリーライター

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学教育学部社会科社会科学専修卒。鉄道関連では「東洋経済オンライン」「マイナビニュース」などに執筆。単著に『関東の私鉄沿線格差』(KAWADE夢新書)、『JR中央本線 知らなかった凄い話』(KAWADE夢文庫)、『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。共著に『関西の鉄道 関東の鉄道 勝ちはどっち?』(新田浩之氏との共著、KAWADE夢文庫)、首都圏鉄道路線研究会『沿線格差』『駅格差』(SB新書)など。鉄道以外では時事社会メディア関連を執筆。ニュース時事能力検定1級。

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