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梅雨明けとともに台風シーズン 来週は発達した台風が沖縄へ接近

饒村曜気象予報士
2つの熱帯低気圧の雲(令和6年(2024年)7月20日0時)

令和6年(2024年)の台風

 令和6年は、台風の発生が遅く、第1号がフィリピン近海で発生したのは、5月26日でした。

 台風の統計が作られている昭和26年(1951年)以降、台風1号が一番遅く発生したのは、平成10年(1998年)の7月9日で、令和6年(2024年)は、史上7番目の遅さということになります(表1)。

表1 台風の発生が遅い年
表1 台風の発生が遅い年

 台風1号の発生が一番遅かった平成10年(1998年)は、年間で発生した台風の数は16個と平年の26.1個よりかなり少なかったのですが、上陸した台風は4個と平年の2.9個より多くなっています。特に、台風7号と台風8号は、2日連続して近畿地方に上陸し、東海から四国東部にかけて大雨となり、大きな被害が発生しています。

 台風1号の発生が遅かった平成10年(1998年)、平成28年(2016年)、昭和48年(1973年)、昭和58年(1983年)には共通点があります。それは、非常に強いエルニーニョ現象が終息した年ということです。

 そして、今年、令和6年(2024年)も非常に強いエルニーニョ現象が終息した年です。

 そして、5月31日には、南シナ海で台風2号が発生したのですが、その後は、約2か月にわたって台風の発生がありませんでした。

 台風は、7月末までに8個位発生しますので、現在までに2個ということは、かなり少ない発生数ということができます(表2)。

表2 台風の月別発生数(令和元年(2019年)から令和6年(2024年)と平年値)
表2 台風の月別発生数(令和元年(2019年)から令和6年(2024年)と平年値)

 しかし、ここへきて、南シナ海とフィリピンの東で熱帯低気圧が発生し、ともに台風になりそうです(タイトル画像)。

 気象庁は24時間以内に台風に発達しそうな熱帯低気圧について、5日先までの進路予報と強度予報を発表していますが、熱帯低気圧が複数ある場合は、情報が混乱しないよう、その熱帯低気圧の発生順にアルファベットをつけています。

 まず、南シナ海の熱帯低気圧に「a」がつけられ、次にフィリピンの東の熱帯低気圧に「b」がつけられています。

 ただ、このアルファベット順は、台風になりそうになった順であり、台風発生の順番ではありません。フィリピンの東の熱帯低気圧のほうが先に台風になるかもしれません。

 どちらが先に台風になるのかわかりませんが、相前後して2つの台風(台風3号、台風4号)が発生しそうです。

【追記(7月20日18時)】

 フィリピンの東の熱帯低気圧bが、7月20日15時に台風3号に発達しました。来週の沖縄地方は台風3号に警戒が必要です。

熱帯低気圧の進路予報

 筆者の昔の台風に関する統計調査ですが、7月は、南シナ海の台風は北上し中国大陸に向かい、フィリピンの東海上の台風は北上して沖縄へ接近するものが多いとなっています(図1)。

図1 台風の7月の平均経路図
図1 台風の7月の平均経路図

 気象庁の台風予報によると、現在発生している2つの熱帯低気圧は、過去の7月に多い進路をとりそうです(図2)。

図2 2つの熱帯低気圧の進路予報(7月20日0時の予想)
図2 2つの熱帯低気圧の進路予報(7月20日0時の予想)

 まず、南シナ海の熱帯低気圧aですが、台風が発達する目安となる海面水温27度を上回る29度以上の海域にあります。このため、北上しながら台風に発達する見込みですが、台風になったあとも北上を続け、海南島から中国大陸へ向かう見込みで、日本へは直接の影響はなさそうです。

 問題は、フィリピンの東の熱帯低気圧bです。

 台風が通過すると海面をかき混ぜ、下層にある冷たい海水が上がってくるので、海面水温が少し下がるのですが、今年は、台風が少なかったことから、海面水温が非常に高くなっています。

 熱帯低気圧bは、海面水温30度以上という、非常に高くなった海域を北上する見込みで、台風になったあとも発達を続け、中心気圧955ヘクトパスカル、最大風速40メートル、最大瞬間風速60メートルの強い台風となって沖縄に接近する見込みです。

 暴風域に入る確率が高くなってくるのは、宮古島では7月23日の夜遅くからです。まだ、台風になっていない段階ですが、すでに7月24日は10パーセント以上もあります(図3)。

図3 暴風域に入る3時間ごとの確率(上は沖縄本島南部、下は宮古島)
図3 暴風域に入る3時間ごとの確率(上は沖縄本島南部、下は宮古島)

 今後、暴風域に入る確率は、どんどん大きくなってゆくことが懸念されています。

 最新の台風情報を入手し、警戒してください。

 また、関東甲信地方など、梅雨明けとなった地方も多くありますが、今年の梅雨明けは、太平洋高気圧が強まって梅雨前線を押し上げるというタイプの梅雨明けではありません。

 梅雨前線が弱まるというタイプの梅雨明けです。大気が不安定になりやすいタイプの梅雨明けですので、台風とのからみが心配です。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

図3、表2の出典:気象庁ホームページ。

表1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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