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短時間勤務を選んだら・産後の働き方を考える

なかのかおりジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員
時短勤務にすると、早くお迎えに行けてありがたいが、給与や評価に影響する(写真:アフロ)

来春に育休からの復帰を考えている家庭は、保育園を探し、復帰後の働き方を計画する時期です。短時間勤務を検討する人も多いでしょう。以前よりは、働き方を選びやすい雰囲気になったと思います。一方で、「一人前と見てもらえない」という悩みもあるようです。産後に働く上で直面することや、その改善策を提示するシリーズ、今回は時短について考えます。

関連記事→時短勤務を経て退職・元新聞記者が考える「産後の働き方」

時短からフルタイムへーきついけど少しずつ慣れて

筆者は新聞社で経験を積んだのち、39歳で初産し、娘が1歳になってまもなく、育休から復帰しました。娘が2歳になるまでは、「育児時間」として1時間の短縮が認められ、午前10時から午後5時までの勤務でした。2歳になったら、午後6時までに。勤務が1時間、延びただけで体がきつかったです。

長年、携わっていた取材職ではなく、妊娠中に異動した内勤の職場でした。夕方、保育園のお迎えに駆け込み、歩道を走ったり座り込んだりの娘を連れて帰って、ごはんを用意。おふろに絵本に、寝つくまでべったりです。会社にいるときから緊張が続き、「アラフォー初めてママ」はくじけそうでした。

早帰りはしにくいー週4日勤務という時短

職場では、午前10時から午後6時の勤務をしても、「深夜勤や残業をしないと、フルタイムとは言えない」という雰囲気でした。確かに、新聞含めメディアの仕事は、不規則勤務が当たり前です。

今は、働き方改革とIT化が進んだことにより、良くなっているようです。筆者が現場にいた頃は、「地方支局に配置された新人はなるべく休ませずに、事件・事故取材の経験を積ませる」「午前3時に打ち合わせ」といったことが、問題になりませんでした。

実際に、災害や事件が起きれば、現場に行く人員が必要です。地方にいた5年半の間には、火事や殺人事件の現場に駆け付けたり、警察官の自宅を訪ねる「夜討ち朝駆け」をしたり。泊まり勤務明けに、テレビで水害の様子を知り、他の記者を呼び出した日もありました。独身時代は、そうやって現場に行くのも勉強で、今振り返っても貴重な経験でした。

子どもがいても、日帰りや、都合をつけての出張は可能です。ただ、急な出張は、身軽な人か、子どもの命を他の人に預けられる場合でないと対応できません。

産前産後にいた職場はシフト制で、「現場に急行」はない職種です。でも逆に、時間内は席にいなければならない体制でした。主な仕事は夕方に集中するため、時間の繰り上げはしにくく、時短の制度を使って、初めは週4日の勤務にしました。勤務がない日は、娘が病気になったときに対応したり、保育園の行事にあてたりしました。

時短の衝撃ー給与大幅カット

週4日勤務は、時短の一種として、給与は大幅にカットでした。フルタイムで時間外手当があったころの、半分ぐらいでしょうか。育休から復帰後、給与明細を見て衝撃を受けます。

労働力としてみると、手を尽くしても、子どもが病気をすると休みがちになり、給料カットにしたほうが周囲の納得になるかもしれません。だけど、男性と同じ条件で自由に働く生活を長年していたアラフォー女性には、モヤモヤがありました。仕事は中途半端と言われ、認めてもらえる場面が少ないのです。

時短の課題ーいつからいつまで?

時短にできるのは「〇歳まで」「小学校〇年まで」と、組織によって決まりがあります。育休から復帰したばかりで、あっぷあっぷのときは、ありがたいです。子どもにとっても保育園が初めてで、慣れないストレスがあり、早くお迎えに行けて、とても助かる制度です。

でも、選択肢があることで、「いつまで取る?」「時短にすると、以前のような仕事ができない」と悩む人も多いと聞きます。出産前には、子どもの体調や性格がわからないですし、復帰後の生活が自分にとってどれぐらい負担になるかは未知数なので、働きながら考えてもいいと思います。

制度を調べておくー働き方、決断する必要も

職場の理解や身内のサポートがあって、時短は使わずに「フルタイム復帰」という知人もいました。預ける時間が長いことにより、周囲には「子どもの成長が見られないなんて…」「子どもがかわいそう」と言われるでしょうが、それぞれの価値観や環境によって、決断する必要があります。

逆に、割り切って、「取れる年齢まで時短にして、補助的な仕事でも、給与カットでも、とにかく勤め続ける」という元同僚もいます。

筆者の場合は、週4日勤務という時短にした後、フルタイムに戻して、また時短にしました。勤務時間帯を希望できる制度もあったのですが、職場長に遅い時間帯の勤務を命じられ、しばらく頑張った末、退職・独立を選びました。お勤めの職場で、どれぐらい時短にできるか、何カ月ごとに希望できるか、勤務時間帯はどうなのか、余裕があれば、細かい点も産休前に調べておくといいですね。

補助的な立場ー便利だけど覚悟もいる

時短の制度があると、「恵まれている」「やめないで働ける」と言われます。しかし、同時に「子育て中は、補助的な仕事をすればいいでしょ?」と周囲にみなされる、「マミートラック」に乗ってしまうのです。給与も評価も低いマミートラックは、乗ってしまうと、なかなか降りられないという悩みも、報道されています。

筆者の場合、産後は残業や深夜勤をしない「制限勤務」とされました。今、振り返っても、制限勤務って、激しい言葉です。何か、堂々としてはいけないような、一人前ではないと宣言されているような…。

ただ客観的に見て、持ち場を離れられない、持ち帰り仕事ができない職種もあります。教師や医師といった職種のママたちが、夫や祖母の支援で仕事を続けているのを見ると、サポートが得られない場合、むずかしい問題だと思います。「制約がある中で、キャリアを生かしていける方法」を、模索している組織側の声も聞きます。

ツールの進化ー在宅の仕事を後押し

職種によっては、子育てとキャリアの悩みに直面しているみなさんに、明るい材料が少し増えたと思います。この何年かの間で、在宅勤務やリモートワークが急速に広がった印象があります。SkypeやMessenger、LINEなど、ビデオ会議やチャットができるツールも、より浸透しました。

それまでは「若い人が使う」といったイメージを持たれていたツールが、「公式な会議や、仕事のやり取りで使う」と認識されるところまで進化したのです。

子どもの病気でお迎えや看護が必要になった時、夜間に用事ができた時、子どもを無理に預けなくても対応できますし、気おくれすることが減るのではないでしょうか。どこでもいつでも仕事ができるために、「子どもに寄り添えて、やりすぎない範囲」を、判断していく必要はありますが…。

(日経DUALに連載した「39歳で初産 私のキャリアどうなっちゃうの?」をもとに再構成)

ジャーナリスト(福祉・医療・労働)、早稲田大研究所招聘研究員

早大参加のデザイン研究所招聘研究員/新聞社に20年余り勤め、主に生活・医療・労働の取材を担当/ノンフィクション「ダンスだいすき!から生まれた奇跡 アンナ先生とラブジャンクスの挑戦」ラグーナ出版/新刊「ルポ 子どもの居場所と学びの変化『コロナ休校ショック2020』で見えた私たちに必要なこと」/報告書「3.11から10年の福島に学ぶレジリエンス」「社会貢献活動における新しいメディアの役割」/家庭訪問子育て支援・ホームスタートの10年『いっしょにいるよ』/論文「障害者の持続可能な就労に関する研究 ドイツ・日本の現場から」早大社会科学研究科/講談社現代ビジネス・ハフポスト等寄稿

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