水素サプライチェーンの今後
・水素エネルギー
水素エネルギーが、持続可能社会で注目されている革新的なエネルギー源であるのは間違いありません。使用時に二酸化炭素を排出しません(ただし現時点では生成時に二酸化炭素を排出するのは後述します)。
今回、アジアでもっとも有名な水素燃料開発で知られるSPECTRONIKに訪問した記録です。シンガポールにある注目企業です。
水素関連は、地球温暖化の大きな原因となる温室効果ガスの排出削減に直接貢献するため、多くの研究と開発が進められています。水素エネルギーの基本的な仕組みは、水素を燃料として利用することです。そりゃ、誰もが知っていますかね。
水素をエネルギーとして利用する方法には、燃料電池が代表的です。燃料電池では、水素と酸素の化学反応を利用して電気を生成します。電気は自動車や電力供給、さらには携帯電話などの小型電子機器の動力源としても使用できます。
・水素エネルギーの生成方法
水素エネルギーの生成方法には、いくつかの異なるアプローチが存在します。有名なのは、天然ガスから水素を抽出する方法です。また、水の電気分解によっても水素を生成できます。この過程で使用する電力の源によって、水素は「グレー」「ブルー」「グリーン」と分類されます。
●グレー水素は、化石燃料を原料としており、その製造過程で二酸化炭素が排出されるため、環境負荷が高いとされています。
●ブルー水素も化石燃料を基に生成されますが、製造過程で発生する二酸化炭素を捕捉・貯蔵する技術を用いることで、排出を大幅に減らします。
●グリーン水素は最も環境に優しい選択肢とされ、再生可能エネルギー源(例えば太陽光や風力)を利用した水の電気分解によって生成されます。
また、水素はエネルギー貯蔵媒体として考えられているんですよね。風力や太陽光などの再生可能エネルギー源から生成された電力を、需要のピーク時に供給するために利用されることが検討されています。
・SPECTRONIKへの訪問
私が今回、訪問したのは水素サプライチェーンの要を担うSPECTRONIKです。シンガポールにあり、アジアの水素サプライチェーンの中心にいる企業です。多くの人はご存知でしょう。
水素エネルギー自動車も試乗しました。
異常なほど静かで、電気自動車よりスムーズでした。その凄さに疑問はありません。
・水素サプライチェーンの問題
水素エネルギーはその生成方法や活用法によって、環境への影響が大きく異なります。持続可能な社会を実現するためには、よりクリーンで効率的な水素の生成と利用が鍵となります。
これは前述のSPECTRONIKの経営陣も理解するところでした。
グリーン水素のような環境に配慮した方法での水素生成が重要であり、その技術の開発と普及が今後の大きな課題なんですよねえ。解決できるんでしょうか。
水素エネルギーの普及と展開において、水素サプライチェーンの構築こそが重要です。水素エネルギーのポテンシャルを最大限に活用するためには、水素の生成、輸送、貯蔵、そして最終的な消費までを含む効率的で安全なサプライチェーンの確立が不可欠で、とくに生成です。しつこいのですが、重要なので繰り返します。生成です。
水素の生成は、クリーンなサプライチェーンの最初であり、もっとも重要なステップなんですよねえ。これがクリアできれば水素サプライチェーンが急激に拡大するんじゃないかな、と思います。
主な課題は、環境に優しい方法での大量生産です。グリーン水素の生産は理想的なんでうすけれども、再生可能エネルギーの不安定性や高コストが障壁となっています。「なんで、天然ガスに大量のエネルギーを使って水素を作るんだよ」とまともな批判に現在では答えられていません。
だから、可能性としてはSPECTRONIKが実践するように、特定の産業用途なのかもしれませんね。
グレー水素やブルー水素は比較的安価で大量生産が可能ですが、温室効果ガスの排出という環境面での問題がありますからねえ。したがって、環境への影響を最小限に抑えつつ、効率的な生産方法の開発が求められていますが、どうなるのでしょうか。
・水素サプライチェーンの課題
また、あんまり問題点ばかりいいたくないんですけれども、生産された水素を消費者まで届けるための輸送が問題です。だって、水素は軽く、爆発性があるため、安全かつ効率的な輸送方法の確立が必要ですからね。
液体水素や圧縮水素ガスとして輸送する方法が一般的ですが、これらには高いエネルギー消費とコストが伴います。パイプラインによる輸送も考えられますが、大規模なインフラ投資が必要となります。こりゃ難しいですよ。さらに、長距離輸送におけるエネルギー効率の低下も重要な課題です。
水素の貯蔵は、サプライチェーンにおける課題なんですよ。なぜなら、水素は体積あたりのエネルギー密度が低く、高圧や極低温での貯蔵が必要となるため、安全性とコストのバランスを取る必要があるんですよ。また、長期貯蔵における水素の品質維持も課題となっていますしねえ。
最終的な消費段階では、水素をエネルギーとして利用するためのインフラストラクチャーの整備が不可欠で、これも課題です。水素燃料電池の自動車は、広範な水素充填ステーションのネットワークが必要ですが、これを全世界でカネをバラまける業者はいないんでしょうね。
産業用途では、既存のエネルギーシステムへの水素の統合や、安全な取り扱い方法の確立が求められます。ただ、産業用途であれば、水素エネルギーの活用はありうると思います。水素を固定的な場所をで供給するならば有益でしょう。
ただ、産業用途以外も広めようと思えば、技術革新、コスト削減、産業間の協力が必要です。国際的な水素市場の確立や、国境を越えた水素の流通に対する法規制の調整も重要かもしれません。
そうですねえ。難しいのですが……。
総じて、水素サプライチェーンの問題は多岐にわたります。ただ、あとは政府がどれだけ本気かにかかっているんでしょう。
水素は持続可能なエネルギーシステムの実現に大きく貢献することができます。水素エネルギーは、地球温暖化とエネルギーの持続可能性の問題を解決するための鍵となる可能性を秘めており、そのためには効率的で安全、かつ環境に優しいサプライチェーンの確立が不可欠です。
あえて付け加えておくと、私がSPECTRONIKで試乗した水素エネルギー自動車は間違いなく、最高な一台でした。あとはコストしだいです。みなさんはクリーンエネルギーにどこまで関心を持っているでしょうか?
*なお、当記事はPRではない。SPECTRONIKや関連企業から一切の謝礼は私に支払われていない。問い合わせていただいてもかまわない。