iPhoneに携わった元アップル社の重役がワイン造り!? ある3つのことにこだわった理由
日本でワインが伸長
キリンホールディングスによると、ワインの消費数量は10年前と比較すると約1.3倍に拡大しており、40年前と比較すれば約8倍にも伸長しているといいます。
・日本国内のワイン消費数量は10年間で約1.3倍に/キリンホールディングス
日本からフランスやアメリカのカリフォルニアへ渡り、海外でも評価される日本人のワイン醸造家が登場したり、2018年10月30日に、いわゆる日本ワイン法が施行されたりし、コロナ禍を経て日本におけるワイン熱もまた一段と高まっているように思います。
2020年におけるワインの輸入数量は163,905キロリットルであり、1本あたり750ミリリットルのボトルで換算すれば約2.2億本。日本ではこれだけ多くの輸入ワインが飲まれていますが、ここにきて注目のワインが登場しました。
「ザンダー・ソーレン」がリリース
そのワインとは、カリフォルニアの「ザンダー・ソーレン(Xander Soren)」。注目されている理由は、このワインを手掛けた「ザンダー・ソーレン・ワインズ(Xander Soren Wines)」創業者のザンダー・ソーレン(Xander Soren)氏によるこだわりが詰まっているからです。
ソーレン氏は、その華麗な経歴でも耳目を集めています。20年間アップル社に重役として在籍し、スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏と共に、iPodやiPhoneの着信音など世界を変えるようなデジタル音楽を制作してきました。
このソーレン氏が今度は、世界を変えるようなワインをリリースします。初回リリースとして今シーズンは以下の5種類を販売予定。
• 2018 Central Coast Pinot Noir
• 2019 Central Coast Pinot Noir
• 2019 Olivet Lane Vineyard Russian River Valley Pinot Noir
• 2019 Yuki Vineyard West Sonoma Coast Pinot Noir
• 2020 LUDEON Central Coast Premium Pinot Noir
「ザンダー・ソーレン」にまつわる、3つのこだわりを紹介しましょう。
ピノ・ノワールへのこだわり
今回は5種類のワインをリリースしましたが、この全てがカリフォルニアのピノ・ノワールだけで造られています。リリースされるワイン全てがカリフォルニア産ピノ・ノワールだけというのは、ソーレン氏の大きなこだわりです。
ソーレン氏は次のように述べます。
「サンタ・リタ・ヒルズはピノ・ノワールの銘醸地で、フランスのブルゴーニュに匹敵するワインを数多く生み出しています。この地域には強い思い入れがあるので、ピノ・ノワールをつかったワインを造りたいと思いました。ピノ・ノワールはカリフォルニア全土の特別な冷涼産地から厳選しています」
ソーレン氏のワイン造りには手作業が多く、多大な労力が必要。フレンチオークで寝かせて、それぞれのワインが完璧なバランスになるよう、瓶詰め前に慎重にブレンドします。手間暇をかけることによって、テロワールの個性とピノ・ノワールの繊細さが引き出されているのです。そのため、現状の生産数は各ヴィンテージ600ケース程度に限定されており、ボトル別で見るとそれぞれ100ケースにも満たない希少なワインとなっています。
日本へのこだわり
ソーレン氏は日本にこだわりをもっています。
大学では日本のアートや歴史を学び、日本の文化や日本料理に造詣が深いです。
「幼い頃から日本文化に愛着をもっており、幾度となく日本を訪れました。その度に、世界で最も敬愛する日本料理に寄り添うカリフォルニアワインを造ることによって、日本への感謝の気持ちを表現したいと思っていました」と述懐します。
日本とカリフォルニアのシェフやソムリエからの意見も取り入れました。そして、10年もの開発を経て完成したのが「ザンダー・ソーレン」だったのです。
栄誉ある初ローンチの発表会も日本で行われました。パーク ハイアット 東京の日本料理「梢」でグローバル・ローンチ・イベントが開催され、ワイン関係者に「ザンダー・ソーレン」の存在を知らしめたのです。
意匠へのこだわり
ソーレン氏のこだわりは、ワインのクオリティやリリース地域だけにとどまりません。ワインの顔ともいえるエチケット=ラベルにも大きなこだわりを有しています。
日本文化へのリスペクトから、ラベルには米国西部の山に咲く「フラセラ」の花をモチーフにし、自身のイニシャルの「X」を重ねた家紋をデザインしました。
音楽業界に長く在籍していたので、音楽を連想させる意匠も取り入れています。同心円は、ワイングラスの側面を叩くことで生まれる模様のようであり、中心から発せられる音波のようでもあります。花びらの先端が外円を貫くことで描かれる曲線は、仏塔の屋根の輪郭を表現。ソーレン氏が毎年紅葉の時季に訪れる、京都の寺院を思わせます。
専門家の論評
「ザンダー・ソーレン」は魅力的なワインですが、専門家はどうみているのでしょうか。
大手ワインスクール「レコール・デュ・ヴァン」の人気ワイン講師であり、日本における同ワインのブランドアンバサダーを務めるレピュニット・ラボ(Repunit-Lab)代表の瀬川あずさ氏は次のように評します。
「カリフォルニアの中でも冷涼な気候の畑を厳選し、樽の選び方や醸造アプローチも伝統国ブルゴーニュの手法を取り入れることで、エレガントな酒質が完成されていることが、大きな特徴ですね。ターゲットとして日本を見据えているのが興味深い点です」
具体的にはどういったことでしょうか。
「昨今のカリフォルニアワインはエレガント路線に寄せてきているものも多くありますが、ここまで日本の食を意識し、そこに寄り添うことを徹底して目指しているワインは他にないでしょう。ザンダーの日本の食にまつわる知識や経験の豊かさは驚くべきものがあり、私自身も多くの刺激を受けています。長年に渡り培われてきた『日本への造形の深さ』が反映された、滋味あふれるワインだと思います」
瀬川氏のようなプロフェッショナルからも、他にはないといわしめる「ザンダー・ソーレン」。ワイン好きにとっては、また“飲みたい一本”が増えるのではないでしょうか。