「こんにちは。(寂しい)私と一緒にコーヒーを飲みませんか?」ノルウェーで隠しカメラ実験
バス停のポスターから、おじいちゃんが寂しそうに話しかけてきたら、あなたはどう反応する?
ノルウェーの首都オスロにある、とあるバス停。バスを待っていると、隣の大きなポスターから、一人の年配の男性が話しかけてきた。
忙しい毎日の中、現代の人々は「見知らぬ他人」とコーヒーを飲むという余裕がどれだけあるだろうか?
無償の奉仕活動が盛んなノルウェーで、ボランティア団体「Frivillig.no」が参加者の増加を呼び掛けるために実施した今回の企画。
今回の隠しカメラ企画には、いくつかのノルウェー社会の現状が重なり合っている。
- 北欧各国はコーヒーの消費量がトップクラス。人と話をするときには、テーブルの上に必ずといっていいほどコーヒーがある
- 自宅や老人ホームで孤独な時間を過ごす高齢者がいる
- 右派政権になって以降、ノルウェーは「人に冷たい社会」になったと主張する人がいる
「そこのリュックサックを背負っているあなた、私と一緒にコーヒーを飲みませんか?」
スマートフォンに夢中になって、おじいちゃんを無視する人もいたが、「そうね」と言って、喜んで応じる人も。バス停ポスターには穴が開いており、そこから本物のカップに本物のコーヒーが注がれる仕組みになっていた。
「なぜ私に声をかけようと思ったんですか?」、「趣味はあるんですか?」と会話が始まり、一緒に歌いだす人もいた。
待っていたバスがきても、「次のバスに乗るからいいわ」と会話を続けたがる女性も。
この短い動画は人口520万人のノルウェーでSNSにアップされ、高い数字を記録。広報のヘナイデさんによると、ノルウェーだけでFaceboookでは100万人以上に閲覧され、1万8千以上の「いいね!」、1500以上のコメント、2400以上のシェアに至った。
「ノルウェー社会が冷たくなったという印象をメディアでは受けるが、この隠しカメラ企画は、心のあたたかい、思いやりがある人がたくさんいることを証明している」と団体側は説明。
この動画が拡散されて以降、若い難民を支援するノルウェー赤十字社や各団体にはボランティアの参加を希望する問い合わせが増加した。
動画は当初はノルウェー語版のみだったが、筆者が団体側に問い合わせたところ、すぐに英語字幕がついた動画を用意していただいた。
Text: Asaki Abumi