全国的に厳しい暑さ継続 台風5号で強められた太平洋高気圧はカロリン諸島で発生の台風6号でも強化
台風5号が中国大陸へ
令和5年(2023年)7月21日(金)の9時に、フィリピンの東で発生した台風5号は、西進しながら発達し、24日(月)15時には大型で非常に強い勢力にまで発達しています。
バシー海峡を北西に進んで中国大陸に上陸する見込みですが、南シナ海は、海面水温が台風発達の目安となる27度を上回る28~29度ですので、あまり衰えずに進む見込みです(図1)。
このため、南西諸島は雨が降りやすく、先島諸島では雷を伴って激しく降る所があるでしょう。うねりを伴った高波に警戒してください。
台風5号は、北側にある太平洋高気圧が強くなっているため、北上できずに西進しているのですが、太平洋高気圧が強くなっている原因の一つが台風5号です。
台風5号付近で上昇した空気は、太平洋高気圧の上空で下降し、太平洋高気圧をより強めているからです。
また、台風5号の南東方向で、積乱雲の塊が増えてきました(タイトル画像)。
この雲の塊の中から発生した熱帯低気圧は、今後、台風6号に発達する見込みです(図2)。
このため、台風5号に続いて、台風6号によって、太平洋高気圧はより強まる見込みで、全国的な猛暑はしばらく続く見込みです。
また、台風6号は、発達しながら北西進し、7月31日(月)には沖縄本島に接近する見込みで、九州は猛暑警戒から台風警戒に変わるかもしれません。
令和5年(2023年)一番の暑さ
令和5年(2023年)7月26日(水)に、全国で一番気温が高かったのは、埼玉県の鳩山の39.7度で、7月16日に群馬県の桐生で観測した39.7度と並んで今年最高となりました。あと、0.3度で40度の大台でした。
また、全国で最高気温35度以上の猛暑日を観測したのが226地点(気温を観測している915地点の約25パーセント)、最高気温30度以上の真夏日を観測したのが807地点(約88パーセント)、最高気温25度以上の夏日を観測したのが908地点(約99パーセント)と、ともに今年最多でした(図3)。
7月27日(木)も関東から西日本にかけて猛暑日が予想されており、大分県の日田で39度など、暑い日が予想されています(図4)。
ひょっとしたら、今年最高を更新し、40度の大台を観測する地点があるかもしれません。
また、猛暑日は190地点くらい、真夏日は795地点くらい、夏日は910地点くらいと見積もられていますので、真夏日と夏日が今年最多を更新するかどうかは微妙です。
とはいえ、高い数値であることには変わりがありません。
一週間は猛暑継続
太平洋高気圧の北への張り出しが及んでいない北海道では、低気圧が周期的に通過するため、札幌では雲が多く、雨の日もありますが、最高気温は連日30度以上の真夏日という予報です(図5)。
また、那覇も最高気温は連日30度以上の真夏日という予報ですが、台風5号が接近する7月27日は雨となっています。
那覇で、7月31日以降も雨となっているのは、次に発生予定の熱帯低気圧(あるいは台風6号)の影響です。
8月2日〜3日の那覇は暴風雨となっていますので、かなり先の不確実性が高い予報での話とはいえ、要注意です。
そして、北海道と沖縄以外は晴れの日が一週間以上続く予報となっています。
しかも、最高気温はすべての日で30度以上の真夏日というより、35度以上の猛暑日が続くことが多いという予報になっています。
東京ではこれから7日間、名古屋では10日間にわたって猛暑日が続く予報です。
これだけ暑い日が続くと、夜になっても気温があまり下がらず、最低気温も高い日が続きます。
最低気温が25度以上の熱帯夜が続くという予報になっていますので、適切なエアコン使用で十分な睡眠と栄養補給に努めてください。
熱中症警戒アラート
熱中症は暑さだけでなく、湿度などとも関係しています。
このため、熱中症対策に使われているのは、「暑さ指数(WBGT:wet-bulb globe temperature)」です。
「暑さ指数」は、気温だけでなく、湿度、日射・建物や地面からの照り返し(輻射)などの熱も取り入れた数値であり、湿度7:輻射熱2:気温1の割合で算出されるように、湿度の高さが重要な要素となっています。
具体的には、次の式で表されます。
屋外:「暑さ指数(WBGT)」=0.7×湿球温度+0.2×黒球温度+0.1×乾球温度(気温)
屋内:「暑さ指数(WBGT)」=0.7×湿球温度+0.3×黒球温度
ここで、感部を布でおおって湿らせた湿球温度計で求めた温度が湿球温度です。
空気が乾いていればいるほど蒸発熱を奪われて気温(乾球温度計で求めた温度)との差が大きくなります。
黒球温度は、輻射熱を測るため、黒色に塗装された薄い銅板の球の中心に温度センサーを入れた黒球温度計で測る温度です。
「暑さ指数」の利用上の目安として、33以上:極めて危険、31以上~33未満:危険、28以上~31未満:厳重警戒、25以上~28未満:警戒、25未満:注意となっています。
環境省と気象庁は、熱中症で救急搬送される人を減らそうと令和2年(2020年)7月から関東甲信で始めたのが「熱中症警戒アラート」で、令和3年(2021年)から全国で広がりました。
「熱中症警戒アラート」が発表されたら、基本的に運動は行わないようにすると共に、身近な場所での「暑さ指数」を確認し、熱中症予防のための行動をとる必要があります。
「熱中症警戒アラート」の発表基準となっているのは、暑さ指数33以上の「極めて危険」であるときで、前日17時と当日5時に発表となります。
7月27日の前日予報では、28地域に発表となっており、今年最多です。
熱中症警戒アラートの発表地域(7月27日の前日予報)
【北海道】十勝
【関東・甲信】茨城、埼玉、東京、千葉、山梨
【東海】愛知、岐阜、三重
【北陸】新潟、石川
【近畿】大阪、兵庫、和歌山
【中国】広島、島根
【四国】徳島、香川、愛媛、高知
【九州北部(山口県を含む)】山口、福岡、大分、長崎、佐賀、熊本
【九州南部・奄美】宮崎、鹿児島(奄美地方を除く)
令和5年(2023年)の熱中症警戒アラートの発表件数(前日17時と当日5時の発表をまとめて1回として集計)は、7月27日に対する前日予報の28地域で、累計が270地域となっています(図6)。
前年、令和4年(2022年)に比べて、半月ほど遅く推移していたのですが、7月中旬から急増し、前年7月27日の266地域を抜いています。
熱中症警戒アラートが発表となっている地方はもちろん、発表となっていない地方でも、熱中症警戒レベルが「危険」や「厳重警戒」の地点がかなりありますので、熱中症には最大限の警戒が必要です。
この猛暑は、1週間程度は続き、その後は例年の盛夏の暑さの見込みです。
熱中症対策は長丁場です。
図1、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。
図2、表の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。
図6の出典:環境省ホームページをもとに筆者作成。