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トランプ氏、“捏造発言”で株式市場を操作か 中国側が正しかった! 対中関税発動の裏側 

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
中国側からの米中貿易交渉再開の申し入れは、トランプ氏のついた嘘だった!?(写真:ロイター/アフロ)

 トランプ政権が約12兆円分の中国からの輸入品に追加関税を課す対中制裁第4弾を発動した。中国もすぐに報復措置に出た。米中貿易戦争は過熱するばかりだ。しかし、肝心の交渉が進展していないのだから、それも当然のことかもしれない。

 貿易交渉を進展させないものは何なのだろう。1つにはトランプ氏のパーソナリティーがその要因としてあるかもしれない。

 “病的な嘘つき”とは、アメリカのメディアが嘘が多いトランプ氏のパーソナリティーを批判する時に使う常套句なのだが、今回の対中制裁が発動される数日前、トランプ氏が“病的な嘘つき”であることを示す新事実が発覚、アメリカで問題視されていた。しかも、それは中国に関してついた嘘だった。

 G7でフランス訪問中、トランプ氏が「中国側から米中貿易交渉再開の申し入れがあった」と明かした、という報道があったのを覚えているだろうか? 

 トランプ氏はこう言った。

「中国側が、昨夜、米国の貿易のトップに電話をよこし、“交渉のテーブルに戻ろう”と申し入れてきたんだ。中国は(貿易戦争で)非常に傷ついて来たが、交渉するのが正しいことを理解しているんだ。そのことには敬意を払うよ。これは、世界にとって非常にポジティブな進展だよ。我々は合意を得られると思う」

 もっとも、中国外務省の耿爽副報道局長は、トランプ氏のこの発言をこう言って否定していた。

「そんな電話については把握していない。そんなことは聞いたことがないとはっきり言える」

 トランプ氏と中国、どちらが本当のことを言っていたのか?

 軍配は中国側にあがったようだ。

“捏造発言”で株価が上昇

 CNNが、トランプ氏の発言は嘘、トランプ氏の作り話だったことを伝えたのだ。

 トランプ氏とムニューシン財務長官は(中国側と)コミュニケーションをしたと主張していたのだが、トランプ氏の側近によると、トランプ氏が言及した、“交渉のテーブルに戻ろう”と中国側が申し入れてきたような電話はなかったという。

 側近はCNNに「トランプは株価を上昇させるようなオプティミズムを生み出したくてたまらず、劉鶴中国副首相の発言と中国側からの直接の電話を混同したんだ」と話した。

 混同した。つまり、捏造したということか?

 しかし、そうとは知らない株式市場は「中国との貿易交渉再開」というトランプ発言にオプティミズムを感じてすぐさま反応、株価は上昇した。いうなれば、トランプ氏は“捏造発言”で株式市場の操作に成功したわけである。

 中国との貿易交渉が進展せず、北朝鮮は短距離ミサイルを発射し続け、メキシコとの「国境の壁」建設も進んでいない現状を考えると、なんとか、史上最長の好景気だと豪語してきたアメリカ経済の好況だけは維持し続けたい、さもなくば来年の大統領選が危うくなってしまう。トランプ氏はそんな焦りから、こんな“捏造発言”をしてしまったのだろうか?

“狼少年トランプ”になるのか

 トランプ氏の新たな“病的な嘘つき”エピソードで、筆者は、狼少年の話を思い出した。

 これまでも、トランプ発言一つで、株価は上下してきた。まがりなりにも世界経済に大きな影響を与えるアメリカの大統領であるし、就任後は好景気が続いているので、その発言が、多かれ少なかれ、投資家に信頼されているからだろう。

 しかし、今回のような、株式市場を操作する“捏造発言”が発覚した今、投資家はもちろん国民も、彼の発言には、もう耳を貸さなくなるのではないか?

 そして、怖いのは、次の経済危機がそこまで来ていると言われていることだ。それは、世界3大投資家の1人、ジム・ロジャーズ氏をして「次の経済危機は我々の人生の中で最悪のものになる」と言わしめている経済危機である。

 そんな経済危機を目の前にした時、トランプ氏が、嘘ではなく本気に警鐘を鳴らす発言をしたとしても、もう誰も“狼少年トランプ”の発言を信じないかもしれない。

 そうなると、誰もが差し迫っている経済危機に気づかず、気にも留めず、危機にいっそう拍車がかかってしまうことになるだろう。

 “狼少年トランプ”による世界経済崩壊のシナリオが展開されないことを祈るばかりだ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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