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eスポーツ、五輪競技には不採用

木曽崇国際カジノ研究所・所長

ということで、ほぼ確定的な結論が出てしまいました。以下、gamesindustry.bizからの転載。

IOC会長:オリンピックにe-Sportsはいらない。「Killer Games」は暴力を助長するから

http://jp.gamesindustry.biz/article/1809/18090401/

「我々の観点から言うと,(※e-Sportsは)オリンピックの価値観に矛盾しており受け入れることはできません」

国際オリンピック委員会会長は,現状ではe-Sportsが象徴的なスポーツイベントに追加される見込みはほとんどないことを明確にした。アジア競技大会2018期間中にAssociated Pressに語ったところによると(参考URL),Thomas Bach氏は,現時点でさえビデオゲーム協議を考慮することを妨げている重大な障壁があると語った。

IOC会長はゲームの持つ暴力性をeスポーツの五輪競技化が難しい理由として挙げておりますが、上記記事内にもあるとおりゲームは別に戦場で撃ち合うようなkillingゲームばかりではなく、スポーツゲーからパズルゲーまで様々なジャンルがあるわけで「暴力性」だけが排除の要因ではないはず。この点に関しては、先日始まったばかりの日刊SPAの対談連載においてもお話しましたが、個人的にはゲームの持つ著作権の問題が実際には一番の障害になったのではないかなと思うところです。

eスポーツがオリンピック正式種目になれないこれだけの理由

https://nikkan-spa.jp/1504643

POKKA吉田:今回のアジア競技大会だと、『ウイニングイレブン2018』(コナミ)を含めて、計6タイトルのゲームで競技が行われることになってるけど、ここでは著作権の問題はクリアになっているということ?

木曽崇:なってません。だから実態としてはかなりモメています。まず整理しますと、サッカー、野球、テニス、ボクシングなど、伝統的にオリンピックがあつかってきたスポーツはパブリックコンテンツですから、誰かが権利を持っているものではないですよね。だけど、例えばこれをサッカーではなくて「ウイイレ」を競技種目にするとなると、コナミの版権がモロに絡んできてしまう。

POKKA吉田:つまり、競技の様子を客に見せるときには、「(c)コナミ」ってつくのか(笑)。

木曽崇:かたやオリンピック委員会も、オリンピック競技の放送権を販売するという、基本的には版権ビジネスです。パブリックコンテンツのスポーツを扱っているうちは、自分たちの競技大会のコンテンツとして販売するのは全然問題ないですが、そこにeスポーツが入ってくると、そこだけが他社の著作物になってしまう。そうすると各ゲームメーカーは権利主張を当然してきますから、今までのオリンピックのビジネスモデルには合わないんです。

ということで、アジア大会のeスポーツ競技で日本勢が金メダルを取ったことで非常に明るいムードになっていたeスポーツでありますが、残念ながら五輪競技化という大きな目標はとりいそぎここでほぼ終わったということとなります。日本のeスポーツ業界はここ数年、プロ認定制度だの五輪競技化だのと本質的な部分から乖離したテーマで何やら利権獲得を狙ってるとしか思えない動きが顕著でありましたが、それらに失敗してしまった今、改めて純然たる「eスポーツ振興」という本来の目的に即した活動へと切り替えて頂ければ幸い。

別にプロ認定制度なぞなくとも、五輪競技化なぞなくともeスポーツは死にません。eスポーツ業界の今後のご清栄を心よりお祈りしております。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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