新入社員諸君へ~作家・山口瞳さんからの伝言
この3月に卒業した元ゼミ生たちから、「無事、入社式を終えました」というメールが届きました。ほんの数日前まで学生だった彼ら、彼女たちが、今、社会人と呼ばれ、新入社員と呼ばれています。
毎年、この時期に読み返すのが山口瞳さんの『新入社員諸君!』です。手元にあるのは、自分が社会人になった昭和53(1978)年の春に購入した角川文庫版。かなりよれよれですが、今年もページを開きました。
「新入社員に関する十二章」という文章があります。元々書かれたのが昭和38(1963)年頃で、今年の新入社員である皆さんにしてみれば、気の遠くなるような歴史の彼方かもしれません。
しかし、山口さん自身が文中でおっしゃっているように、「時代が変わっても、変わらぬ人生の知恵がある」と思うのです。
以下に、山口さんが十二章として挙げた項目を抜き出してみます。
1 社会を甘くみるな 勉強を怠るな
2 学者になるな 芸術家になるな
3 無意味に見える仕事も厭がるな
4 出入りの商人に威張るな
5 仕事の手順は自分で考えろ
6 重役は馬鹿ではないし敵でもない
7 金をつくるな 友をつくれ
8 新人殺しに気をつけよ
9 正しい文字を書き 正しい言葉をつかえ
10 グチを言うまい こぼすまい
11 思想を持て ビジョンを描け
12 節を屈するな 男の意地をまげげるな
これらを眺めるだけでも、かなり色々感じることがあるのではないでしょうか。
たとえば山口師曰く、「まず、会社へはいったら、学校とちがっていろんな人間がいることを知っておいてください」。
そう、キツネもタヌキも、オオカミだって生息するのが会社です。でも、だからこそ一人ではできない仕事も可能になる面白さがある。
また師曰く、「誠心誠意ではたらき有能な社員になってください。有能な社員とは、役に立つ社員のことです。そして役に立つ社員とは、何か自分のものを持っている社員のことです」。
これも至言です。いま“自分のもの”として何を、どれだけ持っているのか。新人じゃなくても常に再点検すべきなのです。
さらに山口さんは言います。「新入社員よ、ボヤキなさんなよ。ブウブウいうなよ。キミタチは新人なんだよ。一所懸命やれよ。勉強しなさいよ。勉強といってもいろんな勉強があるんだよ。それを知るのが勉強なんだ」。
社会に出ると自分がいかに無知であるかがわかってきます。そんな時、この言葉に励まされました。
とはいえ、皆さんには、まだ「なんのことやら」かもしれませんね。
でも、ちょっとだけ頭の隅に置いておくといいと思います。いつか、何かの形で心当たりがあるはずですから。
というわけで、我が教え子たちを含む新入社員の皆さん、しばらくは大変でしょうが、まずは「一人前」を目指してください。
元気で!