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伊藤沙莉と河合優実、2人の「ロス」を埋めてくれるもの

碓井広義メディア文化評論家
今年のコスモス(筆者撮影)

『虎に翼』(NHK)の伊藤沙莉さん。そして『不適切にもほどがある!』(TBS系)の河合優実さん。

どちらも、ドラマが終わって「ロス」になる人が大量発生しました。

テレビを見ていると、そんなロスを、一瞬とはいえ解消してくれるCMが流れています。

「カメラのキタムラ」の伊藤沙莉さん

カメラのキタムラ「キタムラ新たな旅立ち」篇より
カメラのキタムラ「キタムラ新たな旅立ち」篇より

カメラのキタムラのCMといえば、2017年から出演している安田顕さん。

リユース「キタムラ新たな旅立ち」篇では、『虎に翼』の印象がまだ消えない伊藤沙莉さんと共演しています。

田舎道のバス停。乗車する人影。走り出したボンネットバスを追いかける2人。

突然、安田さんが「キタムラ!お前、販売だけじゃなく買取も始めたらしいな!」と呼び掛けます。

どうやらカメラ以外に、時計やブランド品も買取の対象となるらしい。

伊藤さんも走りながら訴えます。

「キタムラ君、カメラの印象が強いから、ブランドのキタムラとか、時計のキタムラとか、ちゃんと言わないと伝わらないからね~!」。

つまづいて倒れ込む安田さん。気遣う伊藤さん。そして2人が声をそろえて叫ぶ。

「キタムラ、頑張れ~!」。

カメラについては実績があるけれど、それ以外の買取はまだ認知度が低い。

このCMでは、新規参入のハンデという弱点を逆手に取って訴求しています。

安田さんと伊藤さんが熱演するほど見る側は笑ってしまう。また笑えるからこそ印象に残る。

いやはや心憎い演出です。

「クノール カップスープ」の河合優実さん

味の素 クノール カップスープ「ポタージュなお年ごろ」篇より
味の素 クノール カップスープ「ポタージュなお年ごろ」篇より

ドラマ『不適切にもほどがある!』で、インパクトのある昭和の女子高生を演じて注目を集めた河合優実さん。

その後も、映画やドラマで「今年の顔」と言っていい活躍を見せています。

最大の魅力は、演じた人物の背後にある「物語」まで想像させる力でしょう。

どこか謎めいており、見る側は「本当はどんなひとなんだろう」「心の中で何を思っているんだろう」と気になって仕方がない。

そんな優実さんが、味の素「クノール カップスープ」のCМに、21代目キャラクターとして登場しました。

「コーンなうれしい朝にして」篇、「ポタージュなお年ごろ」篇、「ごちそうの方程式」篇の3本が並んでいます。

その中でも、「お年ごろ」篇から目が離せません。

お父さんと向き合ってスープを飲みながら、「子どもじゃないのよ私、もう」という〈心の声〉。

ポタージュの深みが分かるし、一緒に味わう「カレシだって」……なんて、つい言いそうになっちゃう。

驚くお父さんを見て、「カレシの存在」がウソともホントともとれる、何とも〈罪な微笑〉でごまかす優実さん。

ほら、もう目が離せない!

メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。1981年テレビマンユニオンに参加。以後20年間、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶大助教授などを経て、2020年まで上智大学文学部新聞学科教授(メディア文化論)。著書『脚本力』(幻冬舎)、『少しぐらいの嘘は大目に―向田邦子の言葉』(新潮社)ほか。毎日新聞、日刊ゲンダイ等で放送時評やコラム、週刊新潮で書評の連載中。文化庁「芸術祭賞」審査委員(22年度)、「芸術選奨」選考審査員(18年度~20年度)。

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