そいで結局レオナルド・ディカプリオは、アカデミー賞主演男優賞を受賞するのか問題。
さていよいよ29日に迫ってきたアカデミー賞。
作品賞と監督賞の予測(っていうか希望?)の記事は昨日アップしたんですが、やっぱり俳優賞がどうなるかが一番気になりますよねー。というわけで、今回は最後まで(私が)ハラハラしそうな主演男優賞――というか、レオナルド・ディカプリオを中心に、作品をご紹介したいと思います。
候補は以下の通り。
50年代に吹き荒れた「赤狩り」の標的となりハリウッドで地位を失いながらも、偽名で『ローマの休日』などの名作を世に送り出し、2度のオスカーを受賞したダルトン・トランボの波乱の人生を描く。
さてわれらがレオナルド・ディカプリオ。作品賞の本命作品のひとつ『レヴェナント 蘇りしもの』でノミネートされ、主演男優賞でも最有力と言われています。とはいえ昨年の『ウルフ・オブ・ウォールストリート』でも前哨戦の多くを制して大本命と言われていましたが、受賞にはなりませんでした。ちなみに私は、去年も数少ない「獲らない」派でした。このページでも「祝・ゴールデングローブ賞受賞!レオナルド・ディカプリオが、それでもアカデミー賞に届かない3つの理由」
という記事をアップしたのですが、そこでその理由を
(1)レオは飽くまでスターで、アカデミー会員の好む“役者臭”がない
(2)共演者に上手い人を持ってき過ぎる
(3)役者よりも作品それ自体が目立つ作品を獲るタイプの監督と組んでいる
の3つを上げました。さて今回の『レヴェナント』で検証してみましょう。
(1)は俳優であるよりスターであるレオの宿命で、変わりようがありません。(3)は今回もそういうタイプのイニャリトウ監督。
今回全く違うのは(2)です。映画の尺は3時間くらいなんですが、そのうちの2時間弱くらいは、レオが演じるヒュー・グラスが雪の荒野を彷徨っている場面で、つまりはその間、画面に映っている名のある役者はレオだけなんですね~。考えてきました。
そしてそのサバイバルの旅が「えええええ~?!」って思うような、とんでもないことの連続です。グリズリーと格闘するとか、凍った川に流されるとか、野犬が襲ったバイソンを奪ってその生肉食うとか、映画でこんなことやってるスターを私は他に知りません。ヒューは息子を殺した男に復讐をしたい一心で、生き延びるために何でもやるわけです。それがなんだか、レオ自身の「オスカーを獲るためならなんでもやる」に重なって見えてくるんですねえ。前回、『レヴェナント』は“体力を消耗する作品”と書きましたが、私の場合、その大部分がそうした体当たりの演技の連続から来る「レオ疲れ」だったんですね。
でもだからってレオの受賞がない!と言っているわけではありません。『レヴェナント』が作品・監督・主演男優賞の3部門を獲る可能性も当然あります。’90年以降の受賞例を見ると――
『羊たちの沈黙』(91年) アンソニー・ホプキンス
『フォレスト・ガンプ一期一会』(94年) トム・ハンクス
『アメリカン・ビューティー』(99年) ケヴィン・スペイシー
『英国王のスピーチ』(10年) コリン・ファース
『アーティスト』(11年) ジャン・デュジャルダン
レオとは対極の、ちょっとお行儀のいいエレガント系の俳優が並んでいるのが気になりますが、この可能性、実は監督賞を落として、作品賞と主演男優賞の2部門獲得(『グラディエーター』のラッセル・クロウのみ)よりも高い確率です。悲しいかな、作品賞と監督賞の2部門受賞作が主演男優賞を逃す確率はそれ以上に高いのですが、裏を返せば『レヴェナント』以外が作品賞・監督賞を獲得すれば、レオの主演男優賞の受賞のみという確率は統計的には高いものになります。統計的には、ですけども。
世の中はみんな「レオ確実」の大合唱で、その可能性は大なのでしょうし、それはそれで「レオよかったね!」と思うのですが、私自身はこの作品でレオが獲るのはモヤモヤするんですね。彼にはこんな大仰な役でなく、もっと普通の役をさりげなく演じてほしいからです。ということで、願望としてはレオ以外!
逆にレオ以外なら誰があるのか見てみましょう。マイケル・ファスベンダーやマット・デイモンはアカデミー会員にはウケがよさそうですが、どうしてもレオと比べると物がりない感じがします。までもオスカーって時々本人さえビックリな人が受賞することもあるので、マット・デイモンあたりが「なんで俺?」みたいな「ハトが豆鉄砲」的表情で壇上に上がるのも面白いかもしれません。去年はポンと出てきたエディ・レッドメインがスルッと獲得しているので、『トランボ』のブライアン・クランストンとか獲っちゃったら面白いわあ。これまでは脇役が主でしたが、ドラマ『ブレイキング・バッド』での異様な存在感で大ブレイクしたオッサン俳優です。作品のネタも「赤狩り」でハリウッドを追放された男の話ですから、この時代の罪悪感をおぼろげに知るアカデミー会員の爺さんたちの琴線に触れそうな気もするし。
いやー、難しいなあ、予想って。までも当たらなくても人が死ぬわけじゃなし、アカデミー賞はこうやって盛り上がるのが楽しいもの。映画ファンのみなさんも本日はビール片手にあーだこーだやりながら、明日の発表を楽しみにお待ちくださいね~。
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