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いよいよ29日に発表!アカデミー賞作品賞はどの作品に?

渥美志保映画ライター
こちらの作品が、世間の空気を無視した個人的イチオシ。

さて、いよいよ日本時間で29日に迫ってきたアカデミー賞授賞式。

みなさんいろんなところで予想とかしていますねー。まあ私も予想してみたりもしたんですが、これだけ私より頭もよくて映画にも詳しく、いろんな事情に通じてる人たちが予想をしているのに、私が予想して何の意味が?とか、予想も何も29日にわかるじゃん!とかも思ったりもするわけですね。

というわけで私は、まあ世の中の空気読んだ予想を鑑みながらも、「これにとって欲しい!」という「超個人的なオシ」成分がより多めの原稿をお送りしたいと思います。主演男優賞は明日アップするとして、まずは作品賞&監督賞を。

本命はどうやらこの3本。

『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(監督賞候補作)

義眼の変人を演じるクリスチャン・ベイル、ホントに義眼にしか見えない演技
義眼の変人を演じるクリスチャン・ベイル、ホントに義眼にしか見えない演技

2008年のリーマン・ショックの裏側で、いつかはじけるそのからくりを見抜いて勝ち逃げた男たち、そのギリギリの攻防を、時にコミカルに時にシニカルに描く。『ウルフ・オブ・ウォールストリート』のB面的作品。(3月公開)

『レヴェナント 蘇りし者』(監督賞候補作)

踏んだり蹴ったりの役を、今回は泥まみれで熱演しておるレオ
踏んだり蹴ったりの役を、今回は泥まみれで熱演しておるレオ

19世紀開拓時代のアメリカ西部を舞台に、仲間に裏切りによって息子を殺され、自身も瀕死の重傷を負ったまま荒野に置き去りにされた男が、復讐への執念を胸に生き抜いた壮絶なサバイバルの旅を描く。(4月22日公開)

『スポットライト 世紀のスクープ』(監督賞候補作)

マスコミがまだ「正義の味方」として機能してた時代のお話
マスコミがまだ「正義の味方」として機能してた時代のお話

2002年にボストン・グローブ紙の特集記事チーム「スポットライト」がスクープした、カトリック教会の神父による膨大な数の児童虐待の事実と、その組織ぐるみの隠ぺい。その取材の裏側を実話をもとに描く社会派ドラマ。(4月中旬公開)

でもって私が「この3本の中ならこれしかないだろ!」と思うのは、『レヴェナント 蘇りし者』なんですねー。

昨年のアカデミー賞作品賞『バードマン あるいは(無知が生み出す予期せぬ奇跡)』の監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトウ&撮影エマニュエル・ルベツキのコンビによる作品ですが、すべて自然光で撮影した大自然の映像がスゴすぎです。

未開拓の地は当然ながらネイティブ・アメリカンの地、つまり文明に冒されていない世界、神が支配する世界であり、それはこの世とあの世の境目の世界でもあるんですね。それを表現してあまりある幻想的で荘厳な映像が3時間近く続き、大画面で見れば観客はその世界に完全に迷い込んでしまうと思います。作品賞に十分な風格。

ただ撮影賞と監督賞はちょっとどうなるかわかりません。やっぱりアカデミー会員ってお爺ちゃんが多いから、さすがに2年連続で同じ監督、3年連続で同じ撮影監督、ってことには「いかがなものか」ってなっちゃう人多そうな気がします。私個人としては3年連続でも撮影賞ならあげやすいんじゃないかなと思うし、あげちゃっていいと思うんですが、監督賞はさすがに2年連続は厳しいんじゃないかなあ。

というのも『レヴェナント』は、映画の持つパワーがすごすぎて体力を奪われるタイプの作品なんですよね。アカデミー会員のお爺ちゃんたちは見終わった後「ちかりた……」って思っちゃうんじゃないかなーと思うのです。笑いもユルさもある去年の『バードマン』を見ているだけに、とくに。映画ライターですけど、映画的な価値とか無関係な素朴な人間観察から予想しております、はい。

さてそうなると、監督賞は『マネーショート』か、『スポットライト』か――ということになりそうですけど、そうでもないんですねー。監督賞は、じゃーん!こちらを!

『マッドマックス 怒りのデスロード』(監督賞候補作)

『レヴェナント 蘇りし者』ではレオをハメる悪党を演じているトム・ハーディー
『レヴェナント 蘇りし者』ではレオをハメる悪党を演じているトム・ハーディー

石油も水も枯渇しかけた近未来。資源を独占し恐怖で民衆を支配するイモータン・ジョーに囚われた元警官マックスは、ジョーの元からともに逃げだした副官フュリオサと女性奴隷たちと行動を共にすることに。だが逃げても逃げても追ってくるジョーの軍団に追い詰められた彼らは、最後の勝負に打って出る。37年前に生み出された爆走クレイジー映画『マッドマックス』の新世紀版は、こうやって文字で書いているのがアホらしいほど、爆走に次ぐ爆走の血沸き肉躍る作品。爆走トラックの前面でエレキかき鳴らすギタリストとか、「母乳製造機」かのごとく機械に搾乳されるおばちゃん軍団とか、銀色スプレーでラリったハイパー白塗り兵士たちとか、意味不明なまでにクレイジーな世界観が最高の1本!

――って、みんな見てるし知ってますね。ええ、私も書きたかっただけですwww。ぶっちゃけ、下馬評無視した個人的見解ではこれが作品賞でいいくらいですっ(←気のふれた人)。40年近く前に作られた世界観を今の時代に焼き直しても、まったく古くならない空前絶後の作家性。見てない人は、DVDで即見るべし。

今年のオスカーは、ノミネート俳優が白人しかいないことから「白すぎる」と話題でしたが、日本のマスコミはあんまり触れないけど、オスカーは実は女性にも全然開けてないことを批判されています。『マッドマックス』は、あんな顔して実のところすごくフェミニズムの匂いのする映画なので、そういう意味でもいいんじゃないかなあと思ったりもします。

最後に、作品賞は難しいだろうなと思いますが、作品賞候補の中で私が最も好きなオシ映画はこちら!

『ルーム』

誘拐され小さな「ルーム」に監禁された少女ジョイと、彼女が「ルーム」で産み落としたジャック。あるきっかけで決意したジョイは、外の世界に出たことがないジャックとともに決死の脱出計画を実行する。だが7年ぶりの解放で、ジョイは心の傷をあらわにしてゆく。主演女優賞ノミネート(そしてきっと受賞!)のブリー・ラーソンはもちろんだけれど、息子ジャック役の子役ジェイコブ・トレンブリーが、なんで助演男優賞にノミネートされないの!と感じるほどの素晴らしさ。元ネタが実際の事件という衝撃がクローズアップされがちだけれど、何よりも感動的なのはふたりが「ルーム」から出た後半のドラマ。子供がいるお母さんが見たら間違いなく号泣。(4月公開)

その他の候補作はこちら!

『ブルックリン』

シアーシャ・ローナンは主演女優賞にもノミネート
シアーシャ・ローナンは主演女優賞にもノミネート

1950年代を舞台に、アイルランドの田舎町から単身ニューヨークへ移民した少女エイリーシュの恋と青春を描く。(7月公開)

『ブリッジオブ・スパイ』

スティーブン・スピルバーグ監督、トム・ハンクス主演!

『オデッセイ』

リドリー・スコット監督、マット・デイモン主演!

それではみなさま、よい映画ライフを!

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こちら3本も、オスカーで注目の作品!

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映画ライター

TVドラマ脚本家を経てライターへ。映画、ドラマ、書籍を中心にカルチャー、社会全般のインタビュー、ライティング、コラムなどを手がける。mi-molle、ELLE Japon、Ginger、コスモポリタン日本版、現代ビジネス、デイリー新潮、女性の広場など、紙媒体、web媒体に幅広く執筆。特に韓国の映画、ドラマに多く取材し、釜山国際映画祭には20年以上足を運ぶ。韓国ドラマのポッドキャスト『ハマる韓ドラ』、著書に『大人もハマる韓国ドラマ 推しの50本』。お仕事の依頼は、フェイスブックまでご連絡下さい。

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