本田圭佑が支援。スポーツ成長の鍵を握る“スポーツトークン・プロジェクト” がウガンダから始まる。
『将来を一緒に応援し合える仲間を集めることが、今回の目的となります』
コロナ禍でいまだ出口が見えない日本や世界。
スポーツやエンターテイメント産業は最も打撃を受けた分野となったが、そんな状態にも屈せず、未来を再構築しようとする挑戦者たちの取り組みが生まれている。挑戦者は「ドリーム・シェアリング・サービス」をコンセプトとする株式会社FiNANCiE(田中隆一代表)。サッカー選手の本田圭佑氏(34)も支援している。
「今回、僕らが経営するウガンダの(サッカーチーム)ブライトスターズがフィナンシェとコラボできるということで、大変嬉しく思っています。クラブトークンを持っていただき、正式なサポーターとしてブライトスターズの将来を一緒に応援し合える仲間を集めることが今回の目的となります」
海外から届いたこのメッセージ、本田氏からだ。
キャリアについての説明はもはや不要だろうが、間違いなく言えるのは、常に現在いる地点から数段上の高みを目指し挑戦を続けているという人生の歩み方だ。本田氏の次の高みへの挑戦は「クラブトークン」「スポーツトークン」である。本田氏がオーナーを務めるサッカーチームは導入を決めた。
では、トークンとは一体どういったものなのだろうか!?
筆者はこの分野の取材を続けており、前作に続いてYahoo!記事では今回で二度目となる。
本田氏オーナーの「SOLTILO Bright Stars FC」が日本国内向け初となるトークンを発行
クラブトークンとはファン・サポーターによる新しい応援スタイルともとえいる。コロナ禍ではクラウドファンディングや投げ銭などのギフティングが注目されているが、一方でその効果は一時的なものでサスティナブルかどうかは現在評価の過程にある。そこで次の手法として注目を浴びているのが、このトークンだ。
COVID-19(新型コロナウイルス)の影響で試合中断、観客入場制限を強いられ経営に苦しむ多くのスポーツクラブが、相次いで新しい手法で資金を募っている。コロナ禍で重要なのはオフライン・オンラインを含む新しいファン・サポーターの体験価値を作り出すこと。投げ銭であれ、クラファンであれ、ここが最も重要なポイントとなる。この新しい取り組みを、先ほどの本田氏の言葉からひとつひとつ紐解いてみる。
ブライトスターズ(SOLTILO Bright Stars FC)とはアフリカ・ウガンダを拠点とするサッカークラブ。東アフリカに位置するウガンダ共和国のプロサッカーリーグ1部に所属し、2017年にSOLTILOが経営権を取得。2020年5月で3シーズンが終了して、現在10月の開幕に向けてオフシーズンの最中にいる。
現在デジタルを活用して、どう国内サポーターを募っていくかを大きな課題としている。そこで、クラウドファンディングやギフティングとはまた違った、しかも持続性の高いトークンというスキームで、サポーターとクラブの関係を創り上げる新たな取り組みが始まったわけだ。海外ではチリズなど先行事例として挙げられ、日本でも注目の高いテーマだが日本国内のプラットフォームと連携してのクラブトークン発行は、おそらく初の取り組みである。
ファンエンゲージメントを高めるインセンティブ設計とは?
では、そもそもトークンとはどのような仕組みなのだろうか?
まず、ファン・サポーターはトークンを保有することで保有者のみ入ることができる限定コミュニティに入り、クラブ運営者や他のサポーターたちと交流が可能となる。また、クラブから発信される定期的な投票企画や限定イベントにトークン保持者のみが参加できる。また、トークン自体の価値がコミュニティの成長によって上がる可能性があるため、プロジェクトに関心を持ち、参加するサポーターが増えることで、初期から参加していたサポーターにとっても保有しているトークンの資産価値が上がるという経済的インセンティブを享受できる可能性もある。
言葉が正しいかどうかはあるが、クラブとファン・サポーターとで緩やかな『運命共同体』のような関係が築けるということだ。今までにない新しいスポーツビジネスの可能性が拓かれる可能性もある。既存のクラブとしてもサポーターに対してファンクラブや後援会などグッズ・チケットのように商品価値を提供するだけでなく、クラブと一緒に歩んでいくという「体験価値」を提供することができ、双方向のやり取りが展開されていくトークンインセンティブが大きく寄与することとなる。
トークンを発行する会社の戦略とファンエコノミーの創造
トークン発行の主体はFiNANCiE(フィナンシェ)という会社である。本プロジェクトを全体構築し、新しい挑戦を進めいる。
クラブトークンの発行・販売をしているこの会社は本田圭佑氏や長友佑都氏も株主として参画している。その縁もあって、今回のクラブトークンの発行が実現している。この会社のコンセプトは「ドリーム・シェアリング・サービス」で昨年の3月にβローンチして同年9月にアプリ(iOS&Android)をリリースしている。現在まで約100名のプロジェクトオーナーがトークンを発行している。そして今回、日本初のクラブトークン発行を開始したのだ。
FiNANCiE代表の田中隆一氏は、こう答えてくれた。
「SOLTILO Bright Stars FCと連携してクラブトークンを発行することで、クラブ運営者と協力してサポーターの皆様に新しい体験を提供していきたい。また、今回の取り組みにより既存のサポーターだけでなく、チームのことをまったく知らなかった日本のサッカーファンやJリーグのサポーターの方々にもクラブに関心を持って頂いて、新しいサポーターになってもらえたら本当に嬉しいんです。それこそ日本とアフリカの架け橋にもなり得ます。
弊社としては、この事例をベースに他クラブチームにも展開し、できるだけ多くのチーム活動を支援していきたいのです。ブロックチェーン技術はまだまだま浸透しているわけではないですが、技術に新しい価値を乗せることでファンエコノミー(経済圏)を創造し、この国の社会の活性化、引いては日本やアフリカの未来に繋がればと真剣に思っています」
静かに真摯に質問に答える姿勢が印象的な田中氏だが、次世代の戦略を進めており、言葉の端々にプロジェクトへの並々ならぬ情熱を感じる。すでに複数のチームから問い合わせも受けており、プロジェクトは着々と進行しているようだ。
スポーツ×トークンエコノミーの未来
ヨーロッパで同様のクラブトークンを発行するチリズなど、挑戦はまだ始まったばかりだ。
コロナ禍で余程潤沢な内部留保があるチーム以外は、次なる手法は喉から手が出るほど欲しい状態でもある。クラブトークンはそのニーズに大きく応える可能性がある。そういった意味でも、本田氏とFiNANCiEの挑戦はスポーツの未来価値にも大きな影響を与える。
今回の事例が成功すれば、"スポーツ×トークンエコノミー”の未来をより確かなものにしてくれるだろう。注目の今回のプロジェクトは今後のスポーツ経営の鍵をにぎるツールといっても決して大袈裟ではない。それくらいのポテンシャルを秘めている手法である。今後もこの分野の取材を続けていき、Yahoo!記事にもアップしていきます。
(了)