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九州が熱い!グローバルとローカルの融合で未来を切り拓く 九州産業大学の挑戦 津上賢治理事長が語る

上野直彦AGI Creative Labo株式会社 CEO
九州スポーツ、九州経済全体で考える重要性を語る九州産業大学 津上賢治理事

九州スポーツ、九州経済の活性化、九州全体で考えることの重要性。そのための人材を輩出

今、九州が熱い。
スポーツも経済も、そして教育もである。

熊本県では台湾の半導体企業大手TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd.)が進出してから2030年までに九州全体に与える経済効果は20兆円以上と予想されており、これは大阪・関西万博の開催がもたらす経済効果をはるかに超えている。

また、長崎県では10月に長崎スタジアムシティのオープンが控えており、柿落としのLiveは地元出身のアーティスト福山雅治氏に決定した。Yahoo!の読者には説明不要だろうが、プロ野球・福岡ソフトバンクホークスの躍進がある。

そんな九州で注目されている教育機関がある、九州産業大学(以下、九産大)だ。
同大学の理事長を務める津上賢治氏は、日本興業銀行(現みずほ銀行)出身でスタンフォード大学でMBAを取得。九州電力の副社長などを歴任し幅広いビジネス経験を持つ。グローバルな視点と地域への連携である「グローカル」を目指す津上氏。大学の未来像や福岡・九州のポテンシャルについて伺った。

◯九産大ではオープンキャンパス2024が開催!

第1回目 7/14(日)

第2回目 7/21(日)

https://www.kyusan-u.ac.jp/nyushi/ocandcm/

(注:記事中で特に表示がない画像・写真は九州産業大学の提供によるもの)

九州全域を見据えたグローバル戦略、ローカルへの貢献の重要性

ビジネスマンから教育者へ、現在は次世代の人材育成に注力している。
ビジネスマンから教育者へ、現在は次世代の人材育成に注力している。


ー津上理事長は、九産大の福岡や九州での役割をどのようにお考えでしょうか。

津上 日頃から福岡を拠点としながら「九州」全体を視野に入れた大学運営を心がけています。私が九州電力の海外事業部門在籍時に、地域に根ざしつつ世界展開を図る企業モデルとしてメモ用紙、ポストイットで有名な「3M」に注目していました。ミネソタ州を拠点とした化学・電気素材メーカーで世界的企業へと成長を遂げ、本社所在地への貢献と世界展開を両立させていたのです。

九産大も同様に九州全体の発展に寄与、そして世界へ視野を広げていく。

本学として九州の未来を担う人材育成に注力し、地域貢献と国際的視野を兼ね備えたgraduatesの輩出を目指しています。

ー私事ですが現在イギリスのサッカーチーム マンチェスターシティと仕事をしていますが、彼らが最も使う言葉が「グローカル」です。そう考えると福岡の地理的な優位性をどのようにお考えですか。

津上 「グローカル」は良い言葉です。福岡は昔から歴史的にアジアとの交流拠点として知られています。この地理的優位性こそ現代では最も大きな強みです。

私見ですが福岡の雰囲気はアメリカ西海岸、特に私が留学していたスタンフォード大学周辺と通ずるものがあると感じています。東京と比較すると、福岡はより自由でのびやかな空気が漂っている。こうした環境は新しいアイデアや起業を創出するのに適しています。

我々は福岡の自由な気風、アジアへの玄関口としての特性、これらを最大限に活用していきたい。グローバルな視野を持ちながら同時に地域に貢献できる人材の育成に注力をしています。この取り組みを通じて福岡と世界をつなぐ架け橋となる人材を送り出していきたいです。

目を開かされた海外での経験

九産大では語学教育にも注力。語学研究教育センターが定期的に開催しているイベント「Hello Sensei」、講師はSamuel Taylor氏。本年度はNY TIMESの学内購入・アプリ導入も実現。
九産大では語学教育にも注力。語学研究教育センターが定期的に開催しているイベント「Hello Sensei」、講師はSamuel Taylor氏。本年度はNY TIMESの学内購入・アプリ導入も実現。

ー理事長のこれまでのキャリアをお聞かせ下さい。

津上 1973年、日本興業銀行に入行し外国部に配属されました。当時は国内での高度成長期がほぼ終焉し、日本企業の海外進出意欲が高まっていた時期でした。行員時代は香港やNY勤務など、主に日本企業の海外展開をサポートする国際関係業務を担当しました。

ー興銀から九州電力へ。九電では海外事業を経験されたと伺っています。

津上 2000年に九州電力に転じた際に海外事業部門を任されました。当時、電力自由化の波が押し寄せる中、九州電力もグローバル展開を視野に入れていました。

西日本に位置する電力会社として、アジア進出は比較的自然な選択でした。具体的にはベトナム、フィリピンなど、主にアジア地域での事業展開に注力しました。私自身、興銀時代に培った経験を活用し、これらのプロジェクト推進に尽力しました。海外での事業展開は困難も多いのですが、同時に新たな可能性を見出す機会でもあり、非常にやりがいがありました。この時の知見や経験が現在の本学にも活かされていると思います。

国際交流、スポーツと教育の可能性

アジアとの交流、留学生、スポーツなどインタビューのテーマは尽きない。
アジアとの交流、留学生、スポーツなどインタビューのテーマは尽きない。


ースポーツを通じた地域貢献について、どのようにお考えでしょうか。

津上 スポーツは地域貢献と国際交流の両面で重要な役割を担っています。
本学としても、スポーツを通じた国際交流にさらなる可能性を感じています。先般もスタンフォード大学を訪問した本学教員が同大で剣道を学ぶ学生と交流しました。今後、スポーツを媒介とした国際的なつながりの強化にも取り組んでいきます。

加えて、福岡にとどまらず、九州全体の地域特性を活かしたスポーツ振興や、地域のスポーツ文化の発展に寄与できる人材の育成も目指しています。こうした取り組みが、将来的に九州のスポーツ文化の更なる発展につながることを期待しています。

ースポーツと教育の融合については、どのようにお考えですか。

津上 スポーツは教育全体に大きな影響を及ぼす可能性を秘めています。チームワーク、リーダーシップ、目標設定と達成などスポーツを通じて学べる要素は多岐にわたります。これらのスキルはビジネス界でも極めて重要な位置を占めているものばかりです。

本学では各分野において、文理芸融合の教育アプローチを通じて多角的な視点を持つ人材育成を進めています。


スタンフォード大学との未来の架け橋に

自身のスタンフォード大学への留学経験は現在のキャリアに活かされている。
自身のスタンフォード大学への留学経験は現在のキャリアに活かされている。

ースタンフォード大学との関係構築について、どのような取り組みをされていますか。

津上 私自身がスタンフォード大学のMBA修了生という繋がりもあり、同大学との関係構築に注力しています。本学ではスタンフォード大学SPICE(Stanford Program on International and Cross-Cultural Education)との連携教育プログラムを開講しています。同プログラムはスタンフォード大学の講師陣や九州・福岡にゆかりのあるゲストによる講義を本学の学生がオンラインで受講し、グローバル視点や異文化理解を深めています。講義はすべて英語で行います。

今後は関係をさらに発展させ、学生の相互派遣の実現を目指します。具体的には、スタンフォード大学のサマーセッションへの学生派遣に向けた準備を進めています。サマーセッションはスタンフォード大学が外部から学生を積極的に受け入れる短期留学プログラムを指します。

海外経験が現在の私の基盤となっており、スタンフォード大学で学んだ国際的な視野や多様性の大切さなど、本学の学生たちにも体感してほしい、こういった私自身の思いがあります。実際に現地で学ぶことで得られる経験は格別です。留学経験を通して、学生たちにグローバルな舞台で活躍する自信と能力を培って欲しいのです。

ー津上さんにとってスタンフォード大学時代の思い出は、どういったものがありますでしょうか

津上 1975年から77年にかけて、私はスタンフォード大学のビジネススクールに留学し、MBAを取得しました。当時、日本企業による海外留学制度が盛んで私の学年では300人中5人が日本人でした。スタンフォード大学の雰囲気は非常に革新的、自由な発想を尊重し迅速に行動に移す文化が根付いていました。この環境が後のシリコンバレー発展の礎になったのだと見ています。

私自身、2年間の留学経験は人生の転換点になりました。
従来の日本的な思考方法に加え、グローバルな視点や革新的なアプローチを学ぶことができました。なかでも印象的だったのは「失敗を恐れずチャレンジする姿勢」です。この経験は、私の後のキャリアに大変大きな影響を与えました。

現在、本学の学生たちにも同様の機会を提供したいと考えていて、彼らがスタンフォード大学の革新的な環境に触れることで新たな可能性を見出し、グローバルなリーダーとして成長して欲しいのです。

ーそのためのスタンフォード大学への学生派遣ですが、どのような課題がありますか。

津上 最大の課題は語学力、これに尽きます。スタンフォード大学は非常に高い語学力を要求します。しかも、単なる英語力だけでなく、短時間で大量の情報を処理し自分の意見を的確に表現する総合的な能力が問われるのです。

本学には学生たちが積極的に発言し自分の意見を述べ合う伝統があります。この強みを活かしつつ、語学力の向上に注力していきます。当面の目標としてSPICEプログラムで好成績を収めた学生の中から、サマーセッションへの派遣を実現させていきたいです。

取り組みは容易ではありませんが、実現すれば本学の学生にとって大きな刺激になるはずです。グローバルな環境での学びは、視野を広げて、自信を育む絶好の機会です。その経験が本学全体にも良い影響を及ぼすと考えています。

私自身の海外経験を振り返ると、言葉の壁に何度も直面し苦労した記憶があります。それを乗り越えることで得られた成長は計り知れません。学生たちにも同様の挑戦と成長の機会を提供したいので、この取り組みを進めています。彼らの努力と成長を私は心から応援しています。

21世紀最も大事なのは「グローバル」、そして「グローカル」

九産大のキャンパス。「文理芸融合」、そしてスポーツ×教育で新しい挑戦を続けている。
九産大のキャンパス。「文理芸融合」、そしてスポーツ×教育で新しい挑戦を続けている。


ーグローバル人材の育成について、もう少し深掘りさせて下さい。スタンフォード大学との取り組み以外、例えばアジアとの連携や留学生についてです。

津上 グローバル人材の育成は、21世紀の大学教育において最重要課題の一つです。本学では留学生の受け入れ強化と日本人学生の国際化の両面から課題に取り組んでいます。

現在、本学には約300名の留学生が在籍しています。日本語能力試験N2レベル以上の日本語力を持ち、意欲ある留学生を受け入れています。これらの留学生の日本での就職も視野に入れています。優秀な留学生が日本企業で活躍することは企業にとって大きな刺激となるはずです。留学生が日本で学び、そして日本で働くというキャリアパスはまさにグローバル人材の典型です。

私自身が海外での経験を通じて多様な文化や考え方に触れることの重要性を実感しました。留学生と日本人学生が共に学ぶ環境を整えることで、双方に有益な相互作用が生まれると確信しています。このような多様性に富んだ環境が真のグローバル人材の育成につながると信じ、今後も取り組みを強化していきます。

ー学生本人のグローバル化についてはどのような取り組みをされていますか。

津上 先述のSPICEプログラムはその一環ですが、加えて英語での授業機会を増やすなど国際化を積極的に推進しています。

具体例ですが、地域共創学部ではセントラルフロリダ大学の原忠之先生を客員教授としてお迎えし、英語で講義を実施しています。学生たちの反応は予想を上回るもので、英語での講義にも十分に対応できる力を持っていることが明らかになりました。

グローバル人材の育成において重要なのは、語学力だけでなく自分の意見を明確に表現する能力。本学の学生は積極的に発言する姿勢を培っていて、他大学の学生と比較しても特筆すべき点だと自負しています。

私の学生時代を振り返ると、英語で自分の意見を述べることに大きな壁を感じました。しかし、本学の学生たちは、その壁を乗り越えようと懸命に努力しています。彼らの姿勢に、私自身が刺激を受けることも少なくありません。このような学生たちの成長を見守りながら、国際化の推進にさらに尽力していきます。

ー先ほども出ましたが「グローカル」という視点については。

津上 「グローカル」つまり「グローバル」+「ローカル」を融合させる視点は、今後の時代に極めて重要です。グローバルな視野を持ちつつ地域の特性や文化を理解し、それを活かす能力が求められている。

福岡という地域の特性を活用しながら、グローバルな視点を持った教育を展開していますが、例えばアジアとの関係が深い福岡の特徴を生かし、アジアからの留学生受け入れに注力しています。中国、ベトナム、ネパール、韓国、台湾など、多様な国からの留学生が学んでいます。

同時に地域企業との連携も強化、例えばTSMCの進出など九州地域の経済発展を見据えた人材育成に取り組んでいます。具体的には半導体産業に必要な技術者の育成、国際的ビジネス環境で活躍できる人材の輩出などです。

グローバルな視点と地域への貢献を両立させることで真の意味での「グローカル」な人材の育成を目指しています。

「文理芸融合」で挑む未来価値の創造。九産大が育む多彩な才能の発掘

お昼時には学食で学生と一緒に談笑しながら食事する姿も。高いビジネスセンスとオープンマインドを合わせ持つ津上氏。
お昼時には学食で学生と一緒に談笑しながら食事する姿も。高いビジネスセンスとオープンマインドを合わせ持つ津上氏。


ー最後に、今後の受験生、留学生などへメッセージをお願いします。

津上 九産大は「文理芸融合」の教育を通じ、グローバルな視点を持つ人材の育成を目指しています。ここでいう「芸」は芸術全般を指し感性教育を重視しているのです。

豊かな感性は、今後の社会で活躍するための必須条件です。なぜなら感性の豊かさが他者の気持ちを汲み取り、適切な判断を下す能力に繋がっています。特筆すべきは理工学部でも芸術的要素を取り入れている点です。

例えば、製品開発におけるデザイン性の重要性は言うまでもありません。iPhoneの成功は優れた機能に加え、デザイン性にも大きく起因しています。このため本学の理工学部でもデザイン思考を導入した教育を展開しています。

福岡の自由でのびのびした雰囲気のなかで、学び、挑戦し、グローバルに、ローカルに活かしていく。このような大学生活を送りたい高校生や中学生の方は、是非この九州産業大学の門を叩いていただきたいと思っています。皆さんの可能性を最大限に引き出し、未来を切り拓く力を養う環境が整っています。

我々は常に時代の一歩先を行く教育を追求してきました。TSMCの進出やアジアとの関係強化など九州全域の発展と歩調を合わせ、成長する大学でありたいと心から願っています。私自身も長年のビジネス経験を通じて「文理芸融合」の重要性を痛感してきました。技術だけでなく、芸術的センスや人間性豊かな発想が真のイノベーションを生み出すのだと確信しています。本学での学びが皆さんのキャリアや人生に新たな可能性をもたらすことを願っています。皆さんと共に、この地域の、そして日本の未来を創造していけることを心から楽しみにしています。

◯九産大ではオープンキャンパス2024が開催!
第1回目 7/14(日)、第2回目 7/21(日)
https://www.kyusan-u.ac.jp/nyushi/ocandcm/

インタビューを終えて

津上理事長の言葉から、九産大が単なる教育機関としてだけでなく、九州全体の未来を見据えた重要な役割を担おうとしていることが伝わってきた。
グローバルな視点と地域への深い理解、先進的な教育理念を融合させることで新時代に対応した人材育成を目指す姿勢が何より印象的だ。

特筆すべきはスタンフォード大学との連携、「文理芸融合」教育の推進など従来の日本の大学にはない先進的な取り組みである。また、TSMC進出に代表される九州地域の経済発展を見据えた人材育成の視点も興味深い。大学が地域の産業構造の変化に柔軟に対応し、必要な人材を送り出そうとする姿勢は地域に根ざした大学のあるべき姿を示しているように思わされた。

津上理事長の語る「グローカル」な視点、つまりグローバルな視野を持ちつつ地域に貢献する人材の育成は、今後の日本の大学教育のモデルケースとなる可能性を秘めている。九産大の今後の発展と、巣立つ学生たちの活躍が福岡そして九州地域全体の未来を切り拓いていくことを期待せずにはいられない。今後も九産大に注目していく。

【インタビュイー】
津上 賢治
九州産業大学 理事長

1951年2月14日生まれ
福岡県八女市出身

一橋大経済学部卒

日本興業銀行(現みずほ銀行)から2000年九州電力に転じ、福岡支店長、

副社長などを歴任。その後、福岡空港ビルディング社長など経て19年から現職。

【取材・構成】
上野 直彦

(了)

AGI Creative Labo株式会社 CEO

兵庫県生まれ/スポーツジャーナリスト/ブロックチェーンビジネス/小学生の頃に故・水島新司先生の影響を受けて南海時代から根っからのホークスファン/野村克也/居酒屋あぶさん/マンチェスターシティ/漫画原作/早稲田大学スポーツビジネス研究所 招聘研究員/トヨタブロックチェーンラボ/SBI VC Trade・Gaudiyクリエイティブディレクター/CBDC/漫画『アオアシ』取材・原案協力/『スポーツビジネスの未来 2021ー2030』(日経BP)異例の重版/NewsPicks「ビジネスはJリーグを救えるか?」連載/趣味 フルマラソン、ゴルフ、NYのBAR巡り /Twitter @Nao_Ueno

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