学生セブンズ銅の女子代表帰国。福島主将「リオ五輪、あきらめない」
ささやかなる快挙である。上昇気流に乗る女子の7人制ラグビー(セブンズ)の学生日本代表が、先の世界学生セブンズ(英国スウォンジー)で3位となった。これって日本の最高位だ。11日の成田国際空港。日本の選手12人が銅メダルを胸に下げて到着ロビーに現れた。
「be One」、これがチームの合言葉だった。ひとつになる。あるいは、1位になるという意味である。その言葉通り、攻守に連係の良さが光り、日本は1次リーグを3勝1敗の2位で突破し、カップ準決勝ではカナダに5-7で惜敗したが、3位決定戦でポルトガルに24-12で快勝した。
主将の福島わさな(追手門学院大学)は「すごい悔しいです」と言った。
「世界1位になれたなあという3位です。みんな、絶対、最後まであきらめないことがフツーにできるチームでした。快挙と言われても…。世界一になっていたら、もっとびっくりされたでしょうね」
20歳の福島主将は高校1年で日本代表に選ばれた逸材である。今回の学生日本代表は、福島主将ほか、鈴木実沙紀、末結希ら、日本代表「サクラセブンズ」経験者や、若手のホープたちで編成されていた。既に発表されたリオ五輪日本選手団のメンバーは北海道で強化合宿中だったが、学生日本代表の多くもまた、リオ五輪出場をあきらめてはいないのである。
まだリオ五輪を狙っていますか? と聞けば、福島主将は「ハイ」と力強く、2度、繰り返した。
「ぎりぎりまで。それ(リオ五輪)を目指してずっとやってきているので、あきらめきれなくて。もうムリだと思っていません。まだチャンスはある。この大会で世界一になって、結果、オリンピックに行ける選手が出ればいいなと思っていました」
日本代表の浅見敬子ヘッドコーチ(HC)らスタッフが評価する場として、この世界学生選手権が「ラストチャンス」と考えていた。だから、からだを張った。全力で走った。ひとつのパス、ひとつのキック、ひとつのタックルに魂を込めた。
「ほんと(リオ五輪に)行きたいなという気持ちで過ごしていました。(疲れても)もうひとつ、仕事をしようという気持ちが必然的に出てきていました。自分の仕事量が上がったところを(スタッフに)見てほしいなと思います」
福島主将の顔はどこか、切ない。健気である。「じつは」と言って、気恥ずかしそうにバックからスマホを取り出した。茶色のクマ模様のカバーを外す。カバーの内側に忍ばせていた手の平ぐらいのサイズの一枚の紙を取り出して、見せてくれた。
何かと思ったら、神戸のパワースポットである北野異人館の「山手八番館」の入場券だった。1カ月ほど前、友人と一緒にそこを訪ね、「サタンの椅子」に座ったそうだ。サタンは悪魔ではなく、ローマ神話の農耕・豊穣の神様を指している。「そこの椅子に座ると願いがかなう」と言われている。
「願って椅子に座ったら、必ずかなうということを聞いて、(山手八番館に)行ったんです。ここでは言いにくいですけど、(リオ五輪に)ぎりぎりで行きたいという風な願い事をして…。ふふふ。今から、入れば…。だから、今のところ順調にきています。これって、かなったら面白いなーと思っています」
あぁ、ここに青春がある。純情がある。なんともいじらしいではないか。
他の女子ラグビーのトップ選手同様、福島主将はリオ五輪の金メダルを目指して、苛烈なトレーニングに打ち込んできた。ケガも乗り越えた。さらに気持ちを切らさないよう、「毎日、(リオ五輪に)出たいという気持ちを忘れないようにしてきました」と打ち明ける。「オリンピックにいく」「オリンピックにいく」と毎朝のように念じ、周囲にはこう、あえて公言してきた。
「今、メンバーではないですけど、ワタシ、リオに行きますからね」
日本女子ラグビー界全体のレベルアップを示す、世界学生選手権の結果である。選手層は間違いなく、厚みを増している。
福島主将の願い事はかなうのか。だれもが最後の最後まで、あきらめない。金メダル、そしてリオ五輪キップを目指した戦いはまだ、続いているのである。