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寄生虫「エキノコックス」愛知県知多半島に定着、あなたにできる予防法は?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:yamaoyaji/イメージマート)

愛知県の知多半島で捕獲された野犬で平成26(2014)年から近年までエキノコックスが検出されました。エキノコックスは、人体に入ると重い肝機能障害を引き起こす寄生虫疾患です。

エキノコックスの感染確認が相次いだことを受けて、国立感染症研究所が「知多半島内で定着した」との見解を示したと福井新聞が報告しています。定着したとショッキング内容なので、犬や飼い主を含めたあなたがどのように予防すればいいのかを解説します。以前に、北海道の致死の危険性がある寄生虫疾患【エキノコックス症】が愛知県でも発見...忍びよる恐怖という記事を書いています。

エキノコックス症の恐怖とは?

北海道では、エキノコックス症という病気はよく知られています。この病気は、エキノコックスという名前の寄生虫が主に肝臓に寄生しておこる病気です。北海道では、毎年10数名の患者が見つかっています。エキノコックス症は、北海道だけで、それ以外の地域の人はあまり理解されていないですね。

エキノコックスの卵は、たいへん小さいもので、直径0.03mmと肉眼では見えないので、自然の沢の水を十分な加熱をしないで手洗いや飲水すると感染することがあるのです。

人にエキノコックスが感染しても、熱が出るとか倦怠感があるとかはなく、数年から10数年の潜伏期をへてやっと症状が出るからなのです。

症状としては以下です。

□腹部の上の方(肝臓の辺り)が不快感や腫れた感じ

□肝機能障害に伴うだるさ

□黄疸

上記の症状をほうっておくと、肺や脳に病巣が転移するなど命にかかわることもあります。

つまり自然界で、新鮮な水と思って手洗いや飲水してしまうと、数年から10数年でやっと発症するのです。

エキノコックス症の感染経路

札幌市 エキノコックス症のサイトより
札幌市 エキノコックス症のサイトより

人がエキノコックス症に感染する経路は、エキノコックスが寄生したキツネや犬などのウンチに直接さわるなどの場合が考えられます。

それ以外は、エキノコックスの卵がついたキツネや犬などのウンチが付着した山菜を生で食べたり、沢水・わき水を飲んだりした場合が考えられます。

人から人への感染することはありません。犬を飼っている人や山に行く人は、特に予防が大切ですね。

エキノコックス症の予防 

エキノコックス症の正しい知識を持っていれば、予防できます。特に犬を飼っている方は注意してくださいね。

□犬を散歩させるときに、野ネズミなどに接触させない

□犬の放し飼いはしない

□ハイキングなどで野山に出かけた後は手を丁寧に洗う

□キツネを人家に近づけないよう、生ゴミなどを放置しない

□キツネがかわいいからといってエサを与えたりしない

□エキノコックスが生息していることがわかっている地域では虫卵に汚染されている可能性のある飲食物の摂取を避ける

□沢や川の生水は飲まない。もし飲む場合は煮沸してから飲むようにする

□山菜や野菜、果物などもよく洗ってから食べる

いままでは、北海道だけがエキノコックス症の地域だと思われていましたが、愛知県の知多半島も国立感染症研究所が「定着した」との見解を出していますので、注視する必要がありますね。

キャンプなどがブームなので、沢や川の生水を飲んだ人で以下の方法でエキノコックス症の有無を調べてもらえます。

北海道のエキノコックス症の知識と予防のHPによりますと以下のように掲載されています。

◆ 北海道以外にお住まいの方が、エキノコックス症の検査を希望される場合

北海道に滞在したことのある方で、エキノコックス症の血液(血清)検査を希望される場合は、次の検査機関において、血液(血清)を郵便などで受けて検査を実施していますが、最寄り(もしくはかかりつけ)の医療機関にて採血の実施と血液(血清)の郵送などをご相談いただく必要があります。(検査機関では血液を直接採取することは行っていません。)

検査の内容や検査料金など詳しいことは、直接検査機関にお尋ねください。

○ 社団法人北海道臨床衛生検査技師会立衛生検査所

〒065-0019 札幌市東区北19条東17丁目

TEL  011-786-7072

FAX 011-786-7073

○ 北海道立衛生研究所

〒060-0819 札幌市北区北19条西12丁目

担当:感染病理科(直通 011-747-2768)

TEL(代表) 011-747-2711

FAX 011-736-9476

まとめ

コロナ禍なので人と密にならない自然の中に行きたくなります。沢や川などに行くとエキノコックス症に感染するリスクがある可能性があります。いまは、愛知県知多半島と北海道には定住したといわれています。これからは、まだ他の地域に広がる可能性があるので、エキノコックス症の医学的な知識をアップデートする必要がありますね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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