懐かしの春日井の「グリーン豆」が気づいたら無茶苦茶おいしくなっていた! 何が変わった?
豆菓子の中でも異彩を放つ“えんどう豆丸ごと”
豆菓子としておなじみのグリーン豆。名古屋に本社を置く春日井製菓の発売50周年となるロングセラーです。
同社は1928(昭和3)年創業。キャンディーやグミなど幅広い菓子を手がけ、豆菓子の分野でも国内トップ3の売り上げを誇ります。
長く親しまれているグリーン豆ですが、実はかなり珍しい豆菓子だと気づいている人は少ないんじゃないでしょうか。国内で流通する豆菓子は、落花生=ピーナッツが主流。対してグリーン豆はえんどう豆を加工したもの。またえんどう豆が原料の菓子でも、多くは成型タイプ(えんどう豆をつぶして成型加工したもの)で、豆のままの形状で菓子にしたものは多くありません。
「ピーナッツは衣をかけて煎れば商品になりますが、えんどう豆はそのままでは固いので、水につけて軟らかくして揚げる、という2段階の工程が必要です。手間はかかりますがその分、口あたりが軽く、うまみがしっかりつくという魅力が生まれます」(同社開発担当者)
3年前の取材でイメージが一新
こう開発者が胸を張るグリーン豆ですが、子どもの頃からふれる機会が多かった筆者は、当たり前すぎてあまりありがたみを感じていなかった気がします。様々なお菓子の中にグリーン豆が混じっていると、積極的には手を伸ばしてはいなかった記憶が。そのせいか大人になっても、“出されれば少しはつまむ“というものでしかありませんでした。
そんな印象がくつがえされたのは3年前に取材した時のこと。「私が入社した時よりも確実においしくなっている自信があります!」という開発担当者。常にブラッシュアップを図り、おいしさが増しているというのです。半信半疑で久しぶりに口にして、驚きました。「た、確かに自分が知っているグリーン豆と違う…!」。特に変化を感じたのは食感。かつては芯に少し固さが残る印象だったのですが、サクッと軽やか。豆を包む衣の塩とうまみの加減も絶妙です。
(関連記事:「喫茶店のおつまみからギフトまで。実はスゴい!名古屋の豆菓子文化」 2020年10月30日)
これで俄然その魅力を見直し、以来ビールのつまみとしてひんぱんに購入するように。周囲の人にも「グリーン豆、おいしくなっとるんだわ」と、勝手に普及活動にいそしんでいました。
リニューアルでおつまみの大定番「柿の種」を超えた…!?
そして今年、春日井製菓の人から「春にまたリニューアルしたんです」と知らされ、食べてみるとまたびっくり。さらにおいしくなっているのです! 塩の味わいが深くなり、食感もまた心なしか軽くなっているように感じます。ビールとの相性はいっそうアップ。筆者の「ビールのおともスナックランキング」では、大定番「柿の種」を超えました!
グリーン豆試食アンケートを実施。その評価は…?
筆者の中では株が爆上がりのグリーン豆ですが、これははたして冷静な評価なのか? 取材で担当者の熱量にふれたため肩入れしすぎているのではないか? そもそも筆者の味覚は信用できるのか…?
そこで、グリーン豆試食アンケートを行うことにしました。協力してくれたのは10~80代の50名。アンケート結果は下記の通りです。
グリーン豆に何かひとこと!
「塩気がとてもいい。止まらない。ちゃんと豆感があっておいしい」(20代、女性)、「こんなにうまかったっけ?酒のアテに抜群!」(50代、女性)、「昔はグリーン豆といえば箸でどけていたものですがおいしかったです」(30代、女性)、「お菓子売り場を通ってもスルーしてしまうのでもっとインパクトあるパッケージに変えるといいと思います」(50代、男性)、「もっと名古屋をアピールして、名古屋っぽい味も出せばいいのに」(30代、女性)
(回答者の性別・年代/男性19名・女性31名/10代1名・20代15名・30代9名・40代8名・50代7名・60代5名・70代3名・80代1名・年齢不明1名 ※筆者の知人、ご近所さん、行きつけのお店の関係者、取材先の人など名古屋、愛知在住者に依頼)
このように8割以上の人が「おいしい」「とてもおいしい」と評価し、うちおよそ4割が「おいしくなっている」と味の変化にも気づくという結果に。「食べたことがない」「最近は食べていない」人が大半だったのは意外でしたが、にもかかわらず食後の評価は高かったことから、大いに伸びしろがあると感じます。
担当者インタビュー! 「実は〇〇を変えたんです」
さて、多くの人が「おいしくなっている!」と感じたグリーン豆。実際にリニューアルはどのように行われたのでしょう? 春日井製菓のマーケティング部・柴田由香さん、商品開発部・ジャロー美卯さんにお聞きしました。
――リニューアルの意図を教えてください。
マーケティング部・柴田さん(以下、柴田)「グリーン豆は1973年の発売から50周年を迎えました。お客様に感謝するとともに、次の50年も愛され続けるためにリニューアルにふみ切りました。近年、豆という素材は健康的かつサステナブルな食材として注目が高まっています。豆そのもののおいしさ、魅力を伝えることを重視しました」
――具体的な変更点は?
柴田「豆のおいしさを引き出すために塩を変えました。これまではブレンド塩を使っていたところ、フランス・ロレーヌ産岩塩を新たに採用しました。10種類以上の塩を試した結果、まろやかな塩気でしょっぱさが少なく、豆本来の味わいが引き立つのがこの塩でした」
商品開発部・ジャロー美卯さん(以下、ジャロー)「塩の粒度にもこだわりました。えんどう豆の主張が強いので、それに負けず、でも塩が前に出すぎない粒度を探して何度も試作を重ねました」
――食感も軽くなっているように感じたのですが?
柴田「今回のリニューアルでは特に変えてはいないのですが、長年ずっと改良を加えているので、久しぶりに食べる方は食感も変わったと感じるのかもしれません」
ジャロー「さくさくした食感は低温と高温で二度揚げすることで生まれます。丁寧な二度揚げが弊社の製法の大きな特徴です」
柴田「えんどう豆を丸ごと使っているのもグリーン豆の特徴です。農作物なので産地や気候によっても原料にはバラつきがある。それを一定の仕上がりにするには、職人がその時々の豆の状態を見ながら揚げ時間などを調整する。本当に職人技を駆使してつくっているんです」
――グリーン豆をどんな人にどんな風に食べてもらいたいですか?
柴田「豆菓子は一般的に50~60代の方に好まれるのですが、グリーン豆の購買層は比較的広く、40代以上の方にめし上がっていただいています。さらに若い世代の方にも食べていただきたいです。おつまみだけじゃなく、小腹が空いた時やリフレッシュにも、さらに朝食などにもお勧めです」
ジャロー「私は職場でも家でも、あるとつい食べています。どんな時でもおいしく食べていただけると思っています!」
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インタビューからも、担当者が愛情たっぷりに、おいしさを追求し、伝えようとしていることが感じられました。筆者がこれを推すのも、純粋においしいと感じ、しかも記憶の中にあった味よりも間違いなくクオリティが高まっているから。昔食べたイメージのままで最近食べていない、ではもったいないと思ったからです。
騙された、と思ってまずは一度、新しくなったグリーン豆を口に運んでみてください! お菓子処かつモノづくりの町・名古屋にふさわしい、常に一歩先を目指す心意気が、ひと粒ひと粒から感じられるはずです。
(写真撮影/すべて筆者、円グラフは筆者作成)