血糖値高めのあなた、エクササイズは「午後」か「夜」に集中がお得。軽くてもOK【最新エビデンス】
「血糖高め」と言われたらどうしましょう?
あなたは健康診断で「血糖が高め」と言われたことはありませんか?
日本では、ヘモグロビン・エー・ワン・シー(HbA1c:直近1〜2カ月の血糖値を示す指標)が「6.0%」を超えると「保健指導レベル」、「6.5%」超になると「糖尿病が強く疑われ」るとされています。将来、血糖低下薬を飲まずに済むよう、この段階で血糖値を下げておきたいものです。
薬に頼らず血糖値を下げるとなると、手段は「食事の改善」か「運動」ですね。そしてこの「運動」は、どうせやるなら午前中よりも午後や夜の方が血糖を下げる作用は強いようです。キーワードは「インスリン感受性」。11月1日、欧州糖尿病学会が発行する「糖尿病(Diabetologia)」という学術誌に掲載された論文からご紹介します。
インスリン感受性って何?
まず「インスリン感受性」についておさらいしておきましょう。簡単に言えば「インスリンの効きの良さ」です。
「インスリン」と聞くと注射を思い浮かべるかもしれませんが、本来は膵臓から分泌されるホルモンで、血液中の糖(グルコース)濃度(血糖値)を下げる働きがあります。なのでインスリンの「効きが悪い」(=「感受性が低い」、「抵抗性が強い」)と、せっかくインスリンが分泌されても血糖値は下がりにくくなってしまうのです。そして太り気味、特に腹部肥満の人には、インスリン抵抗性(=低い感受性)が多いと言われています。
インスリンの働きをおさらい
せっかくですから、インスリンによる血糖値の下げ方も見ておきましょう。大きく分けてふた通りです。
1つは、糖を必要としているさまざまな細胞への「糖取り込み促進」です。血液中の糖が細胞に取り込まれる結果、血糖値が下がります。
もう1つは、「肝臓からの糖放出」抑制です。肝臓は普段、血液中の余分な糖を分解した形で備蓄し、必要に応じて糖を新生して血中に放出しています。インスリンはこの糖新生も抑制し、血糖値を下げるのです。
「朝」よりも「午後」か「夜」に身体を動かしたほうが「インスリン感受性」は良くなる
さて本題です。
運動がこの「インスリン感受性/抵抗性」を良くすることはすでに知られています。今回新たに分かったのは、運動する時間帯によって改善作用に差があるという事実でした。そうであれば、改善作用の大きい時間に運動したほうが得ですよね。
研究が行われたのはオランダです。45歳から65歳の775人を調べたところ、
・「中等度以上の身体活動」の実施時間が
・「12〜18時」か「18〜24時」に集中していた人たちは、
・「6〜12時」に集中、あるいは「1日まんべんなく」行っていた人たちよりも、
・「インスリン感受性」が改善されていました。
ここでいう「中等度以上の運動」とは、「ウォーキング」や「軽い筋トレ」、「ラジオ体操第1」、あるいは「掃除機かけ」や「風呂掃除」などよりも強度のある身体活動が相当します。「軽く身体を動かす」以上といった感じですね。
なお1日の「中等度以上の身体活動」時間は1日平均1時間強で、上の4グループ間に差はありませんでした。
つまり、同じように軽く身体を動かすのなら、午後や夜に集中させたほうが「インスリン感受性」は大きく改善するのです。
「血糖値低下」だけではない「インスリン感受性改善」の恩恵
さて「インスリン感受性/抵抗性」の改善は、血糖値低下をもたらすだけではありません。動脈硬化の抑制も期待できるんです。
というのも、インスリンの「効き」が悪くなると身体はインスリンの「量」が足りないと勘違いして、「分泌」を増やします。その結果、血中のインスリン濃度が上がり「高インスリン血症」と呼ばれる状態がもたらされるのですが、この「高インスリン血症」が長く続くと、動脈硬化が進んでしまうのです。
逆にいえば、インスリン感受性が良くなればそこまでインスリン濃度を上げる必要もないので、「高インスリン血症」も避けられます。その結果、動脈硬化の危険性も減るというわけです。
まとめ
いかがだったでしょう。
・「インスリン感受性」が下がると血糖値が上がるだけでなく、動脈硬化の危険性も高まるが
・「午後」か「夜」に中等度以上の身体活動を集中させれば効果的に「インスリン感受性」を改善できる
というお話でした。
リモートワーク中なら、掃除や洗濯、ゴミ出しなど、家事の時間を変えるだけでも効果があるかもしれません。朝散歩している人は夕方に変えてみませんか?
今回ご紹介した論文の要約は、米国医学図書館ウェブサイトで無料閲覧できます(下記)。英語で書かれていますが、無料翻訳サイトDeeplを使えば簡単に日本語で読めますよ!