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甲府、森保、三浦カズ、権田……意見が分かれるテーマを探せ

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 J1リーグの覇者(横浜F・マリノス)と天皇杯の覇者(ヴァンフォーレ甲府)が対戦した富士フイルムスーパー杯。天皇杯の覇者として昨季のJ2で18位だったチーム(甲府)がこの舞台に立つことは、今回で30回を数える歴史の中でも初めてで、ちょっとした事件に相当する。

 そもそも甲府が天皇杯を制したことが事件なのだが、準々決勝(対アビスパ福岡)、準決勝(対鹿島アントラーズ)、決勝(対サンフレッチェ広島)と、J1勢に3連勝して頂点に上り詰める甲府の姿は実際、美しくも痛快だった。決勝戦を中継したテレビ局をはじめ、多くのメディアは勝者を絶賛した。

 しかし筆者は、100%の肯定感に襲われたわけではなかった。これまでの経緯から見て甲府の適正なポジションはJ2の上位、あるいはJ1の下位だ。J1リーグを制した横浜FMから見て20番目、悪くても25番目以内に収まっているべきチームが36番目に低迷する。J3降格圏に近いところで戦うその姿は天皇杯を勝ち上がる姿とは真逆で、天皇杯優勝をストレートに喜べない原因そのものになる。

 筆者は天皇杯決勝戦後に書いた原稿で、世紀の番狂わせを起こした弱者に対し「美談と矛盾」というどちらかと言えばネガティブな見出しの原稿を書いた。試合後、テレビ局の優勝インタビューに滑舌よく応じていた吉田達磨監督に対しても、来季の続投はあるのかと懐疑的な目を傾けたものだ。そしたら吉田監督は予想通り翌々日、解任された。リーグ戦と天皇杯。価値が高いのはJリーグだ。クラブ側も天皇杯優勝よりJ2リーグ18位を重視したものと思われる。

 今回、再びスーパー杯という晴れがましい舞台に立った甲府について、筆者に近い考え方の人はどれほどいるだろうか。世の中の声は筆者側40に対し、それではないは派60ではないか。筆者は若干少数派に属すると想像するが、なにを隠そう、原稿のテーマを探す際に頼りにしているのが、世の中に存在するこの見えざる対立軸だ。

 世の中の意見が真っ二つに割れそうなものはなにか。僅かに少数派に属するぐらいがちょうどいい。もちろんこちらに絶対的に自信があれば10対90でも怖がらずに書こうとするが、反発を恐れ70対30とか80対20とか、自らが多数派に属する題材に触れれば、鋭さは失われる。当たり前すぎて面白くない。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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