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「明日、ママがいない」第3話を観る(あらすじ):りっぱな大人ときれいごと、愛と家族の葛藤と

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
ママと子供たちみんなの幸せを願って

■明日、ママがいない(日本テレビ系列テレビドラマ)

いつも話題となる野島伸司氏の作品であり、子役芦田愛菜ちゃんら出演者の熱演で話題ですが、同時に関係各所からの抗議もあり、大臣まで発言するにいたり、社会問題化しています。

(本作は、野島伸司氏脚本ではなく、脚本は松田沙也氏で、野島伸司氏は脚本監修となっていますが、あちこちで「野島伸司作品」(野島伸司脚本)と言われていますね。)

第一回、第二回を観ていろいろ考えました。

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今回は、第3話(1月29日放送)を、純粋にドラマとして観ての、感想、意見、(ちょこっと心理学っぽい?)コメントです。

以下、<ネタバレ>ありです。

明日、ママがいない第3話あらすじ(結末あり)

■『明日、ママがいない』第3話「ウサギの赤い涙。親のいる子も寂しい?」

今回、主役のポスト(演- 芦田愛菜)と共にストーリーの中心なったのは、眼帯姿の「オツボネ」(演- 大後寿々花)。

里親希望のお金持ちが名乗りでます。ただし、星座にこだわりが。該当したのは、「ポスト」と「オツボネ」でした。

■18歳

オツボネは、こんなに大きくなってしまった私なんかダメだと消極的な気持ちにもなりますが、このままでは、この児童養護施設(グループホーム「コガモの家」)から出て、ひとり暮らしをしなければなりません。ラストチャンスとがんばろうとします。

大学への進学などがなければ、養護施設は18歳で卒業。この問題は、実際にも深刻です。ポストは、あいかわらず乱暴な口ぶりですが、オツボネを気遣い、励まそうとしているのがわかります。

第3回は、コミカルなBGMですね。里親希望宅の家政婦さんの名前は、家政婦のミタムラさん。

今回の里親希望さんも、ちょっと変わり者。お母さんは星占い師、そして両親とも海外暮らしで、ネットで会話。毎回、変わった里親の登場ですね。

■いじわるな実子

この家には、実子がいました。車イスです。そしていじわる。横柄な態度で、オツボネとポストに対応します。財産も与えないと言います。

娘は、兄弟姉妹など求めていません。親も、実子の相手をさせるための里子だったようです。

■気楽・お金・ウサギのような赤い目・愛

何てひどい話だと他の子供たちは怒りますが、ポストは「気軽で良い」と語ります。彼女は、簡単に愛ある家族など求めません。オツボネにも、年齢不問なんてめったいないからとすすめますが、オツボネは「お金(大金)が必要だ」と叫び、眼帯を取ります。

そこには、怪我をしてウサギの目のように赤く傷ついた目がありました。

「こんな目ではだれも私を愛してくれない」とオツボネは淋しくかたります。

何かがあるから、何かがないから、私は愛されないと語る人がいます。本当はそんなことはないのでですが、心の余裕を失っています。すべての不幸の原因をそこに持っていき、それが解決しなければ全ては始まらないと語る人は、少なくありません。本当は、それはそれとして、一歩を踏み出せば良いのですが。

■ポストといじわるな娘

家族がほしいときれい事でも言えと意地悪に語る、車イスの娘。でも、ポストはそんなことは言いません。お互いにきつい言い方をしながら、「私のことも「ポスト」でいいいよ」、「私もきいていい?」と、普段はふてくされている二人が、素直な会話を始めます。

■「車イス」の意味、無茶でスパルタな「ハイジ」、素直な謝罪

早く治りたいと語る娘に、本当はに構ってもらいたいんだろと迫るポスト。本当はもう歩けるんだろと、とうとう坂道で車いすから手を放します。

暴走し、倒れる車イス。彼女は本当に歩けませんでした。倒れて、軽い怪我をします。

ポストは、今までになくとても素直に「ごめんなさい」と頭を下げます。そして、まるでクララを励ますハイジのように、彼女のリハビリを行います。

■お前の居場所はここにはない

一方、コガモの家に戻ったオツボネ。何でかえってきたんだと施設長(演- 三上博史)に怒られます。「ここにはお前の居場所はない!」。里子の可能性があるなら、そこへ行けと怒鳴られます。

ずいぶん乱暴な言い方ですが、実際にこんな養護施設職員に会ったことがあります。

彼は子供たちに言っていました。「お前達は一人だ、一人で生きていくんだ」。

「自分は子供たちを愛しているし、何かあれば支援したいと願っている。それでも、彼らは他の子供よりもずっと早く自立し一人で生活していかなければならない。耳ざわりの良い優しい言葉なんかよりも、こう言ってあげることが必要なんだ。」

■抱きしめてくれたら、それでいいのに

車イスの少女は、泣きながらポストに訴えます。

「私は、ただ、親が帰ってきて抱きしめてくれたら、それでいいのに」

「この家は、広いけど、私の居場所はどこにもないんだよ」

本音を出せた少女は、ポストに励まされ、友情が芽生えます。リハビリを行い、二人で一緒に寝ます。ポストは、生まれてからずっと一人。淋しいってわからないと語ります。いつも、自分より小さな子をかばって一緒に寝ていますが、今日はお姉さんにかばってもらい、ポストはちょっと照れています。

リハビリをしながら、ポストの乱暴な言動に対して「すいぶんスパルタなハイジね」と笑顔でがんばる娘。そして、とうとう立ち上がることができるようになりました。

■オツボネと母親

一方、オツボネは行くところがなく、実母の所へ行きます。母親は、彼女を自分の店のスナックへ出します。酔っ払いにからまれ、飛び出すオツボネ。

施設長は、たぶん母親のところだろうと言います。他の子供にオツボネの母親のことをいいます。

「母親でいるより女でいることが好きな女だ」「男好きの女だ」。

実際に、施設入所の子にこんな説明をする職員はいないでしょう。

ただ、母親より女をとったと感じさせる実母は残念ながらいますね。娘が父(実父や義父)に性的虐待をされているのを知りながら、黙認する母親はいます(もちろん、さまざまな事情はあるのでしょうが)。

苦しんでいる母親はたくさんいます。逃げてしまう母親もいます。でも、子育ては苦しみながら続けるしかありません。それは、不幸なことではありません。子供のために流す涙こそ、子供への愛だと、私は思います。

■オツボネとポスト

オツボネは、ママが優しく迎えてくれてと、感動的なきれいな話をポストにします。でも、ポストにはそれがウソだとすぐにわかります。他のやつなら、そう良かったねと信じるけれど、私は信じないと。そんな都合良くめでたしめでたしになるなら、(母親は)最初から簡単に手放したりしないと。

オツボネは、ポストに心からお礼を言います。しかし、オツボネはホテルにいます。母親の命令で客を取らされるようです。

危機一髪のところで、仲間に助けられたオツボネです。

■親の思い、不器用さ、母親になる機会を二度逸した。

オツボネの母親は、本当に娘に売春させようとしたのではありませんでした。ビビらせようとしただけだと。

母親は言います。私は娘を捨てたんじゃない、引き裂かれたんだ。大酒を飲む夫と争って、ビールびんが当たり、娘の目を怪我させたんだと。娘の目を見ていると罪悪感を感じる。引き裂かれてほっとしたと。

しかし、児童相談所職員(演- 木村文乃)は語ります。

彼女がホテルまで行ってしまったのは、それほどまでに居場所がなかったんだ。あなたは、母親になる機会を二度逸した。一度目は、娘を傷つけたとき、二度目は今回。ごめんなさいと謝って抱きしめてあげられなかった。三度目はありません。

■施設長の愛「めしは!?」

夜遅くコガモの家に帰るオツボネとポスト。もうご飯はないだろうと思っていると、施設長が言います。

「飯は!?」 そして、「食え」と。

あいかわらず、乱暴で愛想のない施設長ですが、このセリフは心にしみました。

本当に愛のこもった言葉でした。

「うまいか」と聞く施設長。泣きながら「わけわからない」と語るオツボネです。

■家族がいても淋しい

布団に入ったポストが他の子供たちに話します。

家族がいても、さびしいやつはいるんだな」

「何が幸せなのか、わからなくなるよ」

■ポストにとっての「家族」

「私は食って寝るところがあればいい」

一方、金持ちの娘は、せっかく歩けるようになったのに、自分で足を傷つけ、救急車で運ばれます。彼女は言います。両親が離婚することになった。歩けるようになっても意味などなかったと。

車イスの少女はせっかく元気になったのに、両親は娘が前向きになったことを喜びながら、笑顔で語りました。私達は離婚すると。お金や生活は心配ないと。

切なそうに、辛そうに、必死に救急車を追いかけるポスト。彼女は何度も叫びます。「ちきしょー!!」。

■感想

良いドラマでした。もちろん、非現実的なところや、ショッキングなところもありましたが、第一回に比べれば、ずっとわかりやすい、愛と家族の葛藤のドラマでした。

このドラマを見ていて思いますが、登場する大人たちで、社会的評価の高い、一見りっぱ大人は、たいてい悪者ですね。乱暴で一見愛がないと見られるような人が、実は愛があるということが多いようです。愛はあるけど、力がなかったり、不器用で乱暴だったりはしますが。

そして、きれい事や予定調和を嫌います。そんなところに真実はないと語っているようです。

さあ、これからドラマはどう進展していくのか。施設長の強引な手法の裏に隠れた秘密は何か、ポストの氷の心はとけるのか。ラストはどうなるのか。楽しみです。

■視聴率

「明日、ママがいない」

初回視聴率は14・0%、第2話は13・5%、今回第3話の視聴率は15・0%でした。

補足(2014.3.17):BPO「明日、ママがいない」審議入りせずは、妥当な対応。:大切なのは総合的な見方

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○筆者によるテレビ評

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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