エイプリルフールに考える嘘の心理学:ウソの見抜き方・ごまかし方
■人はなぜウソをつくのか
人は自分や他者を守るためにウソをつきます。悪いことをしたのをごまかすためにウソをつきますし、自分を大きく見せるためにウソをつきます。また、他人をかばうためにウソをつきますし、他人の気分を害して人間関係が悪くならないために、ウソをつきます。
小さな子どもはウソがつけません。ウソをつくには、高い知性が必要だからです。ウソがつけないということは、こちらの心の中でが相手に筒抜けということです。3~4歳になって、ウソがつけるようになって、人は自立への道を歩み始めるのでしょう。
子どもでも、隠れているヒツジさんをまもるために、オオカミにウソの隠れ場所を教えることができます。「ウソをついてはいけません」と教えているお母さんも、子どもが近所のおばさんの目の前で、「おばさん、すごく太っているね」なんて本当のことを言ったら、きっと叱るでしょう。
私たちが生きていくには、ウソが必要です。
そして、みんなを笑わせるためのウソ(ほら話)もあるでしょう。エイプリルフールは、世界で愛されていますね。
ウソを見抜くには?
言葉は、どうにでもなります。「君のことを死ぬまで愛する」「百万円あげる」。何とでもいえます。しかしウソをつくと、手、目、足、汗、顔色、呼吸、声の調子などに変化があらわれます。人は総合的に判断して嘘を感じ取ります。普通は言葉だけで判断しませんし、言葉だけで判断してはいけません。
では、どういう変化がウソのサインなのでしょうか。いろいろと言われていることはありますが、実は決定的なウソのサインは、ありません。たとえば、ウソをついていると、目をそらすとか、手が動くといったことがありますが、人はウソがばれないように、相手をじっと見つめますし、手が動かないようにポケットに手を入れたりします。これを意識してすることもあれば、無意識に行うこともあります。
「嘘発見器」も、ウソを見抜く機械ではありません。何かの生理的変化が起きていることを示すだけです。どんな質問、そんな答えのときに変化が見られたかで、ウソかどうかを推測します。
いつもと違う何かを感じ取ったとき、それはウソなのかもしれません。
■言葉からウソを見抜く:ウソと感じるとき
手足の動きなどでウソを感じることもありますが、もちろん言葉からうそを見抜くこともあります。ウソをついていると、話の「量・質・関係・様式」が変化します(心理学者村井潤一郎先生の研究)。
量:話す量がいつもより妙に増えてぺらぺら話したり、妙に口数がへったりすれば、敏感な人なら怪しみます。
質:ありえない話(会社一の美人にデートに誘われた)等を聞くと、人はウソだと感じます。
関係:質問や文脈と関係ない話、はぐらかすような話をすると、ウソのにおいを感じます。
様式:質問に対して、「いや、まあ、その、いろいろだよ」といったあいまいな答えは、疑いのっ心を引き起こします。
そして聞くほうは、以前の話を覚えていますから、それと矛盾するような話を聞けば、ウソだと感じます。
ばれないウソをつき続けるためには、記憶力が必要です。
心理学の研究いよれば、ウソと感じにくい話し方は、言葉を濁さず、ワンセンテンスで言い切る話し方です。これが上手な政治家や有名人もいますね。
■良いウソ・悪いウソ
英語では、ホワイト・ライ、ブラック・アイといった良いウソ、悪いウソという意味の言葉があります。
たとえば、空気が読める人(社会心理学的に言えば、セルフ・モニタリングがうまい人)は、周囲の状況と自分の立場を良く考えて絶妙な会話をします。たとえば、お姑さんの料理を食べて美味しくないと思ったお嫁さんが、「う~ん、これがお母様の味なんですね」といった具合に。
うそがまったくつけなければ、人間関係が壊れるか、自分が心の病気になります。でも、必要のないところでもウソをつき続けたり、人を傷つけるウソをついたり、何より自分自身にウソをついたりすれば、幸せは逃げていくでしょう。
さて、今日流れている膨大なニュースの中で、どれが実は「ウッソー!」なのか。笑えるエイプリルフールの種明かしが、楽しみです。
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おまけ(2013.4.1.14:50補足)
嘘でも真実でも夢や希望でも、どんな言葉や表現も、あたたかなユーモアや、頼もしい励ましになることもあれば、同時に誰かの心を傷つける可能性もあるでしょう。言葉を使う私たち、ネットで発言する私たちは、いつも考えていたいと思います。
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