米海兵隊のF35Bステルス戦闘機が護衛艦「いずも」で11月までに発着艦試験実施へ
デビッド・バーガー米海兵隊総司令官(海兵隊大将)は9月1日、米海兵隊のF35Bステルス戦闘機が今年11月までに海上自衛隊の護衛艦「いずも」で発着艦試験を実施することを明らかにした。バーガー総司令官は、米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)と米海軍協会(USNI)が主催するオンライン対話で述べた。
バーガー総司令官は「我々は(F35Bの)配備を続行するというのではなく、実際に日本の艦艇で米海兵隊のF35を飛行させる」と述べた。
一方、岸信夫防衛相は9月3日の記者会見で「具体的なことは調整中であり、詳細について述べることは差し控えたい」と述べるにとどまった。
米海軍協会ニュース「USNI News」によると、日本政府から2019年にいずも型護衛艦の「いずも」と「かが」での米海兵隊のF35Bの発着を検討するよう打診があったという。
8月下旬には英空母「クイーン・エリザベス」と長崎県の佐世保基地を母港とする米海軍の強襲揚陸艦「アメリカ」で、英空軍のF35Bと米海兵隊のF35Bとを互いに交換させての発着艦訓練が実施された。
●「いずも」の1回目の改修は既に終了
海上自衛隊史上最大の艦艇である「いずも」と「かが」の「軽空母化」改修は、5年に一度実施される大規模な定期検査を利用して、それぞれ2回にわたって行われる。
「いずも」は2019年度末から、横浜市磯子区のジャパンマリンユナイテッド横浜事業所磯子工場で1回目の改修工事が実施され、既に終了した。具体的には、特殊な塗装などによる飛行甲板の耐熱処理工事や誘導灯の設置などが行われた。
防衛省は8月31日に閣議決定された2022年度の概算要求で、いずも型護衛艦改修費用として67億円を要求した。このうち、12億円を米軍からの技術支援経費として要求した。いずも型護衛艦でF35Bのオペレーションを実現するためには米軍の協力はやはり欠かせない。
岸防衛相は7月30日の記者会見で、今年度中に米軍の協力を得て「いずも」でF35Bの発着試験を行うことを明らかにしている。
岸防衛相は、「今年度は、1回目の改修の後の『いずも』において、F35Bが支障なく発着艦可能であるかといった点について確認することを想定した検証・試験を実施予定である」と発表。さらに、「いずも型護衛艦でのF35Bの運用に向けては、運用経験を有する米軍の協力を得て、改修後に検証試験を実施し、改修や運用に関する知見を得る必要がある」と述べた。
●来年度予算で「いずも」の着艦誘導装置を先行取得
防衛省はいずも型護衛艦改修費用67億円のうち、「いずも」の着艦誘導装置を先行取得するための費用36億円を要求した。防衛省によると、この着艦誘導装置としては、米海軍と米レイセオン社が共同開発した「ジェイパルス(JPALS:Joint Precision Approach and Landing System)」が予定されている。JPALSはGPS衛星信号と慣性航法システム(INS)を使って、F35Bやオスプレイといった軍用機を自動的に安全かつ正確に着艦誘導する全天候型のシステムだ。防衛省は2022年度予算では「いずも」の分のみのJPALSを取得し、「かが」の分は後年度に取得する方針だ。
ただ、来年度予算で着艦誘導装置が先行取得される前に、今年中に「いずも」で米海兵隊のF35Bの発着訓練が行われることになる。では、この米海兵隊との訓練で使われる着艦誘導装置はどうするのか。
岸防衛相は3日の記者会見で「装備の詳細について述べることは差し控えたい」と述べるにとどまった。
防衛省は「いずも」改修が当初予定通り、2026年度中に終了すると見込んでいる。
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