台風11号 海岸は危険をすべて集めた総合百貨店状態 週末は海のレジャー厳禁
台風11号からのうねりは強烈だという予測がでています。この週末の日本列島の各地の海岸は、危険をすべて集めた総合百貨店状態になることでしょう。万が一流されても公的機関による救助は難しいでしょう。
海のレジャーは厳禁
一昨日、8月31日に台風が接近し時に沖縄本島で発生した事故の一覧を示します。かなり荒れた沖縄近海ですが、台風が東から接近していたため、中には島の影になる西側の海岸は安全と判断してしまった人がいたのでしょうか。
★糸満市潮崎町 ウィンドサーフィンをしていた57歳の男性が強風にあおられ700 m沖合に流された
★本部町崎本部 8歳の女の子と42歳の母親が遊泳中に沖に流された
★金武町 サーフィンをしていた21歳の男性が高波で岸に戻れなくなくなった
(以上、出典は沖縄テレビ 9/1(木) 12:02配信)
糸満市の事故では「海岸にいた家族が消防に通報し、救助要請を受けたマリンレジャー業者が水上バイクで救助し、男性にけがはありませんでした。(沖縄テレビ)」ということで、公的機関の力だけでは海上の漂流者を救助にいけない場合もあることが想像できます。
ここで言う海のレジャーとは次の通りです。
〇散歩する 砂浜、岩場、港
〇海水浴する 浸かるだけ、泳ぐ
〇釣りをする 波止釣り、磯釣り、ボート釣り
〇船を楽しむ モーターボート、ヨット、カヤック、バナナボート
〇ボードにのる サーフィン、ウインドサーフィン、SUP
〇観察する スクーバダイビング、スキンダイビング、スノーケリング
〇飛ぶ パラセーリング
暴風やうねりで陸に戻れなくなる
急に遠ざかる陸。声を出しても誰も気が付いてくれない。そして救助を呼ぼうにも携帯電話は車の中に置いてきた。これは台風の暴風やうねりによって遭難するシーン。ごくごく普通に身に起こりえる事故の例です。
実際に沖縄本島に台風11号が接近した一昨日、上述したように報道にのるような事故が発生しています。普通に考えたら、ここ近年まれにみるような猛烈な台風が接近してきている段階で警戒するのでしょうが、台風がかなり近づくまでは「強い風」程度なので「島の影だからうねりは入ってこない」と思いがちです。
水難事故は、「その直前まで特に危険を感じなかった」時に発生します。最初から危険だと現場で感じたら、そうそう海に入らないからです。でも、気象・海象は刻々と変わります。10分前までなんでもなかったのが、台風がほんの少し近づいたら風の強さが急激に強くなったり、波が島陰に急速に入るものです。その急激な変化でやられます。
ボードにのる・船を楽しむ
上述したように、サーフィンやウインドサーフィンで戻れなくなりました。特にサーフィンは風は関係なさそうに思うのですが、動画1のように海面より上に出たモノは全て風にとっては帆になります。つまり、人のればボードごと風に運ばれます。動画1では、浮島にのった人が風下に流される様子を示しています。当然、暴風に見舞われると自力で海岸に戻れなくなります。
動画1 浮島にのった人が風下に流されていく様子(筆者撮影、1分06秒)
海に流れ込む河口付近では、襲来したうねりと河口で反射したうねりとが激しくぶつかり合い、高さが10 mをゆうに超えるような三角波が発生します。カバー写真はその様子を示します。うねりは晴れていても来るわけですから、「いい天気だ」と言って今週末は安易にボートで海に出てはいけません。
散歩する
一番の危険は海岸、つまり海と陸の境界にあります。奥行のあるうねりによって海岸の奥まで海水が駆け上がるのと、いつもより高い潮位によって通常ではここまで駆け上がらないという所まで海水が来ます。
そしてその波が海に戻る時に、砂浜や岩場には強烈な戻り流れが発生します。この戻り流れに引きずり込まれると、海から100 mくらい離れていても、時間で10秒から20秒で海に飲み込まれることになります。実際に、静岡県・駿河湾ではそのような事故で過去に若い学生3人が流されて命を落としました。
【参考】波にさらわれて溺れるってどういうこと? 8月10日と11日は要注意
海水浴する
この週末は、西日本の太平洋側には南西方向から周期の長い強烈なうねりが入ってきます。台風がまだ遠い東シナ海にいるからといっても関係ないです。特に南西方向に海に向かっている湾では、図1に示すような「うがいをする」ような強烈な流れが発生することがあります。海水浴で海に浸かると、この流れによって離岸流などとは比べ物にならない速さで沖にもっていかれます。
勝浦市・守谷海水浴場で2019年8月に海水浴を楽しんでいた40人ほどが天気が良かったのにもかかわらず急に発生した海の流れに沖に流される事故がありました。この時は、小笠原諸島近海に停滞していた台風から1000 kmほどの海を伝わってうねりが到達し、たまたま南を向いていた守谷海水浴場にそれが入り込んだためと考えられています。
波予測をチェック
うねりの強烈さは、うねりの周期を知ることで予測できます。周期とは、次のうねりがくるまでの時間です。だいたい等間隔でうねりは海岸にきますので、それぞれのうねりの間隔を測って、平均化すればいいわけです。
うねりの周期が長いということは、台風からそれだけ大きなエネルギーを運んできているということになります。それは1000 km離れていても高いエネルギーを保ったままです。そして台風11号の現在地から遠く紀伊半島くらいまで、24時間くらいで到達します。つまり、台風の接近よりも、うねりはだいぶ早くやってきます。
波予測(波周期)はYahoo!天気・災害で確認することができます。72時間後の予測まで確認することができます。まずは図2と図3で確認してみましょう。9月2日午前3時における予測です。
3日土曜日
まずは図3の土曜日(3日)朝9時の波周期の予測です。黄色の領域が太平洋側の各地の沿岸に接触しています。ここで周期は10秒以上で、これでもとんでもないほど危険なうねりになります。周期11秒以上のオレンジ色の領域はまだ沖合になります。
4日日曜日
次に図4の日曜日(4日)朝9時の波周期の予測を見てください。オレンジ色の領域が太平洋側の南岸各地に接触しています。ここで周期は11秒以上で、これ以上の表記はないほどの危険領域です。こんな危険なうねりにはなかなかお目にかかりません。だからと言って、海岸に見学にいってはなりません。
特に超がつくくらい危険な海岸
週末は危険なうねりが南西から入ってきますので、南西諸島はもちろんのこと、九州全体、四国室戸岬付近から北西に延びる海岸線、土佐湾、潮岬から北西に延びる海岸線、駿河湾は、特に警戒してください。
海岸の危険をすべて集めた総合百貨店状態となります。陸上の河川以上の速い流れは、循環流、離岸流、戻り流れ、となり海岸に襲い掛かり、河口ではとんでもない高さの三角波が出現するなど、なんでも全てパックされていて、区別すらつかない状況になることでしょう。上述のような地域の沿岸を筆頭に、週末は海には絶対に近づかないようにしましょう。
まとめ
週末は全国的にとにかく厳しい気象・海象になりそうです。各種海のレジャーはぜひ控えましょう。流されても、これだけ厳しい状況だと救助に行きたくてもいけません。それは、知床観光船の事故で十分知ることになりました。
うねりに関しては、波周期で6秒を割るくらいになるまでは海のレジャーを控えたほうがよいです。