NASAの月ミッションがコスト削減のため中止に、月面探査車「VIPER」と月面基地の関係とは
2025年に打ち上げが予定されていたNASAの月探査車「VIPER(バイパー)」が、コスト削減のため中止になる事態となりました。本記事では、VIPERとはどんなミッションだったのか、そして将来の月面基地との関係まで解説していきます。
■月で氷を探す「VIPER」と将来の月面基地
VIPERの目的は、月の南極に眠る氷を見つけることです。大きさが約2.5mのVIPERは、長さ1mのドリルを搭載しており、月の表層で水分を分析する計画でした。
それではなぜ南極に向かう必要があるのでしょうか?実は月の南極には永久に日光が当たらない日陰の部分があり、氷が豊富に存在する可能性が高いのです。もし氷を見つけられれば、すなわち電気分解により酸素と水素を手に入れられます。これはロケットの推進薬にも使用でき、月は補給基地として大きな役割を果たせるのです。そのため、「アルテミス計画」でも南極は将来の月面基地の候補になっており、将来的に月は火星への中継地点としても注目されています。
そして、日本もインドとの国際協力ミッションである「LUPEX」の開発を進めており、2020年代後半に月の南極で氷を探すことを目的としています。
■コスト削減のためVIPER計画は中止に
当初、VIPERは2023年に打ち上げられる計画でした。しかし、開発の難航から2025年の打ち上げまで延期が繰り返されることとなります。そして、コスト増加やほかの月面着陸ミッションへの影響が懸念され、NASAはVIPERを中止する判断となりました。VIPERを中止することにより、約130億円ものコストを削減でき、その他の宇宙ミッションに割り当てられるとのことです。
それでは、肝心のVIPERはどうなってしまうのでしょうか。実はまだ解体はされておらず、VIPERの打ち上げに興味を示す組織がいれば、打ち上げが引き続き検討される可能性もあるとのことです。もし相手先が見つからなければ、VIPERは解体後、転用できる部品は他のミッションに活用されるとのことです。
■VIPERを月面に送るはずだった「グリフィン」
VIPERを月に送るはずだった着陸機は、アメリカのアストロボティック社が開発している「グリフィン」です。実は2024年1月8日、グリフィンの一つ前の月着陸機である「ペレグリン」が打ち上げられています。
しかし、順調に月への遷移が始まったペレグリンでしたが、推進システムにトラブルが発生し、姿勢制御が不安定となってしまったのです。このままペレグリンが軌道上を漂った場合、いつコントロールを失うかわからず、スペースデブリとなってしまう危険性がありました。そのため、アストロボティック社はペレグリンを地球に大気圏突入させ、機体を燃え尽きさせることに決定しました。ペレグリンは1月18日に地球の大気圏へ突入したのです。
JAXAの月面着陸成功の陰で、志半ばで地球大気圏へ突入し燃え尽きた月着陸機を追う
そのため、アストロボティック社にとって、グリフィンの挑戦はペレグリンのリベンジとなるのです。VIPER計画が中止になったとしても、グリフィンの月面着陸は実施されるとのこと、次の月面着陸は是非成功して欲しいですね。
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