エアロシェルによるデトネーションエンジンの宇宙実証データ回収実験、将来の火星着陸ミッションも視野に
11月14日、デトネーションエンジンを搭載した観測ロケットの打ち上げが成功しました。本記事では、実験データを回収する上で、非常に重要となる構成要素である、大気圏突入用に開発された「展開型エアロシェル」をご紹介します。
■小型・軽量・大面積パラシュートと画期的な機能を持つ展開型エアロシェル
大気圏への突入というと、スペースシャトルやはやぶさのサンプルリターンカプセルなどが思いつくかと思います。 これらが地球に再突入する場面では、非常に高温になっていることが想像しやすいかと思います。
これは、実は空気との摩擦により発生している訳ではなく、超高速で機体と空気が衝突するため、空気の逃げ場がなくなり急激に圧縮されることにより熱が発生しているのです。機体表面では1000度を超える超高温となっており、アポロ宇宙船の頃から採用されていたこの方式では、いかに高温や空気から受ける力に耐えられる設計ができるかが勝負でした。
そんな中、新たに出てきた再突入方式が「エアロシェル」です。エアロシェルはカプセルのような固い構造ではなく、やわらかい構造を使用しています。 これは折りたたんで収納し、宇宙でガスを注入することによる展開もできることから、軽量、大面積を確保することができるのです。
そして、エアロシェルを広げた状態で大気圏に突入することで、軽い機体が大きな面積で空気を受け止めることができ、効率良くブレーキをかけることができるのです。そのため、カプセル方式で苦労していた空気による加熱も非常に小さく抑えることができる革新的なシステムなのです。
さらに、はやぶさのカプセルでは大気圏突入後にパラシュートを展開してゆっくり落ちて来ましたが、エアロシェルはそれ自体がパラシュートの役割を果たすこともできます。最終的には海に落とせば浮き輪の役割も果たし、海上に浮いていることもできる、まさに一石何鳥かもわからない便利な方法なのです。
■将来の火星着陸ミッションへの使用も視野に
今回打ち上げられた「RATS-2」も、デトネーションエンジンの実験データを収集した後、大気圏へ突入し、海上に落下する予定となっています。無事に回収され、貴重なデータが手に入ると良いですね。ちなみに、エアロシェルによる観測ロケットの実験データ収集は、今後定常的に運用されていく見通しとのことです。
さらに、このエアロシェルは火星着陸ミッションにも利用が検討されています。 火星の空気は地球と比べ100分の1程度の密度しかないため、空気によるブレーキが足りず、通常のカプセルでは高速で地表に衝突してしまうのです。しかし、大面積のエアロシェルを使用することで、火星でも十分にブレーキをかけることができ、小型の機体でも着陸が可能となるのです。
エアロシェルの技術が成熟し、日本の宇宙開発が火星という新たなフロンティアへ挑戦できるようになるのが楽しみです。
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