観測史上最大の大爆発現象を新発見!詳細な原因は不明、超巨大ブラックホールの暴走か?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「観測史上最大の爆発現象を新発見」というテーマで動画をお送りしていきます。
2020年、サウサンプトン大学などの研究チームは、観測史上最大のエネルギーを放出する大爆発現象を新たに発見し、その研究成果を2023年4月に発表しました。
爆発現象は「AT2021lwx」と命名されています。
●「AT2021lwx」の特徴
「AT2021lwx」は約80億光年彼方で発生し、2020年に地球で発見されました。
それまでは何もなかった場所に突如としてとてつもなく明るい閃光が発生し、一時は太陽の約2兆倍の明るさになっていたそうです。
その後次第に暗くなってはいるものの、なんと発生から3年が経過した現在でも非常に明るい状態が続いています。
非常に明るく輝いただけでなく、継続期間も突発的な爆発現象としては非常に長いため、放出した総エネルギーは突発的な爆発現象としては観測史上最大とされています。
先日、観測史上最大のガンマ線バースト「GRB 221009A」が発見され、こちらも非常に大きな話題を呼んでいました。
「GRB 221009A」の瞬間的な明るさは過去のどのGRBと比べても70倍明るく、今回の「AT2021lwx」よりも上とされています。
ただし、GRB 221009Aの継続期間は他のガンマ線バーストと比べると非常に長いものの、AT2021lwxよりは遥かに短いため、放出された総エネルギーはAT2021lwxが遥かに高いそうです。
その意味でAT2021lwxは「観測史上最大の爆発」なのです。
地球にこの規模のガンマ線バーストがやってくるのは1万年に1度ともいわれるほど極端なガンマ線バースト「GRB 221009A」については、以下の動画で詳細に解説しているので、併せてご覧ください。
●「AT2021lwx」の正体は何なのか?
「AT2021lwx」の正体や発生メカニズムについて確定的なことはわかっていないものの、以下の3つの極めて明るい天体・現象がAT2021lwxの候補として挙げられています。
○「クエーサー」説
「クエーサー」は、地球から数億光年以上の遠方の宇宙でよく見られる、極めて明るい天体です。
ガンマ線バーストや超新星爆発などの突発的な現象を除いて、継続的に輝く天体としては「宇宙で最も明るい天体」と言われます。
その正体は、遠方の銀河中心部にある超大質量ブラックホールが、大量の物質を継続的に降着させていることによる輝きであると考えられています。
ブラックホールに接近した物質は、ブラックホールの周囲を強大な重力で超高速で公転させられることで、超高温に過熱させられ、極めて明るく輝いています。
既知の天体や現象の中でAT2021lwxに相当する総エネルギーを放出できる天体は、クエーサーくらいしか知られていません。
後述する「超新星爆発」と「潮汐破壊現象」もAT2021lwxの候補ですが、いずれの場合も記録破りの規模で発生したと考える必要が出てきます。
総エネルギー的には都合の良いクエーサー説ですが、クエーサー説でも説明できない問題点があります。
それはAT2021lwx発生前の数年分の観測データを振り返っても、その発生源に明るい天体が検出されなかったことです。
クエーサーは突発的な爆発現象ではないため、比較的継続して明るい天体です。
そのため過去数年間の観測データを振り返っても、発生源に明るい天体が見当たらないことは、これがクエーサーであることと矛盾しています。
○「超新星爆発」説
AT2021lwxが超新星爆発である可能性も検討されています。
超新星爆発は、大質量の恒星が一生の終わりの瞬間に起こす大爆発現象です。
ただし超新星爆発説にも、説明できない問題点があります。
それはAT2021lwxのような規模の超新星爆発を起こせるほどの大質量の恒星が、そもそも存在できるのかという問題です。
AT2021lwxは既知の超新星より10倍以上も明るく、さらに継続期間も一般的な超新星が際立って明るいのが数か月程度なのに対し、AT2021lwxは3年以上も明るく輝き続けています。
この規模の超新星を起こすほどの大質量星の存在を考えにくいため、AT2021lwxが超新星爆発であるとする説はあまり有力視されていません。
○「潮汐破壊現象」説
現時点でAT2021lwxを説明する最有力とされる現象が、「潮汐破壊現象」と呼ばれるものです。
これは大質量のブラックホールが、接近してきた恒星などの天体を丸ごと破壊してしまうことで発生する現象です。
クエーサーも大質量のブラックホールが周囲のガスなどを超高温にすることで継続的に光り輝いているとされていますが、潮汐破壊現象はより巨大な天体が砕かれ、一時的に爆発的な明るさで輝く現象となります。
AT2021lwxは既知のどの潮汐破壊現象よりも3倍明るく、継続期間も一般的な潮汐破壊現象が数か月に過ぎないのに対して、AT2021lwxは非常に長いです。
既知の規模で説明できない点は、超新星爆発と似ています。
ですが、潮汐破壊現象の場合は「より大規模な天体が破壊された」と考えると、起こる可能性は低いもののより大規模な現象が発生しても不思議ではありません。
現時点で最有力とされている、AT2021lwxが発生した具体的なシナリオは、太陽の1億倍以上の質量を持つ超大質量ブラックホールが、太陽質量の5000倍を超える巨大ガス雲をゆっくりと飲み込んでいるというものです。
ただし現時点ではこのシナリオで確定させるほどの証拠が揃っていないため、今後より多波長の光を観測するなどして、このシナリオの検証が進められていくそうです。