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ロシア軍がウクライナの電力施設を大規模ミサイル攻撃し水力発電所まで被害、ダムは無事

JSF軍事/生き物ライター
SNS投稿より2024年3月22日、ザポリージャのドニプロ水力発電所に対する攻撃

 3月22日、ロシア軍はウクライナ全土に合計151発にも及ぶ大規模な長距離ミサイル・ドローン攻撃を実施しました。昨日のミサイル31発による首都キーウ攻撃を大きく上回る規模で、各地に被害が生じています。

 そして不可解なことに今日3月22日の攻撃は各地の電力インフラが集中的に狙われていて、火力発電所や変電所のみならず滅多に狙われて来なかった水力発電所まで攻撃を受けています。既に冬が終わり春が来て気温が上がっているにも拘らず、今さらになって停電狙いのロシア軍の攻撃の意図がよく分かりません。

ウクライナ空軍司令部(2024年3月22日午前9時発表)

ウクライナ空軍司令部より2024年3月22日ウクライナ迎撃戦闘
ウクライナ空軍司令部より2024年3月22日ウクライナ迎撃戦闘
  • イスカンデルM弾道ミサイル×12飛来(0撃墜)
  • キンジャール空中発射弾道ミサイル×7飛来(0撃墜)
  • Kh-22空対艦ミサイル対地運用×5飛来(0撃墜)
  • S-300/S-400地対空ミサイル対地運用×22飛来(0撃墜)
  • Kh-101/Kh-555空中発射巡航ミサイル×40飛来(35撃墜)
  • Kh-59空対地ミサイル×2飛来(2撃墜)
  • シャヘド136/131自爆無人機×63飛来(55撃墜)

※太字は長距離攻撃の主力である弾道ミサイル、巡航ミサイル、自爆無人機。
※太字ではないKh-22(対地命中精度が著しく悪い)とS-300(弾道ミサイルの代用としては射程が短い)は転用兵器であり対地運用では欠陥があり、Kh-59が専用対地兵器だが射程が短く、長距離攻撃の主力ではない。

撃墜率60%(低速目標88%、高速目標0%)

 合計151発が飛来し92発を撃墜して約60%を阻止しましたが、高速目標46発(イスカンデルM、キンジャール、Kh-22、S-300/S-400)は1発も撃墜できず、低速目標105発(Kh-101/Kh-555、Kh-59、シャヘド136/131)を92発の撃墜で約88%撃墜となっています。

 ただし高速目標46発の中で本物の弾道ミサイルは19発(イスカンデルMとキンジャール)だけで、これがパトリオット防空システムの配備されていない地域を狙ったことで迎撃ができなかったものと思われます。

 またS-300/S-400地対空ミサイルの22発は弾道ミサイルの代用品としては射程が短く、国境線に近い大都市ハルキウの電力施設への攻撃に集中使用されました。敵に近過ぎる位置に狙われやすいパトリオット防空システムを常駐配備させるのは危険なので、ハルキウはパトリオットで守ることができない問題があります。

※ロシア軍のS-300/S-400地対空ミサイルの対地運用での攻撃を受けるハルキウの様子。電力施設が集中攻撃を受けて停電したとの報告。

ザポリージャ市、ドニプロ水力発電所への攻撃

 今日3月22日の攻撃は電力インフラが集中的に狙われていることが特徴で、ドニプロ川(ドニエプル川)の水力発電所まで攻撃されています。ダムの破壊を目的とした攻撃は国際人道法で基本的に禁止されている行為であり、ロシア軍は流石にダムそのものを破壊するのは拙いと認識しているのか、制御室を狙って攻撃してダムの構造体の破壊は避けているようです。

※ドニプロ水力発電所の位置座標(47.868993, 35.088522)

Google地図よりザポリージャ市のドニプロ水力発電所の位置
Google地図よりザポリージャ市のドニプロ水力発電所の位置

※上記の動画でドニプロ水力発電所を攻撃したのはKh-101巡航ミサイルで、内蔵されたL-504ディスペンサーから囮熱源のフレアを放出しながら突入している。なおこの日の攻撃で水力発電所には8発のミサイルが命中したと発表されており、Kh-101以外の他種類のミサイルが使用されている可能性もある。

・関連記事:ロシア軍のKh-101巡航ミサイルのL-504ディスペンサーからフレアを放出(2024年1月24日)

 ウクライナの国営水力発電会社ウクルヒドロエネルホによると、ロシア軍の攻撃を受けたドニプロ水力発電所のダムは崩壊する危険はありません。出典:Укргідроенерго

 疑問なのは既に冬が終わり春が来て気温が上がっており、停電させてもあまり効果が無いという点です。ロシア軍は一体なぜ今さらになってこのタイミングで電力施設を集中攻撃したのでしょうか? 昨年12月からの冬季以降では今日3月22日の攻撃が最大規模の電力インフラへの攻撃となっています。

 ウクライナ当局からはハルキウ州、ザポリージャ州、スーミ州、ポルタヴァ州、ドニプロペトロウシク州、オデーサ州、フメリニツキー州、ヴィーンヌィツャ州、イヴァノフランキウシク州の各地で電力復旧作業中と発表されています。

 ウクライナエネルギー省は、今日のロシア軍の攻撃はウクライナのエネルギー部門に対する最近での最大の攻撃だったと強調しました。

軍事/生き物ライター

弾道ミサイル防衛、極超音速兵器、無人兵器(ドローン)、ロシア-ウクライナ戦争など、ニュースによく出る最新の軍事的なテーマに付いて兵器を中心に解説を行っています。

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