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一時帰国の留学生に対し奨学金返還要請。「奨学金難民を助けてください」再び学生から上がる声

室橋祐貴日本若者協議会代表理事

3月23日に取り上げた、日本人留学生への奨学金停止問題。

その後、各関係者に動いて頂き、日本学生支援機構による「奨学金の継続」はすみやかに決まった。

(ただし、自費帰国、自費隔離の問題は解消されておらず、早急に改善されることを求めたい)

「海外留学支援制度」及び「トビタテ!留学JAPAN日本代表プログラム」の奨学金を支給する日本学生支援機構に対しても、大学等を通じて学生の皆さんから一時帰国等の相談があった場合は、留学計画の一時中断の手続き等をとるなど、奨学金支給について柔軟に対応するよう要請しています。

 さらに、これまで両制度においては、派遣学生の皆さんの身の安全や健康を守る観点から、感染症危険情報レベル2上の国・地域への留学については、奨学金の支援対象外としてきたところですが、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行に伴い、航空便の減便・運休が多く発生していること、学修プログラムがオンラインに切り替えられ継続されている例が見られることから、速やかな帰国が困難な場合(待機場所の確保が困難な場合や、公共交通機関を利用せず待機場所に向かうことが困難である場合も含む)や、留学中に感染症危険情報レベル2以上となり、やむなく一時帰国した場合であって、帰国後もオンライン等により留学先大学等の学修を継続していることが確認できる場合は、奨学金の支給を継続することとしました

出典:世界各国に留学中の日本人学生の皆さんへ(3月27日更新)

学内の奨学金で一部返還要請

他方、大学独自の奨学金に関して、一時帰国の留学生に対し、奨学金の一部返還を求める動きが起こっている。

早稲田大学では3月24日、途中帰国した学生(留学先以外でのオンライン授業履修の学生を含む)に「奨学金の一部返還」を求めるメールを通知。

●留学を継続されている方

奨学金の返還は必要ありません。

●途中帰国された方(留学先以外でのオンライン授業履修の方を含む)

奨学金を一部返還して頂きます。

(中略)

皆さんが受給されているのは留学のための奨学金です(留学先学費、生活費、渡航費など)。今回はやむを得ない事由であることを配慮しており、全額返還は求めません。

出典:早稲田の学内留学奨学金採用学生全員に送られたメール

「皆さんが受給されているのは留学のための奨学金です(留学先学費、生活費、渡航費など)」として、一部返還を求めている。

しかし、ただでさえ緊急帰国により渡航費がかかる上に、留学先の学費や滞在費(住んでいなくても契約期間は家賃を支払わなければならない)を払い続けなければならない状況に変わりはない。むしろ、日本(もしくは他の帰国先)国内での滞在費もかかり、二重で費用が膨らむと言っても過言ではない。

その上、あくまで「留学生」であることから、非留学者向けの「早稲田大学学内奨学金」に採用される可能性も低く(特に外国人学生は「留学中」学内奨学金の申請ができない)、奨学金を一部返還されては、留学先の学費や滞在費を支払えない、と学生から悲鳴の声が上がっている。

「2019年8月末からスペインに留学していた。留学期間は6月末までだが、コロナの蔓延及び大学側からの勧告により3月末に急遽帰国。留学費用として一括給付型奨学金110万円を受給していた。

日本でスペインの大学のオンライン授業を通常通り受講予定だが、早稲田に25.5万円ほどの返還を求められている

一時帰国のため、荷物はスペインにあり、いずれ帰らなければならない。

実家は貧しく、何百万円もの学費は貸与型の奨学金によって賄っている。しかし留学中の身分のため、学内奨学金は選考が不利な状況であり、生活が厳しい状況に置かれている。」(留学中の早稲田学生)

「アメリカの大学に留学していましたが、3月18日帰国するように指示されたので、母国の韓国に3月23日、帰りました。

現在韓国で大学のオンライン授業を受講中。すでに支払った大学の寮費は、まだ返金される様子がない。

その上、早稲田に留学奨学金を一部返還してくださいと言われ、金銭的に余裕がありません。」(留学中の早稲田学生)

奨学金一部返還措置の停止を

こうした状況に対し、早稲田大学の学生からは改善を求める声が上がっている。

change.orgを利用した署名では、文科省の方針通りに、留学先以外の場所で留学先大学のオンライン授業を受講している学生を「返還対象から外すこと」もしくは「特例措置としてすべての学内奨学金の採用資格を与えること(また、採用された場合、金額を変更しないこと)」を求めている。

【早稲田大学に対する要望】

留学先以外の場所で留学先大学のオンライン授業を受講している学生を:

返還対象から外すこと

もしくは、特例措置としてすべての学内奨学金の採用資格を与えること(また、採用された場合、金額を変更しないこと)

【要望の理由(4点)】

まだ帰国をしていない学生が、奨学金の一部返還を避けるために、留学先に滞在し続ける可能性があります。これは、新型コロナウイルス感染のリスクを高めることに繋がり、学生本人も、その家族も、早稲田大学も日本政府も誰一人として望んでいないことです。

経済的に困窮している学生には、奨学金が必要です。

早稲田大学の学費は、年間100万円以上かかります[4]。 留学先大学の学費は、これよりさらに高額になる場合もあります。

留学先大学のオンライン授業受講者は、留学先大学に在籍を継続しており、早稲田大学での学籍も「留学」となっています。したがって、早稲田の学内留学奨学金の対象外とするのは不適切であると考えられます。

文部科学省の新方針(3月25日)により、一時帰国をしオンライン等で学習を継続する学生への留学奨学金の支援継続が決定されました(https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/ryugaku/1405561_00002.htm)。早稲田大学もその方針に準じるべきだと考えます

出典:【新型コロナ】「奨学金難民」を助けてください(早稲田大学/留学関連)

大学からのメールの回答期限になっていた本日3月31日、学生は署名を提出する予定だそうだが、早稲田大学から奨学金の「一部返還」を求めるメールが送られたのは、文科省が奨学金停止の方針を変更する前であり、一刻も早く、早稲田大学も方針を見直し、オンライン授業受講者に対して奨学金の一部返還措置を止めるべきだろう。

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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