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「IR議連、カジノ法案修正の方針」の真意

木曽崇国際カジノ研究所・所長

何やら多方面からいろんなテーマで論議が噴出しており、正直何から手を付けるべきか悩ましいところですが、まずは各メディアを賑わしている下記報道を処理しましょう。以下、各社報道の引用。

外国人利用に限定…カジノ法案、修正へ(読売新聞)

カジノ 当面外国人限定に法案修正の方向(NHK)

カジノの日本人利用、議論先送りへ 解禁法案成立を優先(朝日新聞)

カジノ利用、当面は外国人に限定 議連が法案修正へ(日経新聞)

カジノ法案修正、日本人は当面除外(産経新聞)

実は昨日、たまたま全くの別件でIR議連の幹事会が終わったばかりの某議員と面談がありまして、本件の真意に関して直接確認してきました。上記では各社が各社なりの解説、解釈を加えてこのニュースを報じていますが、私が直接議員に確認した感じだと、ニュアンスとしては朝日新聞の報道が一番正しく状態を説明していると思われます。

カジノの日本人利用、議論先送りへ 解禁法案成立を優先

http://www.asahi.com/articles/ASGB74CMWGB7UTFK00C.html

カジノ解禁をめざす超党派「国際観光産業振興議員連盟」は、7日の幹部会合で、議員提案した国内でカジノを含む統合型リゾート施設(特定複合観光施設、IR)の整備を促す法案(カジノ解禁法案)について、日本人のカジノ利用や規制については別の法案で定めるとの修正方針を決めた。ギャンブル依存者の増加などカジノ導入への懸念が根強いなか、日本人の是非を巡る議論を先送りし、解禁法案の今国会成立を優先させるのが狙いだ。

現在、継続審議中のIR推進法案を起案した議員連盟としては、未だ依存症に対する懸念の声が大きいことを受けて、今回の法案審議の中から「国民の施設利用」に関する論議部分は切り出し、別途、国会内での論議の場を設けるという方針の模様です。

新聞社によっては「外国人専用カジノに方針転換をしたのだ」といったニュアンスに報じているところもありますが、状況としては外国人専用を前提とした論議ではなく、その部分の論議は別枠で設ける、即ち朝日新聞の報ずる「論議を先送り」という表現が最も正しいこととなります。

ということで、「最低でも外国人専用カジノの設置は認める」という前提の元で、今後以下に示すいくつかのシナリオが発生しうることとなります。

1)日本人の入場は不可、外国人専用カジノの設置

外国人専用カジノという要件でIRの導入を図る試みは、韓国、ベトナムなど事例がないわけではなく、韓国の事例でいえばそれでも数百億から一千億超まで投資意向を示す企業も存在しています。IR推進法案の成立とともに、国際観光振興の施策のひとつとして、「少なくとも」このラインでの合法化は実現することとなりそうです。

2)日本人には何らかの入場抑制措置

シンガポールで採用されているような内国人のみを対象とした入場料制度、韓国で唯一内国人に開かれているカンウォンランドで採用されているような自国民に対する入場回数制限措置など、外国人とは別に自国民に対する何らかの入場抑制措置を前提としたカジノの導入です。一方で、このシナリオの元では外国人は何の縛りもなく利用が可能となります。

3)外国人、日本人ともにアクセスフリーなカジノ導入

既存の公営賭博と同様に、日本人、外国人の区分けせず、入場料や回数制限措置などなく、カジノ利用が可能となるシナリオ。

この種の日本人の利用に関する是非論は、当然のことながら一方で準備されるギャンブル依存症対策の具体的な措置との比較の中で、どこまで許すべきか、許されざるべきかという論議が別途行われることとなります。勿論、私としては例えば「外国人専用」が我が国のカジノ設置の形としてふさわしいとは思っていないワケですが、その辺は賛成派、反対派ともにさまざまな主張があるわけで、それら論議は別途設けられた議論の場で喧々諤々やりましょう、と。

私が昨日、議員のお話した限りでは上記のような意図をもっての「法案修正の方針」であるとのことのようでした。みなさん、報道の真偽について気になっていることと思いますので、とりいそぎのご報告であります。

国際カジノ研究所・所長

日本で数少ないカジノの専門研究者。ネバダ大学ラスベガス校ホテル経営学部卒(カジノ経営学専攻)。米国大手カジノ事業者グループでの内部監査職を経て、帰国。2004年、エンタテインメントビジネス総合研究所へ入社し、翌2005年には早稲田大学アミューズメント総合研究所へ一部出向。2011年に国際カジノ研究所を設立し、所長へ就任。9月26日に新刊「日本版カジノのすべて」を発売。

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